2月10日(火)・11日(水・祝)の2日間、山口県立美術館で行われた
第78回山口県美術展覧会審査会を
傍聴しました



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第78回山口県美術展覧会 要項山口県美術展覧会審査会は、審査の全ての段階が一般に公開されていて、事前に申し込めば、誰でも傍聴することができ、審査員の視点や考え方を直に体感することができます。
公開審査にしている公募展は、全国でも珍らしいようです。
今年度の審査員は、昨年度とは総入れ替えで、
金沢21世紀美術館館長で東京藝術大学准教授・金沢美術工芸大学名誉客員教授の
鷲田めるろさん、美術作家・舞台演出家の
やなぎみわさん、キュレーターで佐賀大学芸術地域デザイン学部教授の
花田伸一さんの3名です。
鷲田審査員は、第73回(2019年度)と第74回(2021年度)でも審査委員をされており、お久しぶりの審査員です。過去の出展作品のことをとてもよく記憶されていて、さすがだと思いました。
やなぎ審査員と花田審査員は、今回が初めてで、作者のポートフォリオや作品のステートメントなど情報の殆どない審査に随分戸惑われている様子で、「タイトルとビジュアル、技法・素材し分からない状態ではなかなか判断がしずらい」と何度も言われていました。
審査は、作品のジャンルを分けず、
1日目午前、
一次審査:入選候補作品を選定1日目午後、
二次審査:入選作品を選定2日目午前、
三次審査:入賞作品を選定の三段階で行われます。
作品は、AタイプとBタイプに分けて、2月6日(金)〜8日(日)に搬入受付されています。
Aタイプ:審査に際して、比較的容易に移動が可能な作品
絵画・写真など主に壁に掛けて展示する作品
Bタイプ:大きい、重い、割れやすい、など、審査中の移動が難しい作品
陶芸・彫刻・インスタレーション・大掛かりな組作品などBタイプのうちインスタレーション・大掛かりな組作品など作品設置のためのスペースが必要なものは、12月6日(土)〜14日(日)に事前協議され、美術館内に設置されています。
一次審査・二次審査は、
繰出審査:審査員が着席し、その前に作品を繰出して審査
据置審査:審査員が移動し、据置された作品を審査されます。
傍聴者は、繰出審査の時は、審査員席の後ろに設けられた傍聴席に座り、審査の様子を見ます。据置審査の時は、館内を審査員と共に移動して審査の様子を見ることができます。

10日(火)の午前中は入選候補作品を選ぶ
一次審査が行われました。
今年度の
出品作品は
267点です

3人の審査員が「
○」と「
×」の札をそれぞれ持ち、1人でも「
○」の札を上げれば、その作品は入選候補となります。
一次審査は出品作品全てを観ることができるまたとない機会です。
今年も繰出審査の際は、最前列の真ん中、鷲田審査員の真後ろの席に座わることができたので、作品だけでなく審査員の表情や仕草までしっかり見ることができ、ラッキーでした。
出品作品267点のうち
178点が
入選候補作品として残りました。内訳は、Aタイプ213点のうち143点・Bタイプ54点のうち35点です。

10日(火)の午後からは入選作品を選ぶ
二次審査が行われました。
第一次審査で入選候補作品となった178点について、2人の審査員が「
○」の札を上げた作品が、入選となります。「
○」1つは選外です。
「
○」が1つの場合は、「
○」をあげた審査員が一つひとつの作品について「何故
○なのか」を丁寧に述べられました。
他の審査員の押しコメントで「
×」を「
○」に変えられ、めでたく入選作品になったものはAタイプ2点・Bタイプ1点だけで、審査員それぞれが確固としたお考えをお持ちなんだと思いました。
大変な苦労の跡が見られる大作や、作家活動で実績のある方の作品も次々と落選していきました

Aタイプ(繰り出し作品)59点・Bタイプ(据え置き作品)22点の計
81点が
入選作品となりました。
これらの入選作品81点は2月26日(木)よりの展覧会で展示されます。

