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高松市市街地に植栽されたクスノキの生育状況と生態系サービスの推定 [2021年10月14日(Thu)]
2021年9月に開催された第52回オンライン大会で優秀発表賞(研究交流発表部門)を受賞された小宅由似さんからの投稿が届きました!

高松市市街地に植栽されたクスノキの生育状況と生態系サービスの推定
小宅由似(香川大学)


この度は、優秀発表賞(研究交流部門)を頂きまして光栄に存じます。発表に際し多くのご助力・ご助言を頂いた共同発表者の皆様に御礼申し上げます。また、討議期間中におきましては多くのご意見・ご示唆を頂き、ありがとうございました。

 私を「緑化法面の植生のうつりかわり」の調査をやっている人と認識して頂いている方もいらっしゃると思います。が、昨年今年と市街地植栽ばかりを取り扱っていたためか、あ法面屋やめたの?と聞かれることが増えてきました。
 個人的には一貫して「”いい森林”を増やしたい」という思いで研究しています。”いい森林”へのたどり着き方(Oyake et al. 2020)や作り方(小宅ほか 2018)、そもそも”いい森林”とは?(第52回日本緑化工学会大会 研究集会03「目標植生の置き方について考える」)などを考えていますが、最近「”いい森林”を維持/創出した方が良い」との考えは思っているほど世間一般には広まっていないのでは、と思うようになりました。
 そこで、”いい森林”維持/創出すると何が良いのかを示す一環として、今回のような「樹木の生態系サービス評価」の研究を手掛けるようになった、というのが、街路樹や公園植栽を調査するようになったいきさつです。

前置きが長くなりましたが、今回の発表内容について紹介いたします。

授賞ポスターはこちら!
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1.研究背景
 高松駅東側から栗林公園を結ぶ幹線道路「中央通り」の中央分離帯には、かつて市民によってクスノキが植栽されました(「日本の道100選」研究会 2002)。しかしこのクスノキの樹高成長が悪く下枝が交通標識の視認性を下げることから、大型車運転手と並木景観を維持したい地元住民の間で「剪定論争」が約20年も続きました (竇ほか 2000)。その後、先立って学会賞(功績賞)を受賞されました増田拓朗先生(香川大学名誉教授)が中心となって行った土壌改良のかいあって、クスノキの樹高成長は改善傾向にあり(増田 2020)、現時点では「剪定論争」は下火となっています。
 ここで私は、管理がおろそかになりクスノキの樹勢が弱れば「剪定論争」再燃のリスクがあるのではないか?と考えたのです。クスノキ並木景観保全に向けて更なる価値づけの必要がある、つまり最近手掛けている生態系サービス評価を試みる良い機会だと思いました。
 そこで、2021年現在のクスノキの生育状況を調査し、新たな価値づけとして生態系サービス評価を試みることを今回の研究目的に設定しました。更に、管理差によってクスノキの生育状況・生態系サービスがどのように異なるのかを検討すべく、近隣にあるが管理状態の異なるクスノキ植栽もあわせて調査することにしました。

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写真 中央通り中央分離帯植栽 (2021年5月25日 紺屋町交差点歩道橋より撮影)

2.研究手法
 調査対象は中央通りの中央分離帯植栽190本(うち、最南部の26本は2006年に新たに植栽されたもの)、これに隣接する国道11号線中央分離帯植栽19本、中央公園の植栽29本としました。
 調査対象木の生育状況(表-1)のデータを樹木構造解析システム(中谷ほか 2020)に投入し、大気環境改善機能を評価しました。更に、大気環境改善効果の単価が示されている、C、SO2、NO2について、貨幣価値の試算を行いました。

表-1 毎木調査項目
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3.高松市街地におけるクスノキの生育状況
 調査対象の平均樹高は全体としては、土壌改良時の目標樹高に満たない結果で、植樹帯ごとに樹高のばらつきがあることもわかりました(紙面の都合上、グラフを横向きに変更しております)。

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図-1 高松市市街地内クスノキ植栽の植樹帯別の平均樹高ならびに枝下高
 発表ポスターの図2を改変・加筆

