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中也詩・魅力探求〜中原中也生誕120周年記念にむけて @ 中原中也の会 第31回大会 [2026年08月15日(Sat)]
9月5日(土)、セントコア山口で、中原中也の会 第31回大会がハイブリッド開催されますぴかぴか(新しい)

第31回中原中也の会大会.jpg
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るんるん日 時るんるん 2026年9月5日(土)13:30〜17:10 (開場 13:00)
  オンライン配信あり
るんるん会 場るんるん セントコア山口 2階サファイア 
   〒753-0056 山口市湯田温泉3-2-7 

るんるんテーマるんるん トークイベント 中也詩・魅力探求〜中原中也生誕120周年記念にむけて

るんるん内 容るんるん

◆開会 13:30
 総合司会:吉田恵理(都留文科大学准教授、中原中也の会理事)

◆開会の挨拶 13:30-13:40 
 阿毛久芳(都留文科大学名誉教授、中原中也の会会長)

トークイベント 
中也詩・魅力探求〜中原中也生誕120周年記念にむけて
 カニエ・ナハ(詩人、中原中也の会理事)
 権田浩美(佛教大学教授、中原中也の会理事)
 蜂飼耳(詩人、立教大学教授、中原中也の会理事)
 疋田雅昭(東京学芸大学教授、中原中也の会理事)

◆第1部 魅力探求〜激論・順位予想 13:40〜14:30
「中原中也生誕120周年記念書籍にむけて」のアンケート結果発表前に、登壇者がそれぞれ人気ランキング上位詩篇を予想。会場の皆さんも、一緒にランキングを予想しましょう!

◆第2部 魅力探求〜順位発表!  15:00〜15:50
いよいよランキングを発表。それを受けて、4名がさらに中也の詩の魅力を掘り下げるトークを繰り広げます。

◆第3部 魅力探求〜白熱・フリートーク  16:00〜17:00
第1部で行なった会場のアンケート結果を発表。会場の皆さんにも参加してもらいながら、選ばれた詩について語り合います。

◆閉会の挨拶 17:00〜17:10 
 中原豊(中原中也記念館館長、中原中也の会副会長)

◆閉会 17:10

るんるん参加費るんるん 
 対面参加 1,000円 学生500円
 オンライン視聴 無料
るんるん申 込るんるん
 対面参加 会員以外の方は事前申込み不要
 オンライン参加 オンライン配信申込フォーム

るんるん問 合るんるん 中原中也の会事務局(中原中也記念館内)
  mail to nts[a]chuyakan.jp ※[a]を@に変えてください。
  電話 083-932-6430 fax to 083-932-6431



かわいいカニエ・ナハかわいい
詩人、中原中也の会理事
2010年「ユリイカの新人」としてデビュー。詩集『用意された食卓』でエルスール財団新人賞、第21回中原中也賞。詩をメディウムとしたアート作品、手製本による詩集プロジェクト、朗読パフォーマンス等を行っている。近年の主な詩集に『逗子』(2025)、『思想』(2024)、『メノト グリッド』(2024)等。主な展示に「GEIDAI BIBLIOSCAPE 2024」(東京藝術大学附属図書館)、「さいたま国際芸術祭2020」、「MOTサテライト2017 春」(東京都現代美術館)等。

かわいい権田浩美かわいい(ごんだひろみ)
文学研究者、佛教大学教授、中原中也の会事務局長
愛知県生まれ。佛教大学教授。単著に『空の歌 ―中原中也と富永太郎の現代性―』(2011年10月 翰林書房)、『丸山薫と〈錯倒〉する近代 ―流動する〈物象〉―』(2026年3月 翰林書房)。論文に「井戸川射子『する・されるユートピア』論 ―生と言葉への言祝ぎ―」(『京都語文』)などがある。

かわいい蜂飼耳かわいい(はちかいみみ)
詩人、立教大学文学部教授、中原中也の会理事
1974年神奈川県生まれ。詩集に『いまにもうるおっていく陣地』(紫陽社、中原中也賞)、『食うものは食われる夜』(思潮社、芸術選奨新人賞)、『隠す葉』(思潮社)、『顔をあらう水』(思潮社、鮎川信夫賞)、『現代詩文庫 蜂飼耳詩集』など。文集に『孔雀の羽の目がみてる』(白水社)、『おいしそうな草』(岩波書店)など、書評集に『朝毎読』(青土社)がある。

かわいい疋田雅昭かわいい(ひきたまさあき)
文学研究者、東京学芸大学教授、中原中也の会理事
1970年、兵庫県生まれ。モダニズム表象や近現代史、批評理論などを研究対象としている。著書に『接続する中也』(笠間書房)、『ポスト・モダン・リテラチャー』(ひつじ書房)、『文学理論入門』(ひつじ書房)、『小島信夫とは誰か』(水声社)などがある。
福島泰樹氏講演会「舷灯、友情の詩」 @ 中原中也記念館 特別企画展「詩の舷灯――高森文夫と中原中也」関連イベント [2026年08月02日(Sun)]
9月6日(日)、セントコア山口で、中原中也記念館 特別企画展「詩の舷灯――高森文夫と中原中也」関連イベント 福島泰樹氏講演会「舷灯(げんとう)、友情の詩(うた)」が開催されますぴかぴか(新しい)

るんるん日時るんるん 2026年9月6日(日)10:00〜11:00
るんるん会場るんるん セントコア山口 2F 鳳翩
  〒753-0056 山口市湯田温泉3丁目2-7
るんるん講師るんるん 福島泰樹(歌人、中原中也の会理事) 
るんるん入場料るんるん 無料
るんるん主催るんるん 山口市、公益財団法人山口市文化振興財団 中原中也記念館
るんるん後援るんるん 山口市教育委員会


かわいい福島泰樹(ふくしま やすき)かわいい 
歌人、中原中也の会理事。 1943年東京生まれ。歌謡の復権を求め「短歌絶叫コンサート」を創出、「第6回ブルガリア国際作家会議コンクール詩人賞」を受賞。以後メデジン詩祭(コロンビア)、アメリカ政府、ネール大学、ドイツ政府などの招喚を受け世界の各地で絶叫、国内外1900ステージをこなす。歌集『中也断唱』(思潮社)CD『中原中也』(東芝EMI)など刊行物多数。2007年、高森文夫へのインタビューを元にした『誰もかたらなかった中原中也』(PHP新書)刊行。
毎月10日、吉祥寺「曼荼羅」での月例短歌絶叫40周年を記念してDVD『遙かなる友へ』(クエスト)を刊行。

▼2026.9.6(土) 中原中也の会 第30回大会「中原中也と朗読」にて撮影
IMG_E6280.JPG
詩の舷灯(げんとう)――高森文夫と中原中也 @ 中原中也記念館 特別企画展 [2026年08月01日(Sat)]
7月30日(木)〜10月4日(日)、中原中也記念館で、特別企画展「詩の舷灯(げんとう)――高森文夫と中原中也」が開催されますぴかぴか(新しい)

詩の舷灯.jpg 詩の舷灯 裏.jpg
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 中原中也には、弟のように親しく接していた詩人がいました。現在の宮崎県日向市出身で3歳年下の高森文夫です。中也と高森は一緒に旅行に出かけたり、同じ下宿で暮らしたりするほど親密な間柄でした。中也は高森に大きな影響を与え、中也もまた詩集『山羊の歌』発行に際してタイトルなどを高森に相談したり、高森が詩集を発行したときは書評を書いたりしています。

