中原中也を読む会「蓄音機で中原中也と同時代の音楽を聴く」に参加しました(4)
[2026年03月17日(Tue)]
【前回の続き】
中原中也記念館には、中原中也が所蔵していたレコードが17枚が残されています。
『新編 中原中也全集 別巻 (下) 資料・研究篇』(角川書店 2004.11.30)P115〜118「中原中也所蔵レコード一覧」には、そのリストが載っています。また、中原記念館「収蔵資料データベース」でインターネット公開されています。
その17枚の内の14枚を西洋音楽が占めています。
2005(平成17)年7月27日から9月25日(日)に中原中也記念館で開催された「特別企画展「中原中也と西洋音楽」」では、その14枚が展示されていました。『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P16「中原中也所蔵レコード」には、そのリストが掲載されています。

中原中也が所蔵していたレコードを少し挙げてみましょう。
Aバッハ-グノー
「アヴエ・マリア」
Bマスネ
「挽歌(エレジー)」
チェロ独奏
M・ヴィクトル・パスカル(M. Victor Pascal)コンセール・パドルーのソリスト(Soliste des Concerts Pasdeloup)
ハープ/ピアノ伴奏
ドゥーニーズ・エルブレシュット(Mlle Denies Herbrecht)
番号
VICTOR K6003
大岡昇平「中原中也の酒」(『酒』1961年3月号 9巻3号(酒之友社 1961(昭和36))(『中原中也』P346〜348(大岡昇平/著 角川書店 昭和49.1.15))によると、マスネ「エレジー」を愛唱していたようです。
サラサーテ
「ツイゴイネルヴアイゼン〜ヂプシーの唄」(Zigeunerweisen Gipsy Airs)
ヴァイオリン
ミッシャ・エルマン(Mischa Elman)
ピアノ
キャロル・ホリスター(Carroll Holister)
番号
VICTOR DB1536
発売
1932 (昭和7)年
Aナッチェス(ナチェス、ナシェ)Nachèz
「ジプシー・ダンス」(Gypsy dances, op. 14)
Bワーグナー
「アルバムの綴り」
ウィルヘルミ編(Albumblatt in E-Flat Major (arr. A. Wilhelmy))
ヴァイオリン
フーゴ・コルベルク(Hugo Kolberg)
ピアノ伴奏
パンチョ・ウラディゲロフ (Pantscho Wladigeroff)
番号
POLYDOR (本盤) 30114
備考
10インチ
ベートーヴェン
「ピアノソナタ第23番 ヘ短調 作品57」(「熱情」)(Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57 "Appassionata" )
第1楽章
ピアノ
ヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)
番号
POLYDOL 40186
ベートーヴェン
「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調」(「月光」)(Sonata in C Sharp-minor(Moon Light))
第2楽章・第3楽章
ピアノ
ヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)
番号
POLYDOL 66173
「お道化うた」で、ベートーヴェン「月光」について、「ベートーヴェンは、盲目の少女のために『月光ソナタ』を作曲した」という伝説を揶揄して、道化してみせます。
お道化うた
中原中也
月の光のそのことを、
盲目少女(めくらむすめ)に教へたは、
ベートーヴェンか、シューバート?
俺の記憶の錯覚が、
今夜とちれてゐるけれど、
ベトちやんだとは思ふけど、
シュバちやんではなかつたらうか?