 中央通りでは、最北部と最南部で樹高が低くなる傾向がみられ (図-1)ましたが、最南部は新たに植栽された26本のため、植栽時期の違いを考慮する必要がありました。また、国道11号線、中央公園についても、樹高が低い傾向が示されました。

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図-2 高松市市街地におけるクスノキ植栽の樹木活力度スコア (地理院地図より作図)
発表ポスター 図1に加筆, フキダシ内は各調査区間における平均スコア(±標準偏差)

 樹木活力度スコアをみると、2006年植栽が最北部のクスノキと比べて遜色ない活力度を示しました(図-2)。このことから、2006年植栽個体の樹高の低さは植栽時期の違いによるものと判断できました。一方で国道11号線、中央公園の樹木活力度スコアは、中央通りと比べて低い傾向がみられ (図-2)、これらの箇所は中央通りほど適切な剪定がされていない様子がみられました。
 いずれにしても、中央通りのクスノキの生育状況は近隣のクスノキ植栽と比較して良好でした。最北部では樹木活力度が低い傾向がみられましたが、高松駅に近くなることによる交通量の多さに起因した管理圧の強さ、湾岸部に近づいていることなどが原因として考えられます。これらは他の道路植栽についても調査を行い、改めて考察したいところです。

4.高松市街地におけるクスノキの生態系サービス評価
 中央通りのクスノキによる大気環境改善効果は、1本あたり平均で年間132.8円相当と評価され、国道11号線(年間56.0円/本)、中央公園(年間76.5円/本)よりも高い生態系サービスを有することがわかりました(表-2)。中央通りのクスノキの良好な生育と高い生態系サービスは、適切な剪定などの良好な植栽管理によるものと考えられました。
 中央通り全体のこれまでの炭素蓄積量は769,199円相当、大気環境改善効果は年間25,224円相当にのぼりました。さらに、CO、O3、PM2.5などの代替価格は日本ではまだ示されておらず、これらの評価を加えればさらに評価額が上がります。また、雨水流出抑制・暑熱緩和機能などや、景観的価値も評価対象にできるはずで、今後はこれらも貨幣価値評価を行うことが課題です。

表-2 高松市市街地におけるクスノキ植栽の生態系サービス評価額
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※ 大気汚染物質: CO, SO2, NO2, O3, PM2.5
※ 大気汚染物質除去量の評価額は代替価格が提示されているSO2, NO2の合計値
※ 炭素蓄積量は調査区間全体の評価値、年間炭素固定量・大気汚染物質除去量は1本あたりの平均値を示す

 最後になりましたが、中央通りの調査に際しお取り計らいを頂きました四国地方整備局の皆様、中央通り中央分離帯植栽に関する資料・ご助言を頂いた増田拓朗先生、現地調査の協力を頂いた香川大学創造工学部 環境緑化工学研究室の皆様に厚く御礼申し上げます。

 本研究は一般財団法人百十四銀行学術文化振興財団からの助成を受けて実施しました。また、解析の一部は科研費(18H02226)の助成により実施しました。
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植生工の雨滴に対する侵食防止効果の新たな評価手法の検討 [2021年10月13日(Wed)]
2021年9月に開催された第52回オンライン大会で優秀発表賞(論文・技術報告部門)を受賞された五郎部生成さんからの投稿が届きました!

植生工の雨滴に対する侵食防止効果の新たな評価手法の検討
五郎部生成(北見工業大学)


この度は第52回日本緑化工学会大会の論文・技術報告部門にて、優秀発表賞を頂戴し大変光栄です。これもひとえに、指導教員である中村大准教授の親身なご指導があったからこそです。また、web討議期間中にご質問を頂いた皆様にも心より感謝申し上げます。
今から本研究について簡単ではありますが紹介していこうと思います。

1.はじめに
植生工はのり面に植物を繁茂させ、根系を侵入させることで表層地盤を補強する工法であり、雨水による侵食を防止する効果が期待できる。本研究では、植生工が有する侵食防止効果を明らかにすることを目的として、草本植物を生育させた土供試体に対する侵食抵抗試験方法について検討を行った。

