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第77回山口県美術展覧会審査会を傍聴しました [2025年03月11日(Tue)]
2月11日(火)・12日(水)、山口県立美術館で行われた第77回山口県美術展覧会審査会を傍聴しましたぴかぴか(新しい)

IMG_E4714.JPG IMG_E4713.JPG

山口県美術展覧会審査会は、審査の全ての段階が一般に公開されていて、事前に申し込めば、誰でも傍聴することができ、審査員の視点や考え方を直に体感することができます。
公開審査にしている公募展は、全国でも珍らしいようです。

今年度の審査員は、昨年度と同じく、彫刻家で京都市立芸術大学教授の松井紫朗さん、姫路市立美術館館長の不動美里さん、東京国立近代美術館主任学芸員で美術批評家の成相肇さんの3名です。松井さんは県美展の審査員が3回め、不動さん・成相さんは2回目の審査員。今年は審査委員長は不動さんがでした。

審査は、作品のジャンルを分けず、
1日目午前、1一次審査:入選候補作品を選定
1日目午後、2二次審査:入選作品を選定
2日目午前、3三次審査:入賞作品を選定
の三段階で行われます。

作品は、AタイプとBタイプに分けて、2月7日(金)〜9日(日)に搬入受付されています。
Aタイプ:審査に際して、比較的容易に移動が可能な作品
  絵画・写真など主に壁に掛けて展示する作品
Bタイプ:大きい、重い、割れやすい、など、審査中の移動が難しい作品
  陶芸・彫刻・インスタレーション・大掛かりな組作品など

Bタイプのうちインスタレーション・大掛かりな組作品など作品設置のためのスペースが必要なものは、11月23日(土)〜12月1日(日)に事前協議され、美術館内に設置されています。

一次審査・二次審査は、
繰出審査:審査員が着席し、その前に作品を繰出して審査
据置審査:審査員が移動し、据置された作品を審査

されます。
傍聴者は、繰出審査の時は、審査員席の後ろに設けられた傍聴席に座り、審査の様子を見ます。据置審査の時は、館内を審査員と共に移動して審査の様子を見ることができます。


111日(火)の午前中は入選候補作品を選ぶ一次審査が行われました。
今年度の出品作品296点ですexclamation
3人の審査員が「」と「×」の札をそれぞれ持ち、1人でも「」の札を上げれば、その作品は入選候補となります。

一次審査は出品作品全てを観ることができるまたとない機会です。
今年も繰出審査の際は審査委員長の不動審査員の真後ろの席に座わることができたので、作品だけでなく審査員の表情や仕草までしっかり見ることができ、ラッキーでした。

296点のうちAタイプ163点・Bタイプ60点の計223点入選候補作品として残りました。


211日(火)の午後からは入選作品を選ぶ二次審査が行われました。
第一次審査で入選候補作品となった223点について、2人の審査員が「」の札を上げたものが、入選となります。「」1つは選外です。

」「×」というのを一見で決めるのは素人の私からするととても困難なことのように思えますが、「完成度」「技術の高さ」「メッセージ性」「作者の意識」など水準を満たしているかどうかは経験値でほぼ分かるのだそうです。その上で、審査には審査員個人の好みや思い入れも多いに入っていて、「稚拙だけど好きだなあ」と推された作品がいくつかありました。

審査員の方は、一見なのに、「これは、あそこに展示してあった方と同じ作者ですね。」と鋭く指摘されていました。
私自身も知った方の作品は、いつも観ているので「◯ ◯さんの作品だ!」とだいたい分かりましたが、いくつも出品されているのを見落としたものもありました。

223点も残っているので、審査はサクサクすすむようでいて、「」が一つの場合は、「」をあげた審査員が一つひとつの作品について「何故なのか」を丁寧に述べられました。
その言葉で「×」を「」に変えられ、めでたく入選作品なったものが10数点ありました。その駆け引きがとても興味深かったです。