 中也の死後も高森は故郷で文学活動を続けますが、中也と発行する予定だった同人誌「舷灯」を自身の詩集名にするなど、そこには常に中也への思いがありました。

 本展では、船の舷灯のように異なる個性を灯しながら、ともに同じ「詩」の船に乗って進んだ高森と中也の、知られざる友情の軌跡を紹介します。


るんるん日時るんるん 2026年7月30日(木)〜10月4日(日)9:00〜18:00
  ※入館は閉館30分前まで
るんるん休館日るんるん 月曜日(ただし、8月10日(月)、9月21日(月)は開館)
  8月25日(火)、9月24日(木)・29日(火)
るんるん場所るんるん 中原中也記念館
  山口市湯田温泉1-11-21
るんるん料金るんるん 一般330円 学生220円 18歳以下・70歳以上は無料


かわいい関連イベントかわいい

プロムナード・トーク(展示解説)
学芸担当職員が展示の解説を行います。
 るんるん日にち 8月8日(土)・29日(土)、9月20日(日)
 るんるん時間 各回14:00〜
 るんるん事前申込不要  ※要入館料


ワイカムシネマ 野田真吉特集――ゆきははなである 
高森文夫、中原中也と交友の深かった映画監督・野田真吉のドキュメンタリー映画を上映します。
 るんるん日程 9月5日(土)〜13日(日)
 るんるん会場 山口情報芸術センター[YCAM] スタジオC
  山口市中園町7-7
 るんるん料金 一般1,400円 65歳以上1,100円 any会員・学生(中学生以上)・障がい者(介助者1名)1,000円、小学生以下800円(※当日券のみ販売)
 るんるん主催 山口情報芸術センター

関連トークイベント 
野田真吉の映画を上映後、高森文夫とも出会ったことがある亘氏に、野田や高森の思い出をお話いただきます。
 るんるん日時 9月6日(日)15:35~16:05
 るんるん会場 山口情報芸術センター[YCAM] スタジオC
 るんるん登壇 亘純吉氏(野田真吉ご子息、映像民俗学者)
 るんるん内容 14:00から上映の『生者と死者のかよい路 新野の盆おどり』+『冬の夜の神々の宴 遠山の霜月祭』+『異形異類の面掛行列』(全91分)後、亘氏に野田映画の魅力や高森との思い出についてお話しいただきます。


かわいい野田真吉かわいい(のだ・しんきち)
1913〜1993。
愛媛県八幡浜市生まれ。早稲田大学予科在学中、同郷の詩人・高橋新吉の勧めにより参加した雑誌「半仙戯(はんせんぎ)」の会合で、高森文夫と中原中也を知る。高森とは畏友として交友を深め、中也とは詩作のアドバイスを受ける仲となる。昭和12年、P.C.L映画製作所に入社し、映画制作に携わる。戦後は主にフリーの映像作家として、ドキュメンタリーや民俗文化の映像化の分野で多くの作品を残した。詩人としては戦後に2冊の詩集を出版した。著書に中原中也との思い出を記した『中原中也 わが青春の漂泊』などがある。

ねえ 詩って おもしろいっちゅうや!? @ 中原中也記念館 ぼうしの詩人賞関連事業 こどもたちとの詩のワークショップ [2026年07月31日(Fri)]
8月2日(日)、中原中也記念館 ぼうしの詩人賞関連事業 こどもたちとの詩のワークショップ「ねえ 詩って おもしろいっちゅうや!?」が開催されますぴかぴか(新しい)

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詩を書くことをとおして、自分や世界と出会おう!
山口市の小・中学生のための詩のコンクール「ぼうしの詩人賞〜あつまれ!未来の中也たち!〜」が、今年で11回目を迎えます。今年も、こどもたちに詩や、中原中也という詩人に触れてもらうワークショップを開催します。

保護者の方、教育関係者の方の見学もぜひお待ちしています。


るんるん日にちるんるん 2025年8月2日(日)
るんるん会 場るんるん 湯田地域交流センター 学習ホール
るんるんワークショップ講師るんるん
 桑原滝弥(詩人、ぼうしの詩人賞最終選考審査委員)
 佐伯玲子(元中学校校長、ぼうしの詩人賞最終選考審査委員)
 中原中也記念館職員

るんるんプログラムるんるん

詩のおもしろさを見つけよう!
 るんるん午前の部 10:00〜11:30
 るんるん内容 声に出して詩やオノマトペを読んだり、体を動かすなど体感をとおして詩を書いてみましょう。
 るんるん対象 小学1年生〜6年生
 るんるん定員 15名程度(要申込)

自分の言葉を見つめよう!
 るんるん午後の部 13:30〜15:00
 るんるん内容 中也の作品をヒントに、詩のおもしろさを発見!そして詩をつくるポイントをおさえながら、詩を書いてみましょう。
 るんるん対象 中学1年生〜3年生 
 るんるん定員 15名程度(要申込)

るんるん参加費るんるん 無料
るんるん申込先るんるん 中原中也記念館HPの申込フォーム
  ※定員になり次第締切
  ※申込後、内容について後日、詳細メールを送付
るんるん持ち物るんるん 筆記用具、飲み物
るんるん主 催るんるん 山口市、公益財団法人山口市文化振興財団 中原中也記念館
るんるん後 援るんるん 山口市教育委員会
暗い公園 @ 中原中也を読む会 屋外展示「故郷の詩」見学 [2026年06月29日(Mon)]
6月26日(金)、中原中也記念館の「中原中也を読む会」に参加しましたぴかぴか(新しい)

今日の中原中也を読む会は、屋外展示「故郷の詩」を見学して、展示してある詩を読み深める会の予定でしたが、

KIMG9194(1).JPG

あいにくの大雨で、屋外での展示見学はせずに、中原中也記念館 別館で、菅原真由美学芸担当職員のご指導のもと、「暗い公園」「冬の長門峡」について読み解きました。
「帰郷」 は9月の中原中也を読む会「中原中也の詩「帰郷」を読む」で取り上げることになっています。

まず、菅原さんから「帰郷」「暗い公園」「冬の長門峡」の三篇を“故郷の詩”として選んだ理由を教えていただきました。その理由は、詩それぞれによって違っています。

「帰郷」は、中也の“故郷”の詩といえば「帰郷」の詩を誰でも思い浮かべる定番の詩だから。

「暗い公園」は、〈故郷〉という言葉が入っていることから。
 ※「別離」にも、〈故郷〉という言葉が入っています。
 ※「泣くな心」には、〈(くに)〉という言葉が入っています。

「冬の長門峡」は、中也には故郷の地名を織り込んだ詩がほとんどなく、ましてや、故郷の地名がタイトルに入っている詩は他にないことから。
 ※「蝉」には、〈水無河原〉(吉敷川のこと)が詠まれていますが、タイトルではありません。

また、展示に使われた写真の案も見せていただきました。
デザインは林千代さんによるものです。


KIMG9195(1).JPG

  暗い公園

雨を含んだ暗い空の中に
大きいポプラは聳[そそ]り立ち、
その天頂(てつぺん)は殆んど空に消え入つてゐた。

六月の宵、風暖く、
公園の中に人気はなかつた。
私はその日、なほ少年であつた。

ポプラは暗い空に聳り立ち、
その黒々と見える葉は風にハタハタと鳴つてゐた。
仰ぐにつけても、私の胸に、希望は鳴つた。

今宵も私は故郷(ふるさと)の、その樹の下に立つてゐる。
[そ]の後十年、その樹にも私にも、
お話する程の変りはない。

けれど、あゝ、何か、何か……変つたと思つてゐる。

      (一九三六・一一・一七)



「暗い公園」は、雑誌などにも発表されず『在りし日の歌』にも選ばれなかった未発表詩篇であり、「草稿詩篇(1933年〜1936年)」に分類されています。

自筆原稿が残っているということで、コピーを見せていただきました!


