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こどもと本ジョイントネット21・山口


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其中庵さくらツアーB其中庵(1) @ 山口市小郡文化資料館 企画展「山頭火と小郡農学校」 [2022年04月07日(Thu)]
前回の続き

山頭火は、「「鉢の子」から「其中庵」まで」(『三八九』第四集(1932(昭和7).12.5)に、小郡に其中庵を結ぶに至る経緯や自身の心境について書いてます。


 何処へ行く、東の方へ行かう。何処まで行く、其中庵のあるところまで。(略)

徳山、小郡、――この小郡に庵居するやうにならうとは、私も樹明兄も共に予期してゐなかつた。因縁所生、物は在るところのものに成る。

(略)庵居の場所を探ねるにあたつて、私は二つの我儘な望みを持つてゐた、それが山村であること、そして水のよいところか、または温泉地であることであつた。

(略)私の行手には小郡があつた、そこには樹明兄がゐる。そのさきには敬治兄がゐる。その近くのA村は水が清くて山がしづかだつた。(略)
 『もし川棚の方がいけないやうでしたら、ここにも庵居するに似合な家がないでもありませんよ。』
 此夏二度目に樹明兄を訪ねてきた時、兄が洩らした会話の一節だつた。(略)
 或る家の裏座敷に取り敢へず落ちついた。鍋、釜、俎板、庖丁、米、炭、等々と自炊の道具が備へられた。
 二人でその家を見分に出かけた。山手の里を辿つて、その奥の森の傍、夏草が茂りたいだけ茂つた中に、草葺の小家があつた。久しく風雨に任せてあったので、屋根は漏り壁は落ちてゐても、そこには私をひきつける何物かがあつた。
 私はすつかり気に入つた。一日も早く移つて来たい希望を述べた。樹明兄は喜んで万事の交渉に当つてくれた。
 屋根が葺きかへられる。便所が改築される(といふのは、独身者は老衰の場合を予想しておかなければならないから)。畳を敷いて障子を張る。――樹明兄、冬村兄の活動振は眼ざましいといふよりも涙ぐましいものであつた。
 昭和七年九月二十日、私は其中庵の主となつた。
 私が探し求めてゐた其中庵は(略)ふる郷のほとりの山裾にあつた。茶の木をめぐらし、柿の木にかこまれ、木の葉が散りかけ虫があつまり、百舌鳥が啼きかける廃屋にあった。
 廃人、廃屋に入る。
 それは最も自然で、最も相応してゐるではないか。水の流れるような推移ではないか。自然が、御仏が友人を通して指示する生活とはいへなからうか。

(『三八九』復活第四集(1932(昭和7).12.5)「「鉢の子」から「其中庵」まで」より抜粋)


1932(昭和7)年6月 第一句集『鉢の子』を刊行。嬉野、川棚と、安住の地を求め、8月27日、小郡町柳井田の竹浪憲治宅の裏屋に住み、矢足の家の改修を待ちます。
9月20日、小郡に住む国森樹明、伊東敬治ら友人の尽力により小郡矢足に庵を結び「其中庵」と名付け生活を始めました。

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1938(昭和13)年11月28日、湯田前町 徳重正人宅の裏屋 「風来居」に移るまで、この庵に暮らします。なお、湯田に居を移したのは、庵の老朽化に耐えられなかったからだそうです。

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この6年間に、庵からあちこちへ行乞に出かけ、1932(昭和7)年12月『三八九』4号、1933(昭和8)年12月 第二句集『草木塔』、1934(昭和9)年『三八九』5・6号、1935(昭和10)年2月 第三句集『山行水行』、1936(昭和11)年2月 第四句集『雑草風景』、1937(昭和12)年8月 第五句集『柿の葉』を刊行します。

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其中庵の名は、『妙法蓮華経』『観世音菩薩普門品(ふもんぼん)第二十五』にある

其中若有乃至一人称観世音菩薩名者 
  (ごちゅうにゃくうないしいちにんしょうかんぜおんぼさつみょうしゃ)
  (其の中に若し乃至一人あって観世音菩薩の名を称せば)
  【その中に観世音菩薩の名を称える者がいれば、】

其中一人作是証言
  (ごちゅういちにんさくぜ(さぜ)しょうげん(しょうごん))
  (其の中に一人是の唱言を作さん)
  【その中の1人が観世音菩薩の名を称えれば】

という一節から取られています。
意味は、この世の中の一人でも「南無観世音菩薩」と唱えると、皆が救われるというものです。
山頭火はこの「其中」という言葉が好きで、結庵するときは「其中庵」と命名すると平素から友人に語り、上記のように書き止めています。