霧の降つたる秋の夜に、
庭・石段に腰掛けて、
月の光を浴びながら、
二人、黙つてゐたけれど、
やがてピアノの部屋に入り、
泣かんばかりに弾き出した、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
かすむ街の灯とほに見て、
ウヰンの市(まち)の郊外に、
星も降るよなその夜さ一と夜、
虫、草叢(くさむら)にすだく頃、
教師の息子の十三番目、
頸の短いあの男、
盲目少女(めくらむすめ)の手をとるやうに、
ピアノの上に勢ひ込んだ、
汗の出さうなその額、
安物くさいその眼鏡、
丸い背中もいぢらしく
吐き出すやうに弾いたのは、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
シュバちやんかベトちやんか、
そんなこと、いざ知らね、
今宵星降る東京の夜(よる)、
ビールのコップを傾けて、
月の光を見てあれば、
ベトちやんもシュバちやんも、はやとほに死に、
はやとほに死んだことさへ、
誰知らうことわりもない……
バッハ
「トッカータとフーガ ニ短調」
オルガン
ワルター・フィッシャー
番号
POLYDOL 40324
吉田秀和「中原中也のこと」(『文芸』1962年5月号 1巻3号(河出書房新社 1962.5)掲載)(『ソロモンの木』(吉田秀和/著 河出書房新社 1970(昭和45).11月))(『吉田秀和全集』第10巻エセー(白水社 1975.10))(『文芸読本 中原中也』(河出書房新社 1976(昭和51).11))(『文学のとき エッセイの小径』(白水Uブックス)(吉田秀和/著 白水社 1994.9))(『ソロモンの歌・一本の木』(講談社文芸文庫)(吉田秀和/著 講談社 2006.2))によると
歌といえば、中原は、よくヴェルレーヌやランボーの詩をふしをつけて朗読してくれたし、そのほかにもバッハのあのすばらしいハ短調の「パッサカリア」が大好きで、よくあのバス主題を歌っていた。
また、内海誓一カ「中原中也と音楽」(『群像』1989年2月号 44巻2号(講談社 1989.2)P158〜170)によると
(略)彼の次に好きな盤はバッハのオルガン曲のハ短調パッサカリアとフーガであった。(略)指揮者ストコフスキーが華麗な管弦楽法を用いて編曲したものであったが、(略)
に言及されているバッハ「パッサカリアとフーガ」にも触れます。こちらは、中也が聴いていたことに間違いないのですが、中也旧蔵レコードとしては残っていません。
バッハ
「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582」(Passacaglia and Fugue in C Minor, BWV 582)
L. ストコフスキーによる管弦楽編
編曲
レオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski)
指揮
レオポルド・ストコフスキー
演奏
フィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)
録音
1929年
また、当然と言えばそうですが、その他にも愛聴したレコードがあったことを、内海誓一郎、大岡昇平、吉田秀和らの友人たちが伝えています。
その中から、
マスネ「エレジー」
ベートーヴェン『ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調』(「月光」)
バッハ『パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582』
チャイコフスキー ピアノ組曲『四季』より6月「舟歌」
の4曲を、中也所蔵および当時発売されたSPレコードの音源によって試聴機で実際に聴くことができるようになっていました
舟歌については
https://blog.canpan.info/jointnet21/archive/760
で触れています。
そこには、はっきりとした旋律をもつ楽曲に愛着を示し、自らもそれを口ずさむという、中也独特の西洋音楽への接し方が浮かび上がっています。
(『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P9「第U部「中原中也の愛聴盤」より抜粋)
平成29年度特別企画展「詩が生まれた場所へ ―中也の見た風景」でも、レコード VICTOR K6003 バッハ、グノー「アヴェ・マリア」/マスネ「エレジー」とレコード POLYDOR Order No.66173 ベートーヴェン「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2(「月光」)」でも展示されていました。
中原中也記念館には、中原中也が所蔵していたレコードが17枚が残されています。
『新編 中原中也全集 別巻 (下) 資料・研究篇』(角川書店 2004.11.30)P115〜118「中原中也所蔵レコード一覧」には、そのリストが載っています。また、中原記念館「収蔵資料データベース」でインターネット公開されています。
その17枚の内の14枚を西洋音楽が占めています。
2005(平成17)年7月27日から9月25日(日)に中原中也記念館で開催された「特別企画展「中原中也と西洋音楽」」では、その14枚が展示されていました。『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P16「中原中也所蔵レコード」には、そのリストが掲載されています。
中原中也が所蔵していたレコードを少し挙げてみましょう。
Aバッハ-グノー
「アヴエ・マリア」
Bマスネ
「挽歌(エレジー)」
チェロ独奏
ハープ/ピアノ伴奏
番号
大岡昇平「中原中也の酒」(『酒』1961年3月号 9巻3号(酒之友社 1961(昭和36))(『中原中也』P346〜348(大岡昇平/著 角川書店 昭和49.1.15))によると、マスネ「エレジー」を愛唱していたようです。
サラサーテ
「ツイゴイネルヴアイゼン〜ヂプシーの唄」(Zigeunerweisen Gipsy Airs)
ヴァイオリン
ピアノ
番号
発売
Aナッチェス(ナチェス、ナシェ)Nachèz
「ジプシー・ダンス」(Gypsy dances, op. 14)
Bワーグナー
「アルバムの綴り」
ウィルヘルミ編(Albumblatt in E-Flat Major (arr. A. Wilhelmy))
ヴァイオリン
ピアノ伴奏
番号
備考
ベートーヴェン
「ピアノソナタ第23番 ヘ短調 作品57」(「熱情」)(Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57 "Appassionata" )
第1楽章
ピアノ
番号
ベートーヴェン
「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調」(「月光」)(Sonata in C Sharp-minor(Moon Light))
第2楽章・第3楽章
ピアノ
番号
「お道化うた」で、ベートーヴェン「月光」について、「ベートーヴェンは、盲目の少女のために『月光ソナタ』を作曲した」という伝説を揶揄して、道化してみせます。
お道化うた
中原中也
月の光のそのことを、
盲目少女(めくらむすめ)に教へたは、
ベートーヴェンか、シューバート?