  暗い公園

雨を含んだ暗い空の中に
見上げると[大きい]ポプラは聳り立ち、
その頂き[天頂(てつぺん)]は殆んど暗空[空]と混同された[に消え入つてゐた]。

六月の宵の[、]風は生暖く、
公園の中にはゐ誰も[人気は]なかつた、[。]
私はその日まだ[、なほ]少年であつた。

ポプラは暗い空に聳り立ち、
その黒々と見える葉は風にハタハタ[と]鳴つてゐた。
それを見上げるにつけても[仰ぐにつけても]、私の胸には[、]希望が湧いた。[は鳴つた。]

今宵も私は故郷(ふるさと)の、その下[樹]の下に立つてゐる。
そして、何か、‥‥何か私はその後失ったやうに感じている。(と思っている。)
その樹も私も、何処かといって別に変わりもないけど。
そ[其]の後十年、その樹にも私にも、
お話する程の変りはない。

けれど、あゝ、何か……[、]何か[……]変つたと思つてゐる。
それは ((希望の点さ。)) と理性は直ちに云ふのだけど。
心はいつかう承服しない。

      (一九三六・一一・一七)



と随分訂正を加えるというか、削ぎ落としています。

国書データベース https://kokusho.nijl.ac.jp/biblio/300020621/1?ln=ja で見ることができます。

中也の長男 文也は、1936年11月10日に亡くなりました。
「暗い公園」は末尾に

一九三六・一一・一七

と記されていることから、文也が亡くなってからわずか1週間後に作られた詩ということになります。
菅原さんは、「中也が実際は他に詩を書いていたかもしれませんが、それが確認できない以上、文也の死に近い時期に書かれた詩といえます」と言われました。

そして、原稿用紙も、「夏の夜の博覧会はかなしからずや」「冬の長門峡」と同じものが使われているそうなのです。
ただ、その二つは、日記に書かれた「文也の一生」の後に書かれ、「文也の一生」と同じ毛筆書きです。その感情がほとばしるような筆の勢いは、胸を打ちます。
「文也の一生」は、現在記念館で開催中の「テーマ展示「詩集『在りし日の歌』」」 (2026年2月18日(水)〜11月29日(日) ※特別企画展期間(7月30日(木)〜10月4日(日))は除く))に展示されています。

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一方、「暗い公園」は万年筆で、ブルーブラックのインクで書かれています。文字の乱れも特に感じられません。

中也は、12月28日の忌明けの日まで毎日、僧侶を呼んで読経してもらい、自分も一歩も家から出ずに般若心経を読む日々だった、と記念館の展示で見たことがあります。
そんな日々に書かれた詩ですが、子を失った悲しみを表現するという訳ではなく、

私の胸に、希望は鳴つた。

と、以前と変わらず希望を失わないようにしている中也がいます。

其の後十年、その樹にも私にも、
お話する程の変りはない。


と、表面的には何も変わらないように言っていますが、

けれど、あゝ、何か、何か……変つたと思つてゐる。

本質的な変化は見えないところで進んでいくのに気付いています。

何か大切なものを失った時、少し後になってからその悲しみが襲って来るというのは誰しも経験があるのではないでしょうか。

しかし、文也の葬儀の際、いつまでも遺体を抱いて離さず、母フクがやっとのことであきらめさせて、遺体を棺の中に入れたことを知っているので、〈希望〉に違和感を抱く自分がいます。


木の梢を見ている構図は、早大ノートの「いちぢくの葉」(昭和5秋製作)に通じます。
中也には「いちぢくの葉」という詩が二つあり、「いちぢくの、葉が夕空にくろぐろと」で始まる詩の方です。


  いちじくの葉

いちぢくの、葉が夕空にくろぐろと、
風に吹かれて
隙間より、空あらはれる
美しい、前歯一本缺け落ちた
をみなのやうに、姿勢よく
ゆふべの空に、立ちつくす

――わたくしは、がつかりとして
わたしの過去のごちやごちやと
積みかさなつた思ひ出の
ほごすすべなく、いらだつて、
やがては、頭の重みの現在感に
身を托し、心も托し、

なにもかも、いはぬこととし、
このゆふべ、ふきすぐる風に頸(うなじ)さらし、
夕空に、くろぐろはためく
いちぢくの、木末(こずえ) みあげて
なにものか、知らぬものへの
愛情のかぎりをつくす。夏の午前よ、いちじくの葉よ、
葉は、乾いてゐる、ねむげな色をして
風が吹くと揺れてゐる、
よわい枝をもつてゐる……

僕は睡ねむらうか……
電線は空を走る
その電線からのやうに遠く蝉は鳴いてゐる
葉は乾いてゐる、
風が吹いてくると揺れてゐる
葉は葉で揺れ、枝としても揺れてゐる

僕は睡らうか……
空はしづかに音(ママ)く、
陽は雲の中に這入はひつてゐる、
電線は打つづいてゐる
蝉の声は遠くでしてゐる
懐しきものみな去ると。
  (一九三三・一〇・八)



ポプラは暗い空に聳り立ち、
その黒々と見える葉は風にハタハタと鳴つてゐた。
 (「暗い公園」)

夕空に、くろぐろとはためく
いちぢくの、木末 みあげて
 (「いちぢくの葉」)

いちぢくは、まさに、「暗い公園」のポプラでもあります。



また、〈ハタハタ〉という句は、詩「曇天」を思い起します。

KIMG9844(1).JPG

  曇天

 ある朝 僕は 空の 中に、
黒い 旗が はためくを 見た。
 はたはた それは はためいて ゐたが、
音は きこえぬ 高きが ゆゑに。

 手繰り 下ろさうと 僕は したが、
  綱も なければ それも 叶(かな)はず、
 旗は はたはた はためく ばかり、
空の 奥処(をくが)に 舞ひ入る 如く。

 かかる 朝(あした)を 少年の 日も、
屡々(しばしば) 見たりと 僕は 憶(おも)ふ。
 かの時は そを 野原の 上に、
今はた 都会の 甍(いらか)の 上に。

 かの時 この時 時は 隔つれ、
此処(ここ)と 彼処(かしこ)と 所は 異れ、
 はたはた はたはた み空に ひとり、
いまも 渝(かは)らぬ かの 黒旗よ。



しかし、「曇天」で、

渝らぬ

と詠っているのに対し、「暗い公園」では、

けれど、あゝ、何か、何か……変つたと思つてゐる。

というところが違っています。



「冬の長門峡」もそうなのですが、「暗い公園」も、背景など推測せず、詩だけをみれば、最愛の息子の死などみじんも感じられす、普遍性がそこにあり、詩人としての中也のすごさを感じます。