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其中庵は、小郡町下郷矢足 其中庵公園内に復元されています。年中無休、入館無料。
現在の「其中庵」は、当時親しく訪ねていた 近木黎々火による見取図を元に1992(平成4)年に復元した建物です。

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現地案内板「其中庵」
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 自由俳人として知られる山頭火は、国森樹明、伊東敬治のすすめにより昭和七(一九三二)年九月にこの地に庵を結び「其中庵」と名付けました。
 山頭火は、近郊を行乞(ぎょうこつ)しながら、この其中庵で、『三八九』(さんぱく)第四、五、六集、句集『草木塔』、『山行水行』、『雑草風景』、『柿の葉』などを発行し、最も充実した文学生活を過ごしています。
 昭和一三(一九三八)年一一月、新たに湯田の「風来居」に移るまでの六年間、ここで多くの俳友と交流を深めました。
 現在の其中庵は、平成四年(一九九二)三月に当時の建物を復元したものです。



現地案内板「其中庵のいわれ」
IMG_E3739.JPG IMG_E3739 (2).JPG

 山頭火が好んだ言葉に、法華経の普門品第二十五にある『其中一人作是提言』という一節があります。
 意味は、災難に遭ったとき、又は、苦痛に苛まれた時に、其の中の一人が『南無観世音菩薩』と唱えると観世音菩薩は、直ちに救いの手を差し伸べられて、皆を救われ、悩みから解き放たれるという事で、山頭火は結庵するときには庵名をその一節の中の『其中』にすると決めていました。
 「其中庵」の語源は、この『其中一人』を自分に置きかえて、その一人が住む庵ということで「其中庵」となったのです。 


『其中日記』昭和八年一月廿五日に

雪ふる其中一人として火を燃やす

とあり、『三八九』第六集には、「其中一人として」と題をつけて発表しています。
昭和十三年二月二十七日木村緑平宛書簡・山部木郎宛書簡、二十八日大前誠二宛書簡・巣山鳴雨宛て書簡には

其中一人いつも一人の草萌ゆる
 
とあります。


現地案内板「其中庵見取図」
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 この見取図は山頭火と親交のあった下関市の近木圭之介氏が作成されたものです。この見取図によって、其中庵を復元しました。


山頭火は、庵を構える場所の条件の一つに、上記のように

水のよいところ

とあげています。其中庵のほとりの井戸は、雨乞山からの水脈にあり、深くはありませんが清い水が常に湧いていました。
其中庵の周辺の水は、遠方から茶席用に汲みに来るほど味のよい水だったといいます。

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現地案内板「其中庵の井戸」
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 其中庵のそばにあるこの井戸は、雨乞(あまごい)山からの水脈にあたり、深くはないが清い水が常に湧いていた。山頭火は、庵を構える場所の条件の一つに、水の良いところをあげていたが、其中庵の周辺の水は、遠方から茶席用にくみにくるほど味のよい水だったたという。
 雨の翌日などは濁り、隣からもらい水をしていたというが、日々の山頭火の生活を支える水はこの井戸から得られた。
 やつと戻つてきてうちの水音
  (『其中日記』昭和九年四月二十九日)
 朝月あかるい水で米とぐ
  (『其中日記』昭和十年九月十三日)
 いま汲んできた水にもう柿落葉
  (『其中日記』昭和十年四月十四日)


『其中日記』昭和七年十月廿八日に井戸についてこんな記述があります。

井戸がいよ/\涸れてきた、濁つた水を澄まして使ふ、水を大切にせよ、水のありがたさを忘れるな、水のうまさを知つて、はじめて水の尊さが解る。
(略)
 秋ふかうなる井戸水涸れてしまつた
 こゝろつめたくくみあげた水は濁つて


翌昭和七年十月廿九日には

けふから貰ひ水、F家へいつたら誰もゐない、四季咲の牡丹がかゞやいてゐた、無断でバケツチマヽに一杯、よい水を貰うて戻る(倹約すれば一日バケツ一杯の水で事足るのだから幸である)。
(略) 
 お留守しんかんとあふれる水を貰ふ


昭和七年十一月廿五日には、

雨に汚れ物――茶碗とか鍋とか何とか――を洗はせる、といふよりも洗つてもらふ。
(略)
 冬蠅とゐて水もとぼしいくらし


昭和七年十二月八日には、

 冬は濁り井のなぐさむすべもなくて
これは実感そのまゝだ、濁り水を常用してゐるせいか、先日来腹工合が妙である。


昭和八年一月十二日には、

 よごれものは雨があらつてくれた

とあります。


次回に続く
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