福田百合子名誉館長と中也の詩「寒い夜の自我像」を読む @ 中原中也を読む会
[2025年12月26日(Fri)]
今日12月26日(金)、山口市湯田地域交流センターで、中原中也を読む会「福田百合子名誉館長と中也の詩「寒い夜の自我像」を読む」が開催されます

▲2020.3.10、中原中也記念館にて撮影。ハナモモは福島市から贈られたもの
日時
2025年12月26日(金)13:30〜15:00
場所
山口市湯田地域交流センター 2F 小会議室
山口市湯田温泉5-5-50
講師
福田百合子先生(中原中也記念館名誉館長)
参加費
無料
申込
初参加時のみ中原中也記念館に電話、FAX等にて要事前申込(当日申込可)
主催・問合
中原中也記念館
083-932-6430
083-932-6431
寒い夜の自我像
中原中也
1.
きらびやかでもないけれど、
この一本の手綱をはなさず
この陰暗の地域をすぎる!
その志明[あきら]かなれば
冬の夜を、われは嘆かず、
人々の憔燥のみの悲しみや
憧れに引廻される女等の鼻唄を、
我が瑣細[ささい]なる罰と感じ
そが、わが皮膚を刺すにまかす。
蹌踉[よろ]めくままに静もりを保ち、
聊[いささ]か儀文めいた心地をもつて
われはわが怠惰を諫める、
寒月の下をゆきながら、
陽気で坦々として、しかも己を売らないことをと、
わが魂の願ふことであつた!……
2.
恋人よ、その哀しげな歌をやめてよ、
おまへの魂がいらいらするので、
そんな歌をうたひだすのだ。
しかもおまへはわがままに
親しい人だと歌つてきかせる。
ああ、それは不可[いけ]ないことだ!
降りくる悲しみを少しもうけとめないで、
安易で架空な有頂天を幸福と感じ做[な]し
自分を売る店を探して走り廻るとは、
なんと悲しく悲しいことだ……
3.
神よ私をお憐み下さい!
私は弱いので、
悲しみに出遇ふごとに自分が支へきれずに、
生活を言葉に換へてしまひます。
そして堅くなりすぎるか
自堕落になりすぎるかしなければ、
自分を保つすべがないやうな破目になります。
神よ私をお憐れみ下さい!
この私の弱い骨を、暖いトレモロで満たして下さい。
ああ神よ、私が先づ、自分自身であれるやう
日光と仕事とをお与へ下さい!
一九二九.一.二〇.
中原中也(1907〜1937)の詩「寒い夜の自我像」は、「ノート小年時」 (1928〜1930) に書きとどめられている1929(昭和4)年1月20日に制作された全3節の作品です。
※「ノート小年時」は、中原中也が詩の清書用に使っていたノートで、表表紙に自身で「小年時」と記し、その回りが菱形の罫線で飾られてあることから呼んでいるもので、全部で16篇の詩が記されています。
国書データベースで公開されいて、中也自筆の「寒い夜の自我像」を見ることができます。
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/300020735/
全3節のうちの第1節だけが、同人誌『白痴群 創刊号』(昭和4(1929)年4月)に「詩友に」とともに発表されました。中也にとって、短歌や歌詞はあっても、詩が活字になったのは初めてでした。

第一詩集『山羊の歌』(文圃堂 1934)の「少年時」に収められた「寒い夜の自我像」も「白痴群」に発表された詩と同様に第2節、第3節を省略した形態です。
過去に「寒い冬の自我像」と「白痴群」のことを投稿しています。
https://blog.canpan.info/jointnet21/archive/281
▲2020.3.10、中原中也記念館にて撮影。ハナモモは福島市から贈られたもの
山口市湯田温泉5-5-50
寒い夜の自我像
中原中也
1.
きらびやかでもないけれど、
この一本の手綱をはなさず
この陰暗の地域をすぎる!
その志明[あきら]かなれば
冬の夜を、われは嘆かず、
人々の憔燥のみの悲しみや
憧れに引廻される女等の鼻唄を、
我が瑣細[ささい]なる罰と感じ
そが、わが皮膚を刺すにまかす。
蹌踉[よろ]めくままに静もりを保ち、
聊[いささ]か儀文めいた心地をもつて
われはわが怠惰を諫める、
寒月の下をゆきながら、
陽気で坦々として、しかも己を売らないことをと、
わが魂の願ふことであつた!……
2.
恋人よ、その哀しげな歌をやめてよ、
おまへの魂がいらいらするので、
そんな歌をうたひだすのだ。
しかもおまへはわがままに
親しい人だと歌つてきかせる。
ああ、それは不可[いけ]ないことだ!
降りくる悲しみを少しもうけとめないで、
安易で架空な有頂天を幸福と感じ做[な]し
自分を売る店を探して走り廻るとは、
なんと悲しく悲しいことだ……
3.
神よ私をお憐み下さい!
私は弱いので、
悲しみに出遇ふごとに自分が支へきれずに、
生活を言葉に換へてしまひます。
そして堅くなりすぎるか
自堕落になりすぎるかしなければ、
自分を保つすべがないやうな破目になります。
神よ私をお憐れみ下さい!
この私の弱い骨を、暖いトレモロで満たして下さい。
ああ神よ、私が先づ、自分自身であれるやう
日光と仕事とをお与へ下さい!
一九二九.一.二〇.
中原中也(1907〜1937)の詩「寒い夜の自我像」は、「ノート小年時」 (1928〜1930) に書きとどめられている1929(昭和4)年1月20日に制作された全3節の作品です。
※「ノート小年時」は、中原中也が詩の清書用に使っていたノートで、表表紙に自身で「小年時」と記し、その回りが菱形の罫線で飾られてあることから呼んでいるもので、全部で16篇の詩が記されています。
国書データベースで公開されいて、中也自筆の「寒い夜の自我像」を見ることができます。
https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/300020735/
全3節のうちの第1節だけが、同人誌『白痴群 創刊号』(昭和4(1929)年4月)に「詩友に」とともに発表されました。中也にとって、短歌や歌詞はあっても、詩が活字になったのは初めてでした。
第一詩集『山羊の歌』(文圃堂 1934)の「少年時」に収められた「寒い夜の自我像」も「白痴群」に発表された詩と同様に第2節、第3節を省略した形態です。
過去に「寒い冬の自我像」と「白痴群」のことを投稿しています。
https://blog.canpan.info/jointnet21/archive/281