実は「×」が3つの時でさえ、「誰かがあげられると思ったんですが・・・」と言われることもあり、展示方法や次回作品のアドバイスをされた作品もありました。

「作品において中心的でない部分で疎かさが目立つ」「全体の見え方見せ方に配慮が足りない」作品は低評価になるようです。

公開審査ですから当然出品者が傍聴にたくさん来られていました。審査員の方は、どなたが出品者か分からずとも、傍聴されていることは承知の上でしょうし、自ずと一点一点の審査は真剣そのもので、「コメント」にも愛黒ハートがあふれています。

何故1枚の絵(写真)ではなく組作品にしたのか、何故インスタレーションにしたのか、など鋭く追求されていました。

ひとりが何点か出品している場合は、なるべく1点でもすくい上げようとされていました。1票ずつに割れている時は、話し合いで1点を残されたり、反対に、1点のみに絞られたことも多々ありました。

「あの人のあの作品も落ちるんだ・・・」と某賞の大賞を受賞された方々や著名なアーティストの方の作品がいくつか選外となりました。
成相さんは講評で「昨年と同じ作者と思われる出品作が気になり、技術的に優れていても既に自らのジャンルを確立しているから故に、チャレンジングな部分を見出し難いと思われる場合は低い評価としました」と言われていました。

「うまく描いた(創った)その先に、そこからこぼれ落ちるもののある」作品や、全てを呈示しているのではなく「観る人に問いかける、ひっかかる」作品を選ばれているようです。
独自性、鑑賞者を惹きつける力なども、審査の大きな要素のようです。

審査員は審査の途中で何度もタイトルを確認されていて、作品に込められたものをタイトルから得ようとされているようでした。タイトルの付け方も、すごく大切な要素だということが今回もよく分かりました。


Aタイプ91点・Bタイプ29点の計120点入選作品となりました。


32日目の12日(水)は、いよいよ入賞作品を選定する三次審査です。
会場に入ると選外の作品は撤去され、入選以上の作品のみ130点が据置されていました。

@まず入賞作品を選びます。
審査員は黄・青・赤の色違いの紙を15枚ずつ持ち、会場を回りながら作品の前に色紙を置いていきます。色紙が1枚でも置かれた作品は入賞作品ということになります。
傍聴者は、自由に館内を回ることができます。

その結果、Aタイプ26点、Bタイプ13点の計39点入賞作品となりました。

大賞1点、優秀賞5点というのは決まっているので、ここで佳作の作品数が33点というのが確定しました。

A入賞以外のAタイプの作品は裏返され、審査員が各々6枚ずつ色紙を持ち、会場を回りながら作品の前に色紙を置いていき作品を絞っていきます。
傍聴者は、自由に館内を回ることができます。39点のうち、1枚でも色紙が置かれた作品 Aタイプ9点、Bタイプ4点の計13点が入賞候補として残りました。

B色紙の置かれた作品のみ一つの部屋に集められ、Bタイプのなかで動かせない作品は机の上に写真が置かれました。審査員は各々3枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
傍聴者はテープの向こうからその様子を見ます。

色紙が1枚以上置かれた作品 8点が残りました。


Cさらに作品大賞+優秀賞候補作品を絞り込むため、審査員が各々2枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。

色紙が置かれた6点が、作品大賞+優秀賞候補作品に決まりました。
実は「Self - Portrait 25 - 1」が不動審査員・松井審査員の2票を獲得していたのですが、松井審査員が紙の置いていなかった「フレーミング―つまらない風景あるいは幾何学的抽象(中に見る/外に見る、その相互浸透から現われるもの)」へ変更されたので、6点残ったという経緯があります。

一方、候補作として残っていた「《その後の世界でU》より〈蜘蛛の巣〉〈奇跡〉〈脱出〉」と「大好きな彼女が生て、さすってくれるだけで不思議と痛みが無くなる」の2点は、ここで佳作となることが決定し、本当に残念でした。

ここで、札の置かれなかった作品33点佳作と確定しました。

審査員が最後まで推された作品はこちらの6点です。
成相審査員
 「死への畏怖」
 「緋を背に」
松井審査員
 「ロケットパンチ9号」
 「フレーミング―つまらない風景あるいは幾何学的抽象(中に見る/外に見る、その相互浸透から現われるもの)」
不動審査員
 「Self - Portrait 25 - 1」
 「陶インスターレイション(苔むした宇宙の星たち)」