2.実験条件と方法
本研究では砂質土を締固めた土供試体と、これにケンタッキーブルーグラスを散播して植物根系を発達さ せた根系含有土供試体を作製した。また,根系含有土供試体には試験前に茎葉を根元でカットしたものと、茎葉を残したもの(茎葉部有土供試体)がある。各供試体は直径60 mm、高さ130 mm の円柱形で、締固め度 Dcは85%と95%の2 種類である。図-1は侵食抵抗試験装置の模式図である。供試体は上下を逆にして設置し、下方のノズルから水をストレートに上方へ向かって噴射して侵食を発生させた。試験は0.02 MPaと0.04 MPaの2種類の水圧で行った。試験前後および試験中の任意の時間に X 線 CT スキャンを行い、供試体内の侵食状況を非破壊で観察した。
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3.試験結果および考察
図-2は各供試体の侵食抵抗試験終了時におけるX線CT スキャン画像の一例である。画像では土が灰色、侵食でできた空洞部分が黒色で示されている。この画像中の黒色部分が最も深く侵入した箇所を侵食深として読み取った。図から、土供試体では侵食は水流の方向に真直ぐ進行し、貫通していることがわかる。一方、根系含有土供試体、茎葉部有土供試体では侵食孔がボトル状に形成され、侵食が止まっていることがわかる。図-3はX 線CT画像から読み取った侵食深の経時変化である。図-3(a)から、土供試体は短時間で貫通しており、貫通までにかかる時間はDcが小さく、水圧が高いほど短くなっていることがわかる。この傾向は図-3(b)の根系含有土供試体においても概ね同様であることが確認できる。一方で、図-3(b)の茎葉部有土供試体ではDcが小さく、水圧が高いケースであっても、侵食深が小さい供試体もみられた。このことから、本研究の実験条件であれば Dcや水圧の影響を受けないほど、茎葉の侵食防止効果は極めて大きいと解釈できる。

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4.まとめ
本研究で実施した試験方法によって、植物根系を含む土の雨滴に対する侵食抵抗をある程度定量的に評価できるようになったと考えられる。この試験方法は植生工の雨滴に対する侵食防止効果を評価する手法として、極めて有効であると言える。


今回の受賞が初めてで大変嬉しい気持ちで一杯ですが、これからも決して驕ることなく精進していこうと思います。最後になりますが、この場で研究を紹介させていただきありがとうございます。

北海道胆振東部地震で発生した表層崩壊地における初期の植生回復と地域資源活用緑化/山田夏希 [2021年09月29日(Wed)]
2021年9月に開催された第52回オンライン大会で優秀発表賞(論文・技術報告部門)を受賞された山田夏希さんからの投稿が届きました!

北海道胆振東部地震で発生した表層崩壊地における初期の植生回復と地域資源活用緑化
山田夏希(北海道大学)


 この度は第52回日本緑化工学会において, 優秀発表賞を受賞することができ大変光栄です。本研究は“地域資源”, “SDGs”をキーワードとして行いました。NPOやボランティア, 地域の方々にご協力いただきながら, 震災発生後の崩壊斜面の倒木の処理, 試験に用いる木柵工の作成から防鹿柵の設置まですべて手作業で行いました。力を貸していただいた関係者の皆様にこの場を借りてお礼申し上げます。また, 研究から論文執筆まで, ご指導いただきました森本淳子准教授, 中村太士教授, 孫田敏様をはじめとする方々に感謝申し上げます。初めての論文執筆, 発表でしたが, 本学会で多くの方からのご質問や意見をいただき大変勉強になりました。この場をお借りし, 簡単にではありますが私の研究内容をご紹介させていただきます。