俺の記憶の錯覚が、
今夜とちれてゐるけれど、
ベトちやんだとは思ふけど、
シュバちやんではなかつたらうか?
霧の降つたる秋の夜に、
庭・石段に腰掛けて、
月の光を浴びながら、
二人、黙つてゐたけれど、
やがてピアノの部屋に入り、
泣かんばかりに弾き出した、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
かすむ街の灯とほに見て、
ウヰンの市(まち)の郊外に、
星も降るよなその夜さ一と夜、
虫、草叢(くさむら)にすだく頃、
教師の息子の十三番目、
頸の短いあの男、
盲目少女(めくらむすめ)の手をとるやうに、
ピアノの上に勢ひ込んだ、
汗の出さうなその額、
安物くさいその眼鏡、
丸い背中もいぢらしく
吐き出すやうに弾いたのは、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?
シュバちやんかベトちやんか、
そんなこと、いざ知らね、
今宵星降る東京の夜(よる)、
ビールのコップを傾けて、
月の光を見てあれば、
ベトちやんもシュバちやんも、はやとほに死に、
はやとほに死んだことさへ、
誰知らうことわりもない……
バッハ
「トッカータとフーガ ニ短調」
オルガン
番号
吉田秀和「中原中也のこと」(『文芸』1962年5月号 1巻3号(河出書房新社 1962.5)掲載)(『ソロモンの木』(吉田秀和/著 河出書房新社 1970(昭和45).11月))(『吉田秀和全集』第10巻エセー(白水社 1975.10))(『文芸読本 中原中也』(河出書房新社 1976(昭和51).11))(『文学のとき エッセイの小径』(白水Uブックス)(吉田秀和/著 白水社 1994.9))(『ソロモンの歌・一本の木』(講談社文芸文庫)(吉田秀和/著 講談社 2006.2))によると
歌といえば、中原は、よくヴェルレーヌやランボーの詩をふしをつけて朗読してくれたし、そのほかにもバッハのあのすばらしいハ短調の「パッサカリア」が大好きで、よくあのバス主題を歌っていた。
また、内海誓一カ「中原中也と音楽」(『群像』1989年2月号 44巻2号(講談社 1989.2)P158〜170)によると
(略)彼の次に好きな盤はバッハのオルガン曲のハ短調パッサカリアとフーガであった。(略)指揮者ストコフスキーが華麗な管弦楽法を用いて編曲したものであったが、(略)
に言及されているバッハ「パッサカリアとフーガ」にも触れます。こちらは、中也が聴いていたことに間違いないのですが、中也旧蔵レコードとしては残っていません。
バッハ
「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582」(Passacaglia and Fugue in C Minor, BWV 582)
L. ストコフスキーによる管弦楽編
編曲
指揮
演奏
録音
また、当然と言えばそうですが、その他にも愛聴したレコードがあったことを、内海誓一郎、大岡昇平、吉田秀和らの友人たちが伝えています。
その中から、
の4曲を、中也所蔵および当時発売されたSPレコードの音源によって試聴機で実際に聴くことができるようになっていました
舟歌については
https://blog.canpan.info/jointnet21/archive/760
で触れています。
そこには、はっきりとした旋律をもつ楽曲に愛着を示し、自らもそれを口ずさむという、中也独特の西洋音楽への接し方が浮かび上がっています。
(『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P9「第U部「中原中也の愛聴盤」より抜粋)
平成29年度特別企画展「詩が生まれた場所へ ―中也の見た風景」でも、レコード VICTOR K6003 バッハ、グノー「アヴェ・マリア」/マスネ「エレジー」とレコード POLYDOR Order No.66173 ベートーヴェン「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2(「月光」)」でも展示されていました。