D残った6点から大賞1点を決めるため、審査員が1枚ずつ色紙を持ち、作品の前に色紙を置いていきました。
その結果、「Self - Portrait 25 - 1」に不動審査員と松井審査員の2票、「死への畏怖」に成相審査員1票が入りました。

協議の末、大賞に「Self - Portrait 25 - 1」が選ばれましたひらめき


大 賞 1点
優秀賞 5点
佳 作 33点
入 選 81点

かいつまんでいうと、こんな流れで大賞が決定しました。
296点(応募作品)
 ↓ 
【一次審査:入選候補作品選定】 
223点(入選候補作品決定)・・・選外73点
 ↓ 
【二次審査:入選作品を選定】 
120点(入選数決定)・・・選外103点 計176点決定
 ↓ 
【三次審査:入賞作品を選定】
@39点(佳作作品数33点決定)
    ・・・入賞作品以外の入選作品81点決定
 ↓
A13点
 ↓
B8点(優秀賞・大賞候補作品決定)
 ↓ 
C6点(佳作作品33点決定及び優秀賞以上作品6点決定)
 ↓ 
D1点(大賞作品1点・優秀賞作品5点決定)


審査が終わり、傍聴者による審査員への質疑応答等の時間になりました。
出品者2名の方が質問し、アドバイスを受けられていました。
例えば書に文字だの資料だので補強しインスターレーション作品とすることは、作品としての弱さを強調してしまう、と答えられていました。

私も大賞作品について質問したいことがありました。
不動審査員は大賞作品を「出口の見えない困難を抱えながら生きる現代の多くの人々に限界突破の力を与え得る可能性に満ちた作品」と絶賛され、昨年も「Self-portrait 24-3」一昨年も「Self portrait 42-12」が佳作、その前が「Self ・ portrait 41-32」が入選となっていました。松井審査員の講評「アートは生もの。如何に自立したものであるか、その優劣や強度だけが問われるのではなく、同じ時間を生きている人々の中でそれがどれだけ心動かすものとして位置づけることができるかが問われる」というのが大賞に選出された答えでしょうか。

審査の過程に立ち会うことができ、とても貴重な時間でした。


かわいい松井紫朗(まつい・しろう)かわいい
彫刻家、京都市立芸術大学教授。1960年奈良県生まれ。1986年、京都市立芸術大学大学院美術研究科修士課程修了。1983年の初個展以来、木・金属・石などを用いた独自の造形で、「アート・ナウ’ 85」展(兵庫県立近代美術館 1985)に選出されるなど、「関西ニューウェーブ」を担う一人として注目を集める。1990年代からは、シリコンラバーやテント素材を用いた作品や、ナイロン素材の巨大なバルーンを空間に展開させる作品などを発表。JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究では、国際宇宙ステーションでの庭作り「宇宙庭」(2009〜2010)や、軌道上の宇宙空間の採取「Message in a Bottle」(2011〜2013)を実施する。2014年からは地上ミッションとして「手に取る宇宙」を各地で開催。文化庁優秀賞(1999)、宇部市制施行80周年・野外彫刻40周年記念賞(第19回現代日本彫刻展 2001)などの受賞歴がある。山口県美展の審査は3回目。

かわいい不動美里(ふどう・みさと)かわいい
姫路市立美術館館長。1961年京都府生まれ。大阪大学文学部美学科(美術史専攻)卒業。1985年度スペイン政府給費生としてマドリード・コンプルテンセ大学にて絵画、彫刻デッサンを学ぶ。岐阜県現代陶芸美術館学芸員、金沢21世紀美術館学芸課長を経て、2022年より現職。主な企画展に、2003年「ロシア・アヴァンギャルドの陶芸:モダン・デザインの実験」、2005年「Alternative Paradise〜もうひとつの楽園」、2009年「愛についての100の物語」、2010年「Alternative Humanities〜新しい精神のかたち:ヤン・ファーブル×船越桂」、2021年「日本の心象 刀剣、風韻、そして海景」など。共著に『芸術環境を育てるために』(松井利夫・上村博/編 京都造形芸術大学 東北芸術工科大学 出版局 藝術学舎 2020)がある。山口県美展の審査は2回目。