2日目の11日(水・祝)は、入選作品から入賞作品を選定する
三次審査です。
館内に入ると選外作品は全て撤去され、入選以上の作品81点のみが置かれていました。
(1)まず入選作品81点から入賞(佳作以上)作品を選びます。
鷲田審査員が「黄」・やなぎ審査員が「赤」・花田審査員が「青」の色紙を
15枚ずつ持ち、館内を回りながら作品の前に置いていきます。色紙が1枚でも置かれた作品は入賞作品ということになります。
傍聴者も、自由に館内を回り審査風景を傍観ことができます。
その結果、Aタイプ27点・Bタイプ8点の計
35点が
入賞作品(佳作以上)となりました。
大賞1点、優秀賞5点というのは要項で決まっているので、ここで、今年度の
佳作作品数が29点に確定しました。
(2)入賞作品(佳作以上の作品)35点から大賞を含む優秀賞作品6点を絞り込みます。
企画展示室の1番奥の審査会場に、色紙が1枚置かれた作品のみ集められ、動かすことのできないBタイプ7点については写真が机の上に置かれました。
審査員が各々
5枚ずつ色紙を持ち、審査会場を回りながら作品の前に色紙を置いていきます。
色紙が1枚でも置かれた作品は大賞を含む優秀賞候補作品ということになります。
傍聴者はスロープからその様子を見ます。
入選作品35点のうち、Aタイプ10点・Bタイプ6点の計
16点が大賞を含む優秀賞候補作品として残りました。
Aタイプは
《居場所》
(絵画)《フレーミング (つまらない風景あるいは幾何学的抽象)2025-3》
(絵画)《安全への回避》
(写真)《in their eyes》
(絵画)《somewhere not here》
(絵画)《シーラカンスの孤独》
(絵画)《ジャックの死(ファントマ)》
《ダンボールキッチン 無意味な傘》
《彩る》
(絵画)《The Great Gig In The Sky》(
写真・3枚組) の10点
Bタイプは
《マーチ》
《審査》
《TRAVEL シリーズ WOOD CUT インカ 紀行 回想》
《奏〜太陽と旋律》
など6点
(3)絞り込まれた大賞を含む優秀賞候補作品16点から大賞を含む優秀賞作品6点にさらに絞り込みます。
色紙が置かれなかった作品は運び出され、色紙は外され、企画展示室の1番奥の審査会場には16点だけが置かれています。
審査員は各々
3枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
色紙が1枚以上置かれた作品は、Aタイプ4点・Bタイプ3点の計
7点でした。
鷲田審査員⇒《マーチ》《審査》《TRAVEL シリーズ WOOD CUT インカ 紀行 回想》
やなぎ審査員⇒《マーチ》《審査》《in their eyes》
花田審査員⇒《居場所》《フレーミング (つまらない風景あるいは幾何学的抽象)2025-3》《安全への回避》
それぞれ自分の選んだ作品の推しコメントを述べられました。
その後、自分以外の審査員の選んだ作品についてコメントされました。
(4)絞り込まれた大賞を含む優秀賞候補作品7点から大賞を含む優秀賞作品6点にさらに絞り込みます。
色紙が置かれなかった作品は運び出され、展示室には色紙はそのままに7点だけ置かれています。
まず、ここで審査員が色紙2枚置かれたBタイプ
2点の作品は優秀賞として決定しました。
@《マーチ》
A《審査》
大賞+優秀賞作品に決定した作品2点を除き、残りの候補作品 Aタイプ4点・Bタイプ1点の計5点から4点を絞り込みます。
前回の色紙はそのまま置かれている状態のところに、審査員が各々
1枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
鷲田⇒《TRAVEL シリーズ WOOD CUT インカ 紀行 回想》
やなぎ⇒《in their eyes》
花田⇒《居場所》
前回の色紙に加え、色紙が2枚置かれた作品が
3点が大賞を含む優秀賞作品に決まりました。
B《TRAVEL シリーズ WOOD CUT インカ 紀行 回想》
C《in their eyes》
D《居場所》
(5)大賞+優秀賞作品に決定した作品5点の他に、もう1点を絞り込みます。
色紙の置かれなかった作品は裏返され、残ったAタイプ2点に、審査員各々
1枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
鷲田審査員・やなぎ審査員⇒ 《フレーミング (つまらない風景あるいは幾何学的抽象)2025-3》
花田審査員⇒《安全への回避》
2枚置かれたAタイプ
1点が優秀賞以上に決まりました。
E《フレーミング (つまらない風景あるいは幾何学的抽象)2025-3》
こうして、優秀賞以上の作品6点が決定しました。
(6)@〜Eの6点から、大賞1点を決めます。
審査員各自
1枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
鷲田審査員・花田審査員⇒《マーチ》
やなぎ審査員⇒《審査》
そして、2枚置かれた《マーチ》が見事大賞に決定しました
大 賞 1点優秀賞 5点佳 作 29点入 選 46点かいつまんでいうと、こんな流れで大賞が決定しました。
267点(応募作品)
↓
【一次審査:入選候補作品選定】
178点(入選候補作品決定)・・・選外89点
↓
【二次審査:入選作品を選定】
81点(入選数決定)・・・選外97点
・・・選外作品
186点決定
↓
【三次審査:入賞作品を選定】
(1)
35点(入賞以上作品選定)
・・・佳作作品数
29点決定
・・・入賞作品以外の入選作品
46点決定
↓
(2)16点(入賞作品絞り込み)
↓
(3)7点(入賞作品絞り込み)
↓
(4)(5)6点(入賞作品絞り込み)
・・・優秀賞以上の入賞作品
6点選定
・・・佳作作品
29点決定
↓
(6)
1点(大賞作品決定)
・・・大賞作品
1点決定
・・・優秀賞作品
5点決定
審査員の方々は、作品に真摯に向き合い、その中から多くの情報を読み取り、作者の意図を豊かに想像する、その鋭い観察力と想像力には敬意を表します。
入選作品を選定するときや入選作品の中から入賞作品や大賞を決めるときの審査員同士の協議はとても緊張感があり、審査の過程に立ち会った(傍聴した)からこそ、推す理由、推さない理由など伺うことができます。
審査が終わり、傍聴者による審査員への質疑応答等の時間になりました。
選外となった出品者1名の方が質問し、アドバイスを受けられていました。
最後に審査員の方々の審査を終えての感想なりを拝聴したかったのですが、その時間が設けられず、少し残念でした。
大賞を受賞された松本一雄さんが、ずっと出品されているのを知っていたので、今回大賞を受賞されたこと、私のことのように嬉しいです。
今年度の県美展には
197人とグループ
3組からの267点だそうです。

