「山羊の歌」「生い立ちの歌」 @ 中原中也を読む会「原田和明のオートマタと中原中也」展見学(1)
[2025年03月12日(Wed)]
2月28日(金)、中原中也を読む会「企画展U(後期)「原田和明のオートマタと中原中也」見学」に参加しました

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会場には中也の詩を題材とした新作10点を中心に12点のオートマタが並でいます。

展覧会を担当された池田誠さんの解説を聴きながら鑑賞していきました。

オートマタ作家 原田和明さんに展覧会のお話を持っていったのが、2023年。
記念館としては、中也の詩をテーマにした新作1点を作っていただき、それ以外は、原田さんの今までの展示することを考えていたそうですが、原田さんは、会場全体を中也の詩をテーマにした作品を並べたい、と考えられたそうです。
中也のどの詩を選ぶか、どの部分をどんな仕掛けのオートマタにするか、とても大変な作業だっただろうこと、ご推察できます。

最初にできたのが、「山羊の歌」。

中也が鉄琴で「やぎさんゆうびん」を演奏します。
中也には「山羊の歌」という詩はありませんが、第一詩集が『山羊の歌』(文圃堂 1934)という名前です。
一方「やぎさんゆうびん」は周南市(徳山)出身のまど・みちおの作詞(作曲は團伊玖磨)です。
実は、まど・みちおは1909(明治42)年、中也は1907(明治40)年の生まれで、それほど年は違いがないのです。
同じ世代の山口県人コラボを思いついた原田さんに拍手。
なお、鉄琴はドイツから取り寄せたそうで本格的なものです。

それから、山口県立山口博物館の特別展「大解剖!からくりワールド」(2024年7月26日(金)〜8月25日(日))があったため製作は中断し、

2025年1月までの4ヶ月間で、2ヶ月で2作品作るという驚異的なペースで、現在中原中也記念館の2F展示会場に並べられている10作品はできました
最後にできたのが「生い立ちの歌」。

生い立ちの歌
T
幼年時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のやうでありました
少年時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました
十七―十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました
二十―二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……
U
私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍るみ空の黝(くろ)む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました
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今冬は何度かカイズカイブキに雪が積もり、オートマタと同じ世界がそのまま広がっているようでした。

▲2025年2月8日撮影
【次回に続く】



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会場には中也の詩を題材とした新作10点を中心に12点のオートマタが並でいます。
展覧会を担当された池田誠さんの解説を聴きながら鑑賞していきました。
オートマタ作家 原田和明さんに展覧会のお話を持っていったのが、2023年。
記念館としては、中也の詩をテーマにした新作1点を作っていただき、それ以外は、原田さんの今までの展示することを考えていたそうですが、原田さんは、会場全体を中也の詩をテーマにした作品を並べたい、と考えられたそうです。
中也のどの詩を選ぶか、どの部分をどんな仕掛けのオートマタにするか、とても大変な作業だっただろうこと、ご推察できます。
最初にできたのが、「山羊の歌」。

中也が鉄琴で「やぎさんゆうびん」を演奏します。
中也には「山羊の歌」という詩はありませんが、第一詩集が『山羊の歌』(文圃堂 1934)という名前です。
一方「やぎさんゆうびん」は周南市(徳山)出身のまど・みちおの作詞(作曲は團伊玖磨)です。
実は、まど・みちおは1909(明治42)年、中也は1907(明治40)年の生まれで、それほど年は違いがないのです。
同じ世代の山口県人コラボを思いついた原田さんに拍手。
なお、鉄琴はドイツから取り寄せたそうで本格的なものです。
それから、山口県立山口博物館の特別展「大解剖!からくりワールド」(2024年7月26日(金)〜8月25日(日))があったため製作は中断し、

2025年1月までの4ヶ月間で、2ヶ月で2作品作るという驚異的なペースで、現在中原中也記念館の2F展示会場に並べられている10作品はできました

最後にできたのが「生い立ちの歌」。
生い立ちの歌
T
幼年時
私の上に降る雪は
真綿(まわた)のやうでありました
少年時
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました
十七―十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のやうに散りました
二十―二十二
私の上に降る雪は
雹(ひよう)であるかと思はれた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました……
U
私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪(たきぎ)の燃える音もして
凍るみ空の黝(くろ)む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差伸べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました
今冬は何度かカイズカイブキに雪が積もり、オートマタと同じ世界がそのまま広がっているようでした。
▲2025年2月8日撮影
【次回に続く】