かわいい成相肇(なりあい・はじめ)かわいい
東京国立近代美術館主任研究員、美術批評家。1979年島根県生まれ。一橋大学大学院言語社会研究科修了。美術と雑種的な複製文化を混交させる企画を手がけながら、府中市美術館、東京ステーションギャラリー学芸員を経て2021年より現職。主な企画展に2011年「石子順造的世界 美術発・漫画経由・キッチュ行」(第24回倫雅美術奨励賞)、2014年「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン 「遠く」へ行きたい」、2017年「パロディ、二重の声 日本の1970年代前後左右」、2022年「大竹伸朗展」など。著書に『芸術のわるさ コピー、パロディ、キッチュ、悪』(かたばみ書房 2023)がある。山口県美展の審査は2回目。



=参考=
第76回(2023年度) 展覧会:3月7日(木)〜24日(日)
 出品246点 ⇒ 130点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作32点、入選92点
  大賞 井岡義朋「⿁哭啾啾」 
  第76回山口県美術展覧会審査結果
第75回(2022年度) 展覧会:11月24日(木)〜12月11日(日)
 出品246点 ⇒ 102点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作26点、入選70点
  大賞 吉村大星「ザルの惑星」 色鉛筆(4枚組)
  第75回山口県美術展覧会審査結果
第74回(2021年度) 展覧会:2021年12月3日(金)〜19日(日)
 出品396点 ⇒ 60点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作17点、入選37点
  大賞 大村洋二朗「Hello Japan」 多面化写真彫刻
  第74回山口県美術展覧会審査結果
第73回(2019年度) 展覧会:2020年2月13日(木)〜3月1日(日)
 出品364点 ⇒ 90点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作26点、入選58点
  大賞 津川奈菜「Loop Town」 ドローイング
第72回(2018年度) 展覧会:2019年2月14日(木) 〜3月3日(日)
 出品297点 ⇒ 114点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作26点、入選82点
  大賞 ロベルト・ピビリ「椹野川沿いのイノシシの行進」 インスタレーション
第71回(2017年度) 展覧会:9月16日(土)〜10月1日(日)
 出品396点 ⇒ 61点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作16点、入選39点
  大賞 山根秀信「食卓の上の廃墟2017」 インスタレーション
第70回(2016年度) 展覧会:9月23日〜10月10日
 出品402点 ⇒ 143点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作31点、入選106点
  大賞 保手濱拓「memento(グンバイナズナ)」
第69回(2015年度) 展覧会:9月26日〜10月12日
 出品362点 ⇒ 128点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作25点、入選97点
  大賞 深田佳心「ボクラノユクエ」
第68回(2014年度) 展覧会:10月2日〜10月19日
 出品359点 ⇒ 113点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作27点、入選80点
  大賞 小田善郎「顔遊び1」 アクリル画(5枚組)
第67回(2013年度)  展覧会:2014年3月13日(木)〜3月30日(日)
 出品469点 ⇒ 80点 ⇒ 大賞1点、優秀賞5点、佳作21点、入選53点
  大賞 山本新治・TAO「おれたちの仕事(春と修羅)A」


ブログをアップする時点で、既に審査結果が公表され、展覧会も開催中でもありますので、受付番号ではなく、作品タイトルを明記しました。
2月20日、山口県より「「第77回山口県美術展覧会」の開会式及び表彰式について 」が報道発表されました。
2月27日、非公開ではありますが、山口市美術展覧会の審査会がありました。

第77回山口県美術展覧会開催要項▼
https://www.pref.yamaguchi.lg.jp/uploaded/attachment/189972.pdf

第77回山口県美術展覧会審査結果▼
https://y-pam.jp/heart/2024/images/exhibition/pdf_result.pd
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