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異なる培地と温度条件下におけるオシダ科3種の胞子の発芽と前葉体の成長/西野文貴 [2019年11月12日(Tue)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された西野文貴さんからの投稿が届きました!

異なる培地と温度条件下におけるオシダ科3種の胞子の発芽と前葉体の成長
西野文貴


受賞ポスターはこちら!
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この度は第50回日本緑化工学会大会において,技術報告部門にて優秀ポスター賞を頂くことができ大変光栄です。まず,指導教官である福永健司教授と橘隆一准教授に厚く御礼申し上げます。発表当日,私の発表を聞いて下さり、ご質問やご意見を下さった方々にも感謝申し上げます。今回の受賞で自分の研究に自信がつきましたが,決して驕ることなく粉骨砕身し時代を変えていきたいと殊に思います。この場をお借りし,私の研究の内容を紹介させて頂きます。

1. はじめに
 シダ植物は日本に約700種類生育しているが,都市緑化に使用される種類は,ベニシダ,オニヤブソテツなど多くても10種程度である。現在,シダ植物は株分けで増やしているが,効率が悪いため大量生産に向かない。また,株分けの難しい種もあり,自生地からの採取による個体数の減少なども懸念される。胞子は適度の水・光・温度さえあれば発芽して成長するが,種によって発芽に適した条件は異なる。
 そこで本研究では,胞子からの栽培技術の確立を目指し,異なる培地濃度と温度条件下において胞子の発芽と前葉体の成長過程を観察した(図1)。対象種は都市緑化に使用される緑化植物として有望なオシダとイヌガンソク,利用が多いベニシダのオシダ科3種とした(表1)。

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2. 実験方法
 胞子はNaClO水溶液(100ppm)に5分間浸漬させ殺菌し,蒸留水にて洗浄した。培地はムラシゲ・スグーグ培地(以下MS培地)を使用した。寒天培地は滅菌ディスポシャーレ(PS製直径56mm)に15mlずつ分注し,その培地上にマイクロピペットを用いて5地点等間隔に播種した。培養中の光量は両実験とも3,300lux(明期16時間・暗期8時間)とした。定期的に胞子を実体顕微鏡で撮影し,画像解析ソフトimage Jで発芽数を測定した。前葉体の成長は播種後90日目の画像データから面積を算出した(図2)。
 MS培地用混合塩類1ℓ用を蒸留水1ℓに溶かした濃度を1 MSとし,これに蒸留水を加えることで濃度を1/2 MS,1/4 MS,0 MS(蒸留水のみ)となるよう調整した培地を用意し,計4通りの濃度を設けた。各条件の繰り返しは5回,恒温25℃とした。培地の濃度は1/2 MSとした。温度条件は恒温10,15,20,25,30℃の5通りとし,各条件の繰り返しは5回とした。

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3. 結果と考察

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 イヌガンソクの発芽率は0 MSと1/4 MSで高い発芽率を示した(図3)。濃度が高くなると発芽率が低下し,0 MSでは41.9%と1 MSでは18.2%と約2倍の差があった(図4)。前葉体の成長は3種とも0 MSでは面積が小さく、仮根の伸長が目立った。

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 発芽開始日は3種ともに20℃以下で遅くなり,10℃で最も遅くなった。ベニシダとオシダは全条件間で最終発芽率に差がないことから,胞子の発芽はある積算温度に達すると開始するが,種によって積算温度は異なると考えられる。イヌガンソクは15℃を超えると最終発芽率が低くなることから,一定の温度を超えると発芽が阻害されると考えられる。また,3種とも10℃では前葉体が確認できなかった。