自分の中に悲しみを深く吸収して根源的で普遍的なイメージに昇華させているといえるでしょう。
それに対し「夏の夜の博覧会はかなしからずや」は、〈かなしからずや〉の句がリフレインとなって鳴り続ける“哀しみ”の詩です。
「第19回中原中也賞贈呈式&川上未映子×穂村弘トークセッション「中原中也、その愛と魅力と謎 」」(2014年4月29日)で作家の川上未映子さんと歌人の穂村弘さんが話されていました。すっかり忘れていたのですが、菅原さんのお話で思い出しました。その内容は、『中原中也研究』第19号(2014年8月31日発行)で読むことができます。

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  夏の夜の博覧会はかなしからずや

夏の夜の、博覧会は、哀しからずや
雨ちよと降りて、やがてもあがりぬ
夏の夜の、博覧会は、哀しからずや

女房買物をなす間、かなしからずや
象の前に余と坊やとはゐぬ
二人蹲んでゐぬ、かなしからずや、やがて女房きぬ

三人博覧会を出でぬかなしからずや
不忍ノ池の前に立ちぬ、坊や眺めてありぬ

そは坊やの見し、水の中にて最も大なるものなりきかなしからずや、
髪毛風に吹かれつ
見てありぬ、見てありぬ、
それより手を引きて歩きて
広小路に出でぬ、かなしからずや

広小路にて玩具を買ひぬ、兎の玩具かなしからずや

 2

その日博覧会に入りしばかりの刻は
なほ明るく、昼の明(あかり)ありぬ、

われら三人(みたり)飛行機にのりぬ
例の廻旋する飛行機にのりぬ

飛行機の夕空にめぐれば、
四囲の燈光また夕空にめぐりぬ

夕空は、紺青の色なりき
燈光は、貝釦の色なりき

その時よ、坊や見てありぬ
その時よ、めぐる釦を
その時よ、坊やみてありぬ
その時よ、紺青の空!
  (一九三六・一二・二四)




参加者の方より、詩にある〈ポプラ〉はどこにあるのでしょうか、という質問がありました。
今日の参加者5名のうち、4名が山口市生まれ育ちで、その私たちにとって中也の樹といえは、やはり生家跡に今も〈聳り立〉つカイヅカイブキなのです。
でもイブキは〈風にハタハタと鳴〉ったりしません。
幅の広い葉を持つ〈ポプラ〉や〈いちぢく〉でなくてなりません。

ポプラ〉といえば〈(こ)〉としか詩の中では出てきませんが「月夜とポプラ」という詩もありましたね。


  月夜とポプラ

(こ)の下かげには幽霊がゐる
その幽霊は、生まれたばかりの
まだ翼(はね)弱いかうもりに似て、
[しか]もそれが君の命を
やがては覘(ねら)はうと待構へてゐる。
(木(こ)の下かげには、かうもりがゐる。)
そのかうもりを君が捕つて
殺してしまへばいいやうなものの
それは、影だ、手にはとられぬ
[しか]も時偶[ときたま]見えるに過ぎない。
僕はそれを捕つてやらうと、
長い歳月考へあぐむだ。
けれどもそれは遂に捕れない、
捕れないと分つた今晩それは、
なんともかんともありありと見える――

     (一九三五・一・一一)




あゝ〉という表現が、屋外展示の三篇ともある、という指摘が参加者のNさんよりあり、それに対して、中也の詩論や中原思郎の本から答えてくださいました。
中原中也を読む会「第31回中原中也賞受賞詩集 成清朔『彼方の幽霊』を読む」に参加しました [2026年04月27日(Mon)]
4月24日(金)、中原中也を読む会「第31回中原中也賞受賞詩集 成清朔『彼方の幽霊』を読む」に参加しましたぴかぴか(新しい)

まず、「第31回中原中也賞 成清朔氏『彼方の幽霊』特別展示」を展示担当の中原豊 中原中也記念館館長による解説で見学しましたぴかぴか(新しい)

第31回中原中也賞受賞した詩集『彼方の幽霊』(成清朔/著 そねぽん/装画 私家版 2025.11.17)には、2024〜2025年の『現代詩手帖』「新人作品」投稿欄(思潮社)に掲載された10篇を含む、2024年6月〜2025年11月までに制作された19篇が収録されています。

They
apartment
敬具
灰景
Petrichor
夜行獣
Opaline
遊泳
ターミナルの魚
水中劇
trace
成長痛
epoch
トルソー
creo
夜半の天使、植物園
灯台守
夢寐
彼方の幽霊



展示は、受賞詩集、表紙イラスト、創作メモ、影響を受けた作品(コミック・映画)、作品掲載本、自ら撮影された写真、中原中也賞審査員による選評パネルなどで構成されていました。
展示ケースの中の展示品には詳細なキャプションが付されていましたが、それはなんと成清さんが自ら書かれたものだそうで、これまでの受賞者で初めてとのことでした。
また、成清さんから送られた資料がとても多いので、期間中、展示ケースの一部は展示替えをするそうです。
というので、現在展示されているものを少しご紹介します揺れるハート

表紙イラスト
イラストレーター そねぽんさんによる作品です。
ラフとともに展示してありました。
「彼方の幽霊」「Opaline」の「幽霊」、「They」の「浴槽」、「灰景」の「木製の小さな椅子」、「Opaline」の「画面を伏せたスマートフォン」、「トルソー」の「トルソー」など所収作品に出てくるものが描かれています。

『彼方の幽霊』
(成清朔/著 そねぽん/装画 私家版 2025.11.17)

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青本瑞季文芸個人誌『Light like ghost』Vol.1
青本瑞季さんの個人誌で、青本さんの俳句と詩と評論に加えて、招待作品の一つとして成清さんの詩「unknown」が掲載されています。
詩「They」を読んで、成清さんにオファーされたそうです。

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コミック『言葉の獣(1)』鯨庭(くじらば)/作 リイド社 2022.5.7)
人の発した言葉を“獣”として見ることで、その言葉の「真意」を捉えることができる共感覚の持ち主の女子高生と、言葉が好きで、詩に強い関心を持ちながらも、そのことに向き合いきれていない女子高生2人が、言葉の獣と出会いながら「言葉」を考察して、彼女たちなりの答えを探し当てていく話です。
1巻第4話で谷川俊太郎「生きる」の獣を見ます。

言葉の獣.jpg 言葉の獣1.jpg


映画『地獄でも大丈夫』

地獄でも大丈夫.jpg


展示パネルの詩は、受賞詩集『彼方の幽霊』から自ら選ばれた「They」でした。
投稿をするようになってから、初めて掲載されたのが「They」(『現代詩手帖』2024年8月号 「新人作品」欄に掲載)で、また、詩集『彼方の幽霊』の冒頭におかれています。
タイトルが「He」でもなく「She」でもなく「They」であることの意味。

分けられる、というのは思い上がりだと気づいてくれ



ここはきみの場所でもある

などの言葉が突き刺さりました。
詩「They」は「note」(「詩 「They」」(2025.11.22))に投稿されているので、全文読むことができます。


第4回西脇順三郎賞新人賞奨励賞を受賞した「日蔭の骨」もパネル展示してありました。
《第4回》西脇順三郎賞・西脇順三郎賞新人賞」のサイトで「日蔭の骨」の全文を読むことができます。


