屋外展示「30歳の詩」(後期)を読む @ 中原中也記念館 中原中也を読む会
[2024年11月22日(Fri)]
今日11月22日(金)、中原中也記念館で、中原中也を読む会「屋外展示「30歳の詩」(後期)を読む」が開催されます
詩を読み深めたり、詩に曲をつけたものを聴いたり、 記念館の展示を学芸担当職員の解説とともに観たりしながら、 中也の詩の世界を楽しく味わおう、という会です。 詩にちょっと興味はあるけど なんか難しそう… という方に是非オススメです。 初めて参加ご希望の方は、事前にお電話(083-932-6430)にてお申し込みください。
日 時 2024年11月22日(金)13:30〜15:00
場 所 中原中也記念館
参加費 無料
主 催 中原中也記念館 083-932-6430
雨の朝
((麦湯は麦を、よく焦がした方がいいよ。))
((毎日々々、よく降りますですねえ。))
((インキはインキを、使つたらあと、栓(せん)をしとかなけあいけない。))
((ハイ、皆さん大きい声で、一々(いんいち)が一(いち)……))
上草履(うわぞうり)は冷え、
バケツは雀の声を追想し、
雨は沛然(はいぜん)と降つてゐる。
((ハイ、皆さん御一緒に、一二(いんに)が二(に)……))
校庭は煙雨(けぶ)つてゐる。
――どうして学校といふものはこんなに静かなんだらう?
――家(うち)ではお饅(まん)ぢうが蒸(ふ)かせただらうか?
ああ、今頃もう、家ではお饅ぢうが蒸かせただらうか?
子守唄よ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
然しその声は、どうなるのだらう?
たしかにその声は、海越えてゆくだらう?
暗い海を、船もゐる夜の海を
そして、その声を聴届けるのは誰だらう?
それは誰か、ゐるにはゐると思ふけれど
しかしその声は、途中で消えはしないだらうか?
たとへ浪は荒くはなくともたとへ風はひどくはなくとも
その声は、途中で消えはしないだらうか?
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だらう?
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だらう?
秋の夜に、湯に浸り
秋の夜に、独りで湯に這入[はい]ることは、
淋しいぢやないか。
秋の夜に、人と湯に這入ることも亦[また]、
淋しいぢやないか。
話の駒が合つたりすれば、
その時は楽しくもあらう
然しそれといふも、何か大事なことを
わきへ置いといてのことのやうには思はれないか?
――秋の夜に湯に這入るには……
独りですべきか、人とすべきか?
所詮[しょせん]は何も、
決ることではあるまいぞ。
さればいつそ、潜(もぐ)つて死にやれ!
それとも汝、熱中事を持て!
※ ※
※
四行詩
おまえはもう静かな部屋に帰るがよい。
煥発[かんぱつ]する都会の夜々の燈火を後(あと)に、
おまへはもう、郊外の道を辿(たど)るがよい。
そして心の呟[つぶや]きを、ゆつくりと聴くがよい。
詩を読み深めたり、詩に曲をつけたものを聴いたり、 記念館の展示を学芸担当職員の解説とともに観たりしながら、 中也の詩の世界を楽しく味わおう、という会です。 詩にちょっと興味はあるけど なんか難しそう… という方に是非オススメです。 初めて参加ご希望の方は、事前にお電話(083-932-6430)にてお申し込みください。
日 時 2024年11月22日(金)13:30〜15:00
場 所 中原中也記念館
参加費 無料
主 催 中原中也記念館 083-932-6430
雨の朝
((麦湯は麦を、よく焦がした方がいいよ。))
((毎日々々、よく降りますですねえ。))
((インキはインキを、使つたらあと、栓(せん)をしとかなけあいけない。))
((ハイ、皆さん大きい声で、一々(いんいち)が一(いち)……))
上草履(うわぞうり)は冷え、
バケツは雀の声を追想し、
雨は沛然(はいぜん)と降つてゐる。
((ハイ、皆さん御一緒に、一二(いんに)が二(に)……))
校庭は煙雨(けぶ)つてゐる。
――どうして学校といふものはこんなに静かなんだらう?
――家(うち)ではお饅(まん)ぢうが蒸(ふ)かせただらうか?
ああ、今頃もう、家ではお饅ぢうが蒸かせただらうか?
子守唄よ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
然しその声は、どうなるのだらう?
たしかにその声は、海越えてゆくだらう?
暗い海を、船もゐる夜の海を
そして、その声を聴届けるのは誰だらう?
それは誰か、ゐるにはゐると思ふけれど
しかしその声は、途中で消えはしないだらうか?
たとへ浪は荒くはなくともたとへ風はひどくはなくとも
その声は、途中で消えはしないだらうか?
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
母親はひと晩ぢう、子守唄をうたふ
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だらう?
淋しい人の世の中に、それを聴くのは誰だらう?
秋の夜に、湯に浸り
秋の夜に、独りで湯に這入[はい]ることは、
淋しいぢやないか。
秋の夜に、人と湯に這入ることも亦[また]、
淋しいぢやないか。
話の駒が合つたりすれば、
その時は楽しくもあらう
然しそれといふも、何か大事なことを
わきへ置いといてのことのやうには思はれないか?
――秋の夜に湯に這入るには……
独りですべきか、人とすべきか?
所詮[しょせん]は何も、
決ることではあるまいぞ。
さればいつそ、潜(もぐ)つて死にやれ!
それとも汝、熱中事を持て!
※ ※
※
四行詩
おまえはもう静かな部屋に帰るがよい。
煥発[かんぱつ]する都会の夜々の燈火を後(あと)に、
おまへはもう、郊外の道を辿(たど)るがよい。
そして心の呟[つぶや]きを、ゆつくりと聴くがよい。