 今後は緑化植物として利用が拡大されると考えられるが,それに対する今の生産状況は大きな問題を抱えている。上述したようにシダ植物の主な増やし方としては自生地にて親株を採取し,株分けという地下茎を分割することで個体を増やす方法が行われている。しかし、この方法では一度に大量生産ができないことや自生地の個体数が減少する可能性が考えられる。また,ウラジロやコシダなど移植を行っても栽培が難しい種類,コタニワタリやイノデ,イワヒバなど株分け自体が難しい種類もあり,株分けだけでは対応できない種類も多い。自生地の環境が変化する中では,貴重種などの保全対策としても胞子栽培は有効であると考えられる。例えば,道路工事や開発で発生する植物の移植工事においてはシダ植物が移植困難植物として挙げられることも報告されている。これらの問題は胞子からの栽培方法を確立することで解決すると考えられる。

 今回の受賞で安堵し胡坐をかくのではなく,これからも日々研究に精進したいと思います。研究では常識にとらわれずに他の分野も貪欲に勉強したいと思います。自然科学という魅力ある学問に出会えた事に改めて喜びを感じます。研究紹介をさせて頂きありがとうございました。研究に携わった皆様に改めて感謝申し上げます。



オンラインアンケートを用いた医療従事者の植物に対する意識調査/佐藤えり [2019年11月11日(Mon)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された佐藤えりさんからの投稿が届きました!

オンラインアンケートを用いた医療従事者の植物に対する意識調査
佐藤えり


受賞ポスターはこちら!
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この度は,第50回日本緑化工学会大会において,優秀ポスター賞(論文部門)をいただき,誠にありがとうございます。大会当日は多くの方からコメントを頂戴し,充実した時間を過ごさせて頂くとともに大変勉強になりました。簡単にではありますが,本研究について紹介させていただきます。

背景・目的
近年,労働者のストレス問題は深刻であり,「働き方改革」といったように日常で耳にすることも多くなったと思います。また,ストレスを実際に感じている方もいるでしょう。そこで近年注目されているのが「植物によるストレス緩和効果」です。近年,オフィス緑化に関する研究も進められていますが、特にストレスが高い職種と言われる医療従事者については,まだまだ少ないのが現状です。そこで本研究では,病院緑化の医療従事者に対する有用性を明らかにすることを目的とし,オンラインアンケートを用いた意識調査を実施し,医療従事者の植物に対する意識や行動の把握を試みました。

方法
オンラインアンケートを用いて,全国の医療従事者(医師・看護師・理学療法士・作業療法士)に対して調査を実施しました。医療従事者を対象としたさまざまな研究では,対象が特定の病院に限られていましたが,本研究では全国の100床以上の病院で働く医療従事者を対象としたことで,地域差や病院の規模による差をなるべく小さくしたことが1つの特徴であると考えます。

結果・考察
調査の結果、多くの医療従事者が植物に興味があり,その必要性を認識していること,また病院緑化に対しては「患者の安らぎ」や「景観向上」だけではなく,「職員の安らぎ」も期待していることがわかりました。ほとんどの病院で植物がある一方,「職員の安らぎ」に関してはまだまだ活用されていないようです。さらに,医療従事者のストレスとしては職種関係なく「職場の人間関係」が最も多いことがわかりました。オフィス勤務者は「仕事の量」などが多い結果が報告されており,医療従事者のストレスの特徴が見られました。植物のコミュニケーションツールとしての機能が発揮されれば,職場における人間関係の改善に寄与できる可能性が考えられます。

まとめ
皆さんが病院に行くとき,体調や気持ちに少なからず不安があるでしょう。でも,行った先の病院で働く人が皆ストレスでピリピリしていたら・・・心身休まらないですよね。人々の健康を支える医療従事者が健康であることは,医療制度が充実している日本だからこそ必要であると考えます。
これまでの病院は,患者が療養する場としての機能が注目されてきました。しかし,入院の短期化や地域ケアが進められる中で,「職場」としての病院のあり方も見直されて欲しいと思っています。そこに植物の効果が取り入れられていけば「緑・健康」が目指すものにより近付けられるのでは,と考えます。
医療従事者と緑に関する研究はまだまだ始まったばかりですが、病院緑化も含め、今後も医療分野と緑の関係について研究を進めて参りたいと思います。


葛西臨海公園の護岸におけるウラギクの分布規定要因の検討/三島らすな [2019年10月07日(Mon)]
2019年・第50回記念大会(九州産業大学)でポスター賞を受賞された三島らすなさんからの投稿が届きました!