花田伸一(はなだ・しんいち)

キュレーター、佐賀大学芸術地域デザイン学部教授。
1972年福岡県生まれ。九州大学文学部哲学科美学美術史専攻卒業。北九州市立美術館学芸員(1996〜2007)、フリーランスを経て現職(2016〜)。美術館企画のほか地域でのアートプロジェクトを多く手掛ける。主な企画に「6th北九州ビエンナーレ〜ことのはじまり」(北九州市立美術館、 2001)、「千草ホテル中庭PROJECT」(北九州市、2008〜15)、「ながさきアートの苗プロジェクト2010 in 伊王島」(長崎市、2010)、「街じゅうアート in 北九州2012 ART FOR SHARE」、「ちくごアートファーム計画」(九州芸文館、 2014・15・19)、「佐賀モバイル・アカデミー・オブ・アート」(佐賀大学、2017〜24)、「響きあうアート」(佐賀大学美術館、2023)。企画協力として「第5回福岡アジア美術トリエンナーレ2014」「釡山ビエンナーレ2014特別展アジアン・キュレトリアル」。共著に『Art Guide to Asia』(国際交流基金、2009)他。
山口県美展の審査は初めて。

やなぎみわ

美術作家、舞台演出家。
1967年兵庫県生まれ。京都市立芸術大学大学院美術研究科(工芸専攻)修了。1993年に エレベーターガールをテーマにした作品で初個展、以後「婆々娘々!」(国立国際美術館、2009)、「神話機械」(高松市美術館他5館、2019~20)など国内外で個展多数。第53回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展(2009)の日本代表作家。2011年より演劇活動を開始、近代美術の黎明期などをテーマに美術館や劇場で公演、北米ツアーも果たす。2014年に台湾製の特殊なステージトレーラーを製造、輸入し、野外巡礼劇を各地で公演。2021年には、台湾文化局の依頼で、台湾語オペラ「アフロディーテ〜阿婆蘭〜」の脚本・演出・美術を手がけた。神戸では海上公演を行い、その後、時宗の一遍上人の軌跡と芸能を研究する「YUYAKU 踊躍歓喜」が発足。近年は鋳造作品も手掛け、 大岡信賞、大佛次郎賞など、文学賞の賞牌制作も行っている。
山口県美展の審査は初めて。

鷲田めるろ(わしだ・めるろ)

金沢21世紀美術館館長。東京藝術大学准教授(2023〜)、金沢美術工芸大学名誉客員教授(2022〜)。
1973年京都府生まれ。東京大学大学院美術史学専攻修士課程修了。世田谷美術館を経て、1999年から開館準備中の金沢21世紀美術館のキュレーターとなり(〜2018)、2004年開館以降は「妹島和世+西沢立衛/SANAA」展(2005)、「金沢アートプラットフォーム2008」(2008)、「島袋道浩:能登」(2013)など、地域との交流や市民参加をテーマとした現代美術展、建築展を多数企画。一方で、金沢在住の若手美術家、建築関係者とともにCAAK(Center for Art & Architecture, Kanazawa/2007〜2017)を設立し、金沢の町家を拠点としたアーティスト・イン・レジデンス活動を 主催するなど、地域での活動も展開。第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展日本館キュレーター(2017)、あいちトリエンナーレ2019キュレーター等を歴任。十和田市現代美術館館長(2020〜2025)を経て、現職(2025〜)。
山口県美展の審査は3回目。>
※2月24日に山口県立美術館より審査結果の発表がありましたので、作品名を記載しました
第78回山口県美術展覧会 審査結果一覧