創作メモは、解剖図のようで、美術家の人が作品を作る上のラフスケッチのようでもありました。
それは、たとえば、「Opaline」

あかるさのなかでは曖昧な
張り詰めた肌を解いていくと
夜のからだはやわらかく
皮膚の下はあまりに正確で


に通じます。


2026年2月24日付『宇部日報』に、

立命館大に在学中、詩人の最果タヒ(『グッドモーニング』で第13回中原中也賞受賞)展で言葉の自由さに触れたことが詩作のきっかけ。井戸川射子さん(『する、されるユートピア』で第24回受賞)水沢なおさん(『美しいからだよ』第25回受賞)の詩を愛読してきた。

とありましたが、中原館長のお話では、大崎清夏さん(『指差すことができない』(アナグマ社 2013)で第19回受賞)を愛読されているということでした。
いずれにしても、中原中也賞が次の時代の詩人を育てているということは、山口市民としてもとても喜ばしいことです。

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▲『指差すことができない』(大崎清夏/著 青土社‎ 2014.4.11)


『中原中也記念館 館報2026』第31号(中原中也記念館 2026.3.31)や『市報やまぐち』2026年4月号 P18「第31回中原中也賞」でも、成清さんの写真は後ろ姿で、もちろん展示パネルも同じ写真です。
なので、中原中也賞贈呈式で、ご本人から直接受賞の喜びの言葉をお聞きできるのを楽しみにしていましたが、贈呈式は、4月29日例年通り行われますが、成清さんの意向で、代理人の方への贈呈が行われるそうです。
また、記者会見も実施されず、代わりに、メッセージ(中原中也賞への思いや山口の印象を含む)が配布され、成清さんが用意した受賞作品に関連するブースが会場内に設置されるのだそうです。


その後、分館で、詩集『彼方の幽霊』より詩「彼方の幽霊」を鑑賞しましたぴかぴか(新しい)

彼方の幽霊たちへ
わたしたち、迷っていきましょう
じぶんの櫂をつよく握って
とびきりの布を纏い、被り、抱きしめながら
それぞれのパレードをしていきましょう


や、詩の最後の句、

言葉の生まれるまえの埠頭へ立つ

この覚悟、この想い。

この詩集には、すくなくとも自分が在ってうれしいと思える詩を集めてきました。どこかでこの詩集に出会った誰かが、ふとこの本を捲るとき、うれしく思える何かがあったらいいなと思います。

と「note」(「刊行のおしらせ|『彼方の幽霊』」(2025.11.21))に投稿されていましたが、そうなのです。
辛い過去があったかもしれないけれど、この詩集には、希望があります。




第31回中原中也賞贈呈式・記念講演

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るんるん日時るんるん 2026年4月29日(水・祝)
 贈呈式  15:30〜16:10
 記念講演 16:50〜17:50
るんるん場所るんるん 湯田温泉ユウベルホテル松政 2階 芙蓉の間


第31回中原中也賞 成清朔氏『彼方の幽霊』特別展示
るんるん期間るんるん 2026年4月22日(水)〜5月17日(日)
るんるん場所るんるん 中原中也記念館 読書コーナー

受賞者から送られてきた展示品などが展示されています。
また、受賞作、受賞作の一部と選考会の内容が掲載された文芸誌『ユリイカ』2026年4月号(青土社)を手にとって読むことができます。



かわいい成清朔(なりきよ・さく)かわいい
1999年、愛知県の海のちかくに生まれる。
立命館大学 スポーツ健康科学部卒業。京都府在住。
2024年頃詩の投稿をはじめる。
2025年『現代詩手帖』(思潮社)「新人作品」投稿欄の掲載作10篇をふくめた第一詩集『彼方の幽霊』(成清朔/著 そねぽん/装画 私家版 2025.11.17)を自費出版した。
2026年、詩「日蔭の骨」で第4回西脇順三郎賞新人賞奨励賞を受賞。
同年、詩集『彼方の幽霊』(私家版)が第31回中原中也賞を受賞。
市販版『彼方の幽霊』が、2026年4月27日、青土社より刊行。


『彼方の幽霊』
(成清朔/作 佐野裕哉/装丁 青土社 2026.4.27) 
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企画展Tコラボレーション展示「萩の陶工と中原中也 土の詩情」 @ 中原中也記念館 [2026年04月13日(Mon)]
4月22日(水)〜7月26日(日) 、中原中也記念館で、企画展Tコラボレーション展示「萩の陶工と中原中也 土の詩情」が開催されますぴかぴか(新しい)

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萩焼と中也の詩による異色のコラボレーション
400年以上の伝統を誇る萩焼と中原中也の詩のコラボレーション展示を開催します。
2025年秋に新宿の柿傳ギャラリーにて開催された萩焼の展覧会「萩傳流 X ―詩心―」では、中也の詩をテーマに6名の萩焼作家が作品を制作・展示しました。
本展では新たに作家6名が参加し、計12名により展示を行います。作家それぞれが中也の詩1篇をテーマにこの企画展のために制作した新作の萩焼を、中也の詩とともに展示します。


るんるん期間るんるん 2026年4月22日(水)〜7月26日(日)
  休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌日)、毎月最終火曜日
るんるん時間るんるん 
 11月〜4月 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
 5月〜10月 9:00〜18:00(入館は17:30まで)
るんるん会場るんるん 中原中也記念館
  〒753-0056 山口市湯田温泉1-11-21
  電話 083-932-6430

るんるん参加作家るんるん
岡田泰《北の海》
坂高麗左衛門《村の時計》
坂倉新兵衛《一つのメルヘン》
坂倉善右衛門《湖上》
渋谷英一《サーカス》
新庄紹弘《蜻蛉に寄す》
田原崇雄《ゆきてかへらぬ》
玉村登陽《秋の夜空》
止原理美《ひからびた心》
伴裕子《はるかぜ》
伴善雄《夏は青い空に……》
大和佳太《骨》

  (50音順)

るんるん入館料るんるん 一般330円 学生220円 70歳以上・18歳以下無料
るんるんURLるんるん https://chuyakan.jp/news/hagiyaki2026/
るんるん主催るんるん 山口市、公益財団法人山口市文化振興財団 中原中也記念館
るんるん後援るんるん  山口市教育委員会



かわいい関連イベント

プロムナード・トーク(展示解説)
 作家が自作の前で解説します。

るんるん日時るんるん 5月17日(日)14:00〜
るんるん解説るんるん 田原崇雄、渋谷英一、坂倉新兵衛、伴義雄

るんるん日時るんるん 6月20日(土)14:00〜
るんるん解説るんるん 新庄紹弘、止原理美、大和佳太、坂倉善右衛門

るんるん日時るんるん 7月18日(土)14:00〜
るんるん解説るんるん 岡田泰、玉村信一、伴裕子、坂高麗左衛門



呈茶会 
出品作家のお茶碗で抹茶をお楽しみください

るんるん日時るんるん 2026年5月17日(日)10:00〜15:00 ※雨天中止
るんるん会場るんるん 中原中也記念館 前庭 
るんるん定員るんるん 先着100名
るんるんお茶券るんるん 500円 
 ※お茶菓子付
 ※当日記念館にて販売(現金のみ)



中原中也を読む会
「企画展Tコラボレーション展示「萩の陶工と中原中也 土の詩情」見学」
展示担当学芸職員の解説で展示を鑑賞し、その後、展示詩篇を味わいます。

るんるん日時るんるん 2026年5月23日(金)13:30〜15:00
るんるん場所るんるん 中原中也記念館
るんるん参加費るんるん 無料
るんるん申込るんるん 不要、当日受付に集合