1. はじめに
 表層崩壊の要因は豪雨, 地震, 火山活動など様々である。相次ぐ表層崩壊は多くの人々の生活に影響を及ぼし, また生態系をも変容させてきた。表層崩壊が発生した場合, さらなる侵食と崩壊の防止を目的として山腹工事を行うことが一般的である。侵食防止機能が期待される緑化植物は, 山腹工事において多く用いられてきた。しかしその中心は外来草本であり, これらは地域生態系に大きな影響をもたらすことが明らかになってきた。そこで近年では, 従来の手法が見直され, 郷土種や木本など, 地域生態系の保全や森林の多面的機能を重視した手法へ転換されつつある。環境に配慮し, 地域性の資源を用いた山腹緑化はSDGs (Sustainable Development Goals) の観点からも重要である。本研究では北海道胆振東部地震で発生した緩斜面の表層崩壊地において, 現場の地域資源を用いた木柵工と郷土種の草本・木本を利用した山腹緑化の有効性を評価することを目的とした。

2. 材料並びに方法
 調査地は北海道勇払郡安平町早来の二次林に発生した2つの表層崩壊地である。防鹿柵や木柵工, 緑化植物, 自然侵入促進工の組み合わせによって6種類の処理を設定し, それぞれ6反復とした。すなわち, 処理区画は表層崩壊地に何も処理を行わなかった“Control”, 防鹿柵を設置した”Df(Df; deer fence)“, 防鹿柵と木柵工を設置した“ DfWf (Wf; wood fence)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物を設置した”DfWfP (P; plant)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物とヤシマットを設置した“DfWfP+P (+P; palm mat)”, 防鹿柵と木柵工と緑化植物と藁マットを設置した”DfWfP+S (+S; straw mat)”である。
 環境調査として土壌含水率, 照度, 土砂移動量を計測し, 箱ひげ図により比較を行った。
Kruskal-Wallis検定及びPairwise Permutation検定で各区画の植被率, 自然侵入の植物に関して実生数と種数, 緑化植物に関して活着率と成長率を調べた。DCAで種構成の違いを調べた。

3. 結果・考察
 防鹿柵の有無で植被率に差はなく, 防鹿柵の効果は実証されなかった。DCAの結果より, 木柵工の有無で自然に侵入した植物の種構成に違いがあり, ControlとDfは, 遷移初期種, 遷移中期種を多く含んでいた。それ以外の四つの区画は, ControlとDfに比べて遷移後期種を多く含んでいた。植被率は, 緑化植物を使用した処理区画で高い傾向があり, 初期緑化を迅速に進めるためには, 緑化植物の導入が有効であると考えられた。また, 自然に侵入した植物の実生数と種数は各処理区画で有意な差は見られなかったことから, 本研究で用いた郷土種の緑化植物は, 自然に侵入する植物の定着を阻害しなかった。土砂移動量は, DfWfP+P, DfWfP+Sの処理区画で低い傾向があり, ヤシや藁などの天然素材を主とする自然侵入促進工は侵食防止材として機能することが分かった。

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図-1 土壌含水率, 照度, 土砂移動量の箱ひげ図

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図-2 各処理区画全体の植被率と, 自然侵入の植物の実生数と種数における箱ひげ図

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図-3 自然侵入の植物におけるDCA 結果
抽出された第1 軸,第2 軸で表現されている。楕円は各処理の種構成の95%確率楕円で,処理の種類ごとに色分けしている。各点は植物種を示す。


4. おわりに
 緩斜面の表層崩壊地において生態系に配慮した緑化を行うにあたり, 初期の緑化の目的で郷土種, 土砂流出防止の目的で自然侵入促進工を設置することが, 森林再生に貢献すると考えられる。本研究の崩壊地に対する処理はSDGsを重視し, 天然素材を用いて,地域や遠方のボランティアの方々など多くの協力の下で行った。本研究で行った処理が初期の植生回復に及ぼす影響を検証するために, 今後も経年的な変化を観察する必要がある。

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 本研究は初期の植生回復を調査したものであり, 継続して調査を行うことで新しい発見があると思います。今後も調査を行い, 経年変化を観察していけたらと思います。
 最後になりましたが, 本研究に関わっていただいたすべての皆様に感謝申し上げます。ありがとうございました。


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