葛西臨海公園の護岸におけるウラギク(Aster tripolium L.)の分布規定要因の検討
明治大学大学院 農学研究科 三島らすな


受賞ポスターはこちら!
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 この度は技術報告部門にてポスター賞を頂くことができ、大変光栄です。まず、共同研究者である倉本宣博士とTim Gardiner博士に厚く御礼申し上げます。当日私の発表を聞いて下さり、ご質問やご意見を下さった方々にも感謝申し上げます。この場をお借りし、簡単ではございますが私の研究の内容を紹介させて頂きます。

はじめに
 ウラギク(Aster tripolium L.)(図1)は、塩性湿地に生育する耐塩生に優れたキク科の植物です。東京都で絶滅危惧IB類に指定されている本種を、東京都内で保全するためには、現在ある生育地ごとの特性と本種の分布規定要因を把握する必要があると考えました。本研究では、東京都立葛西臨海公園の護岸を対象としました。
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護岸における塩水による浸水とウラギクの種子発芽
 当地における測量調査と植生調査と浸水状況調査の結果、ウラギクは、満潮時に15cm程度の水に浸ることがある生育地Xと、滅多に水に浸らないと思われる生育地Yの、主に2箇所に生育していました(図2)。また、塩分濃度の調査を行ったところ、生育地Xを浸した水の塩分濃度は0.85%でした(図2)。
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 塩水による浸水がウラギクの種子発芽に与える影響を調べるために、複数の塩分濃度条件下でのウラギクの種子発芽実験(20度の恒温条件下、50粒ずつ、発芽数のカウントは1日おき、それぞれ3反復ずつ)を行ったところ、ウラギクの種子は1%の塩分濃度条件下でも全体の4分の1ほどが発芽しました(図3)。
 以上より当地においては、発芽を完全に抑制するほど塩分濃度の高い水に、ウラギクの種子が浸ることは滅多にないと考えられました。
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岩と岩の間のくぼみの堆積の有無とウラギク個体の有無
 護岸における岩と岩の間のくぼみについて、基質の堆積の有無と、ウラギク個体の有無、基質の種類を調査しました。その結果、基質の種類はシルトでした。また、基質の堆積があったくぼみにだけウラギクの生育が確認されました(図4)。以上より当地においては、護岸上のシルトの堆積はウラギクが生育するために最低限必要な条件だと考えられました。
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おわりに
 本研究では、ウラギクの生育地の保全と再生を考える上で、護岸における基質の堆積を考慮することの重要性を示すことができたと思います。その上で、イギリスの首都ロンドンを流れるテムズ川における、塩沼テラスの設置による緑化事例を紹介したいと思います。テムズ川河口から64km付近のGreenwich Peninsulaの護岸には、図5のようなテラスが設けられています。この事例では、基質の堆積を維持する構造を設けることで、護岸で囲われた流路内での塩生植物のハビタットの創出に成功しています。
 護岸において基質の堆積を考慮するという観点は、日本においても、水域と陸域の間の移行帯特有の植生を保全及び再生する上で重要なものだと考えています。これからも生物多様性緑化に関する知見や技術の蓄積が行われていくことを願っています。

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 本研究においては、群落調査を倉本教授と三島が、発芽実験を倉本教授が、護岸の浸水状況と塩分濃度の調査を三島が、護岸における基質堆積をGardiner博士が、全体の構成と論理とポスターの制作を三島が、それぞれ主に担当しました。Gardiner博士のアイディアは葛西臨海公園の護岸を現地調査することによって生まれましたので、明治大学の国際交流制度に感謝の意を表します。
 ポスター賞を頂けたことを糧に、これからも意欲的に研究に取り組んでいきたいと思っております。この場で研究の紹介をさせて頂き、本当にありがとうございました。

以上
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