  はるかぜ
    中原中也

あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
   空は曇つてはなぐもり、
   風のすこしく荒い日に。

あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
   部屋にゐるのは憂鬱で、
   出掛けるあてもみつからぬ。

あゝ、家が建つ家が建つ。
僕の家ではないけれど。
   鉋[かんな]の音は春風に、
   散つて名残はとめませぬ。

   風吹く今日の春の日に、
   あゝ、家が建つ家が建つ。



  ひからびた心

ひからびたおれの心は
そこに小鳥がきて啼き
其処に小鳥が巣を作り
卵を生むに適してゐた

ひからびたおれの心は
小さなものの心の動きと
握ればつぶれてしまひさうなものの動きを
掌(てのひら)に感じてゐる必要があつた

ひからびたおれの心は
贅沢にもそのやうなものを要求し
贅沢にもそのやうなものを所持したために
小さきものにはまことすまないと思ふのであつた

ひからびたおれの心は
それゆゑに何はさて謙譲であり
小さきものをいとほしみいとほしみ
むしろその暴戻[ぼうれい]を快いこととするのであつた

そして私はえたいの知れない悲しみの日を味つたのだが
小さきものはやがて大きくなり
自分の幼時を忘れてしまひ
大きなものは次第に老いて

やがて死にゆくものであるから
季節は移りかはりゆくから
ひからびたおれの心は
ひからびた上にもひからびていつて

ひからびてひからびてひからびてひからびて
――いつそ干割(ひわ)れてしまへたら
無の中へ飛び行つて
そこで案外安楽に暮せらるのかも知れぬと思つた
2026年度「中原中也を読む会」スケジュール [2026年04月09日(Thu)]
今年度も「中原中也を読む会」が、毎月1回 第4金曜日 13:30〜15:00 中原中也記念館で開催されますぴかぴか(新しい)

詩を読み深めたり、詩に曲をつけたものを聴いたり、 記念館の展示を学芸担当職員の解説とともに観たりしながら、 中也の詩の世界を楽しく味わおう、という会です。 詩にちょっと興味はあるけど なんか難しそう… という方に是非オススメです。

るんるん開催日るんるん 毎月1回第4金曜日
るんるん時 間るんるん 13:30〜15:00(予定)
るんるん場 所るんるん 中原中也記念館 他
るんるん参加費るんるん 無料
るんるん申 込るんるん 事前予約不要(当日受付にて申込)
るんるん主 催るんるん 中原中也記念館
    電話 083-932-6430


かわいい2024年度「中原中也を読む会」スケジュールかわいい

第31回中原中也賞受賞詩集 成清朔(なりきよさく)『彼方の幽霊』を読む
 るんるん日時 2026年4月24日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館

『彼方の幽霊』
(成清朔/著 そねぽん/装画 私家版 2025.11.17)
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企画展Tコラボレーション展示「萩の陶工と中原中也 土の詩情」見学
 るんるん日時 2026年5月23日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館

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チラシPDF表示



屋外展示「故郷の詩」見学
 るんるん日時 2026年6月26日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館

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  暗い公園

雨を含んだ暗い空の中に
大きいポプラは聳[そそ]り立ち、
その天頂(てつぺん)は殆んど空に消え入つてゐた。

六月の宵、風暖く、
公園の中に人気はなかつた。
私はその日、なほ少年であつた。

ポプラは暗い空に聳り立ち、
その黒々と見える葉は風にハタハタと鳴つてゐた。
仰ぐにつけても、私の胸に、希望は鳴つた。

今宵も私は故郷(ふるさと)の、その樹の下に立つてゐる。
其[そ]の後十年、その樹にも私にも、
お話する程の変りはない。

けれど、あゝ、何か、何か……変つたと思つてゐる。

      (一九三六・一一・一七)


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  冬の長門峡

長門峡に、水は流れてありにけり。
寒い寒い日なりき。

われは料亭にありぬ。
酒酌(く)みてありぬ。

われのほか別に、
客とてもなかりけり。

水は、恰(あたか)も魂あるものの如く、
流れ流れてありにけり。

やがても密柑(みかん)の如き夕陽、
欄干(らんかん)にこぼれたり。

ああ! ――そのやうな時もありき、
寒い寒い 日なりき。




谷川俊太郎の詩を読む
 るんるん日時 2026年7月25日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館



特別企画展「詩の舷灯(げんとう)−−高森文夫と中原中也」見学
 るんるん日時 2026年8月22日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館



中原中也の評論「芸術論覚え書」を読む
 るんるん日時 2026年9月26日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館



中原中也の詩「帰郷」を読む
 るんるん日時 2026年10月24日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館

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▲中原中也記念館 屋外展示「故郷の詩」より「帰郷」

 帰郷

柱も庭も乾いてゐる
今日は好い天気だ
    縁の下では蜘蛛(くも)の巣が
    心細さうに揺れてゐる

山では枯木も息を吐く
あゝ今日は好い天気だ
    路傍(ばた)の草影が
    あどけない愁(かなし)みをする

これが私の故里(ふるさと)だ
さやかに風も吹いてゐる
    心置なく泣かれよと
    年増婦(としま)の低い声もする

あゝ おまへはなにをして来たのだと……
吹き来る風が私に云ふ




企画展U「やまぐちの詩人・和田健の軌跡」見学
 るんるん日時 2026年11月28日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館



福田名誉館長と中也の詩を読む
 るんるん日時 2026年12月25日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 湯田温泉こんこんパーク
 るんるん共催 湯田温泉こんこんパーク



蓄音器で中也と同世代の音楽を聴く
 るんるん日時 2027年1月23日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 湯田温泉こんこんパーク
 るんるん共催 湯田温泉こんこんパーク



第24回テーマ展示「中也の住んだ町」(仮)見学
 るんるん日時 2027年2月26日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館



宮沢賢治の詩を読む
 るんるん日時 2027年3月26日(金)13:30〜15:00
 るんるん場所 中原中也記念館
第31回中原中也賞贈呈式・記念講演「朝吹亮二「1924年の詩人たち―中原中也と富永太郎を中心に」」 [2026年04月07日(Tue)]
4月29日(水・祝)、湯田温泉ユウベルホテル松政で、中原中也賞を受賞した『彼方の幽霊』を執筆した成清朔さんへの贈呈式および、朝吹亮二さんによる記念講演「1924年の詩人たち―中原中也と富永太郎を中心に」が行われますぴかぴか(新しい)

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『彼方の幽霊』
(成清朔/著 そねぽん/装画 私家版 2025.11.17)
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中原中也賞は、日本の近代詩史に偉大な貢献をなした山口市出身の詩人中原中也の業績を永く顕彰することを目的に、新鮮な感覚を備えた優れた現代詩の詩集に対しこの賞を贈り、詩を通じて豊かな芸術文化意識の高揚をはかります。

第31回「中原中也賞」では、令和6年12月1日から令和7年11月30日までに刊行された現代詩の詩集が公募と推薦あわせて267点が寄せられました。

令和8年2月21日、最終選考作品として選ばれた7作品 柴田聡子『ダイブ・イン・シアター』(青土社)、素潜り旬『自画像と緑の光線、アワー・ミュージック』(港の人)、成清 朔『彼方の幽霊』(私家版)、久原みな子『生成』(思潮社)、福島直哉『星の身体』(書肆子午線)、丸山 零『二つの引き出し』(左右社)、渡辺八畳『唇に磁石』(七月堂)を対象に、山口市の湯田温泉ユウベルホテル松政で選考会が開催されました。

選考委員 カニエ・ナハ(詩人)、川上未映子(作家・詩人)、野崎有以(詩人)、蜂飼耳(詩人)、穂村弘(歌人)による選考の結果、第31回中原中也賞は、成清朔さんの『彼方の幽霊』(私家版)に決定しました。

受賞者には、正賞として中也と親交のあった彫刻家高田博厚(1900〜1987)制作の中原中也ブロンズ像と、副賞として100万円が贈呈されます。

文芸誌『ユリイカ』(青土社)4月号に、受賞作の一部と選考会の内容が掲載されます。


るんるん日 時るんるん 2026年4月29日(水・祝)15:30〜17:50
るんるん場 所るんるん 湯田温泉ユウベルホテル松政 2階 (芙蓉の間)

るんるん内 容るんるん

かわいい第31回中原中也賞贈呈式
 るんるん時 間 15:30〜16:10
 るんるん受賞者 成清朔(なりきよ・さく)
 るんるん受賞詩集 『彼方の幽霊』

かわいい記念講演
 るんるん時 間 16:50〜17:50
 るんるん講 師 朝吹亮二(詩人・フランス文学者)
 るんるんテーマ 「1924年の詩人たち―中原中也と富永太郎を中心に」

るんるん対 象るんるん どなたでも
るんるん参加費るんるん 無料
るんるん申 込るんるん 事前申込不要
るんるん問合先るんるん 山口市交流創造部文化交流課 電話 083-934-2717
るんるん主 催るんるん 山口市
るんるん共催・後援るんるん 叶ツ土社、(公財)角川文化振興財団


かわいい成清 朔かわいい
1999年、生まれは海のちかく。2024年ごろ詩の投稿をはじめ、2025年11月、第一詩集『彼方の幽霊』を私家版で刊行。2026年に詩「日蔭の骨」が西脇順三郎賞新人賞奨励賞を受賞。同年、詩集『彼方の幽霊』が第31回中原中也賞を受賞。
中原中也生誕祭 空の下の朗読会2026 @ 中原中也記念館 [2026年04月06日(Mon)]
4月29日(水・祝)は、中原中也119回目の誕生日です。
中原中也記念館前庭で、中原中也生誕祭「空の下の朗読会」が開催されますぴかぴか(新しい)

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中原中也生誕祭「空の下の朗読会」

今年は中原中也の119回目の生誕日となります。
1907年山口市湯田温泉に生まれ、30年の短い生涯を詩にささげた中原中也。
中也の生誕日である4月29日に、中也の生まれた場所で、詩の朗読を好んだ中也にならい、自由参加の朗読会をおこないます。
観覧のみも大歓迎!
あわせて、ゲストによるミニライブもお楽しみください。


るんるん日時るんるん 2026年4月29日(水・祝)12:30〜
るんるん会場るんるん 中原中也記念館前庭
   山口市湯田温泉1丁目11-21  
  ※雨天時:湯田温泉ユウベルホテル松政

るんるんプログラムるんるん

[第1部]
朗読会 

中原中也の生誕地で朗読をしてみませんか? 中也の詩、自作の詩など問いません。
ご参加&ご観覧お待ちしています。朗読を希望される方は、事前に予約を受付けます。


 るんるん時間 12:30〜13:40
 るんるん朗読者募集
  ※1組3分以内
   先着20組
   中原中也記念館WEBサイトまたは電話(083-932-6430)にて受付
  ※20組満席となり、受付終了

  
[第2部]
ミニライブ 君島大空

シンガー・ソングライター/ギタリストの君島大空によるミニライブ!
その唯一無二の世界観と歌声に浸る時間。ぜひご来場ください。


 るんるん時間 14:00〜15:00
 るんるん出演 君島大空


るんるん入場料るんるん 無料
 ※4月29日は中原中也記念館(9:00〜18:00)入館料無料

るんるん問合先るんるん 中原中也記念館 電話 083-932-6430
るんるん主催るんるん 山口市、公益財団法人山口市文化財団法人 中原中也記念館
るんるん後援るんるん 山口市教育委員会


かわいい君島 大空 (きみしま おおぞら)かわいい
音楽家/ギタリスト。
2019年以降、2枚のフルアルバムと4枚のEPをリリース。今までの作品はどれも自宅録音を基盤に、ミックスまで自身で行なっている。独奏、合奏形態、トリオでの演奏活動を軸に活動中。
2023年9月にリリースされた2ndアルバム『no public sounds』はAPPLE VINEGAR – Music Award -にて大賞を受賞。2024年6月 tiny desk concerts JAPANに合奏形態で出演。
HP:https://ohzorafeedback.wixsite.com/hainosokomade



X(twitter)企画 #中也web朗読会2026

記念館前庭で開催している「空の下の朗読会」と同時に「web上の朗読会」を開催!中原中也の詩や自作の詩を朗読して、X(twitter)へ投稿してください。皆さんのご参加をお待ちしています。

るんるん日時るんるん 2026年4月29日(水・祝)9:00~17:00
るんるん参加の仕方るんるん
 ・中原中也もしくは自作の詩の朗読を動画に撮って、ポスト
 ・ハッシュタグ「#中也web朗読会2026」をつける
るんるん注意事項るんるん
 ・朗読する詩の著作権を守り、公序良俗に反する映像を用いないことに注意
温泉街の朗読会 @ 中原中也記念館 前庭 [2026年04月04日(Sat)]
今日4月4日(土)、中原中也記念館 前庭で、湯田温泉白狐まつり「温泉街の朗読会」が開催されますぴかぴか(新しい)

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湯田温泉白狐まつりの催し物の一つとして、中原中也記念館前庭で「温泉街の朗読会」が開催されます。
誰でも参加できる自由参加の朗読会です。
山口県内の各テレビ局、ラジオ局のアナウンサーなども参加し、中原中也の詩などの朗読を披露します。


※雨の予報のため「温泉街の朗読会」は13時から15時までに短縮されました。
13時からアナウンサーによる朗読、その後は自由参加の朗読会になる予定です。


いい気分(温泉)日 時いい気分(温泉) 2026年4月4日(土)11:00〜15:00 → 13:00〜15:00
いい気分(温泉)場 所いい気分(温泉) 中原中也記念館 前庭
いい気分(温泉)内 容いい気分(温泉) 自由参加の朗読会 ※飛び入り大歓迎!
  13:00〜 地元テレビ・ラジオ局のアナウンサーによる朗読
いい気分(温泉)問合先いい気分(温泉) 白狐まつり実行委員会事務局 電話 083-925-6843


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テーマ展示「詩集『在りし日の歌』」見学 @ 中原中也を読む会 [2026年03月20日(Fri)]
3月27日(金)、中原中也記念館で、中原中也を読む会「テーマ展示「詩集『在りし日の歌』」見学」が開催されますぴかぴか(新しい)

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るんるん日 時るんるん 2026年3月27日(金)13:30〜15:00
るんるん場 所るんるん 中原中也記念館
るんるん内 容るんるん テーマ展示「詩集『在りし日の歌』」を展示を担当した学芸担当職員の解説とともに鑑賞、および、詩を一編読み深める
るんるん参加費るんるん 無料(入館料不要)
るんるん申 込るんるん 不要
 ※初めて参加希望の方のみ、事前に電話(083-932-6430)にて申込



テーマ展示「詩集『在りし日の歌』」

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1937年9月、詩集『在りし日の歌』のための清書原稿をまとめ終えた中原中也は、友人の小林秀雄に原稿を托し、郷里の山口に引き揚げようとしていました。
しかしその翌月、中也は病に倒れ、30歳の若さでこの世を去ります。詩集が刊行されたのは半年後の1938年4月、小林ら友人たちの尽力によるものでした。
第二詩集にして遺作となったこの詩集には、「骨」「一つのメルヘン」「月夜の浜辺」といった中也の代表作など、全58篇が収められています。
本展では、『在りし日の歌』編集の背景をたどるとともに、収録詩の鑑賞などを通じて、詩集『在りし日の歌』の魅力を紹介します。


るんるん期間るんるん 2026年2月18日(水)〜11月29日(日) 
   ※特別企画展期間(7月30日(木)〜10月4日(日))は除く
るんるん時間るんるん
   4月・11月 9:00〜17:00(入館は16:30まで)
   5月〜7月・10月 9:00〜18:00(入館は17:30まで)
るんるん会場るんるん 中原中也記念館
   〒753-0056 山口県山口市湯田温泉1丁目11ー21
るんるんURLるんるん https://chuyakan.jp/news/theme2026/
るんるん入館料るんるん 一般330円(275円) 大学・高等専門学校の学生220円(165円) 
  70歳以上[要証明書]、18歳以下は無料
  ( )内は20人以上団体料金
中原中也を読む会「蓄音機で中原中也と同時代の音楽を聴く」に参加しました(4) [2026年03月17日(Tue)]
前回の続き

中原中也記念館には、中原中也が所蔵していたレコードが17枚が残されています。
『新編 中原中也全集 別巻 (下) 資料・研究篇』(角川書店 2004.11.30)P115〜118「中原中也所蔵レコード一覧」には、そのリストが載っています。また、中原記念館「収蔵資料データベース」でインターネット公開されています。

その17枚の内の14枚を西洋音楽が占めています。
2005(平成17)年7月27日から9月25日(日)に中原中也記念館で開催された「特別企画展「中原中也と西洋音楽」」では、その14枚が展示されていました。『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P16「中原中也所蔵レコード」には、そのリストが掲載されています。

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中原中也が所蔵していたレコードを少し挙げてみましょう。

Aバッハ-グノー
「アヴエ・マリア」

Bマスネ
「挽歌(エレジー)」

チェロ独奏かわいいM・ヴィクトル・パスカル(M. Victor Pascal)コンセール・パドルーのソリスト(Soliste des Concerts Pasdeloup)
ハープ/ピアノ伴奏かわいいドゥーニーズ・エルブレシュット(Mlle Denies Herbrecht)
番号かわいいVICTOR K6003

大岡昇平「中原中也の酒」(『酒』1961年3月号 9巻3号(酒之友社 1961(昭和36))(『中原中也』P346〜348(大岡昇平/著 角川書店 昭和49.1.15))によると、マスネ「エレジー」を愛唱していたようです。


サラサーテ
「ツイゴイネルヴアイゼン〜ヂプシーの唄」Zigeunerweisen Gipsy Airs

ヴァイオリンかわいいミッシャ・エルマン(Mischa Elman)
ピアノかわいいキャロル・ホリスター(Carroll Holister) 
番号かわいいVICTOR DB1536
発売かわいい1932 (昭和7)年 


Aナッチェス(ナチェス、ナシェ)Nachèz
「ジプシー・ダンス」(Gypsy dances, op. 14)

Bワーグナー
「アルバムの綴り」

ウィルヘルミ編(Albumblatt in E-Flat Major (arr. A. Wilhelmy))

ヴァイオリンかわいいフーゴ・コルベルク(Hugo Kolberg)
ピアノ伴奏かわいいパンチョ・ウラディゲロフ (Pantscho Wladigeroff)    
番号かわいいPOLYDOR (本盤) 30114  
備考かわいい10インチ


ベートーヴェン
「ピアノソナタ第23番 ヘ短調 作品57」(「熱情」)(Piano Sonata No. 23 in F minor, Op. 57 "Appassionata" )
第1楽章

ピアノかわいいヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)
番号かわいいPOLYDOL 40186


ベートーヴェン
「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調」(「月光」)(Sonata in C Sharp-minor(Moon Light))
第2楽章・第3楽章

ピアノかわいいヴィルヘルム・ケンプ(Wilhelm Kempff)
番号かわいいPOLYDOL 66173

「お道化うた」で、ベートーヴェン「月光」について、「ベートーヴェンは、盲目の少女のために『月光ソナタ』を作曲した」という伝説を揶揄して、道化してみせます。


お道化うた
  中原中也

月の光のそのことを、
盲目少女(めくらむすめ)に教へたは、
ベートーヴェンか、シューバート?
俺の記憶の錯覚が、
今夜とちれてゐるけれど、
ベトちやんだとは思ふけど、
シュバちやんではなかつたらうか?

霧の降つたる秋の夜に、
庭・石段に腰掛けて、
月の光を浴びながら、
二人、黙つてゐたけれど、
やがてピアノの部屋に入り、
泣かんばかりに弾き出した、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?

かすむ街の灯とほに見て、
ウヰンの市(まち)の郊外に、
星も降るよなその夜さ一と夜、
虫、草叢(くさむら)にすだく頃、
教師の息子の十三番目、
頸の短いあの男、
盲目少女(めくらむすめ)の手をとるやうに、
ピアノの上に勢ひ込んだ、
汗の出さうなその額、
安物くさいその眼鏡、
丸い背中もいぢらしく
吐き出すやうに弾いたのは、
あれは、シュバちやんではなかつたらうか?

シュバちやんかベトちやんか、
そんなこと、いざ知らね、
今宵星降る東京の夜(よる)、
ビールのコップを傾けて、
月の光を見てあれば、

ベトちやんもシュバちやんも、はやとほに死に、
はやとほに死んだことさへ、
誰知らうことわりもない……



バッハ
「トッカータとフーガ ニ短調」

オルガンかわいいワルター・フィッシャー
番号かわいいPOLYDOL 40324


吉田秀和「中原中也のこと」(『文芸』1962年5月号 1巻3号(河出書房新社 1962.5)掲載)(『ソロモンの木』(吉田秀和/著 河出書房新社 1970(昭和45).11月))(『吉田秀和全集』第10巻エセー(白水社 1975.10))(『文芸読本 中原中也』(河出書房新社 1976(昭和51).11))(『文学のとき エッセイの小径』(白水Uブックス)(吉田秀和/著 白水社 1994.9))(『ソロモンの歌・一本の木』(講談社文芸文庫)(吉田秀和/著 講談社 2006.2))によると

歌といえば、中原は、よくヴェルレーヌやランボーの詩をふしをつけて朗読してくれたし、そのほかにもバッハのあのすばらしいハ短調の「パッサカリア」が大好きで、よくあのバス主題を歌っていた。

また、内海誓一カ「中原中也と音楽」(『群像』1989年2月号 44巻2号(講談社 1989.2)P158〜170)によると

(略)彼の次に好きな盤はバッハのオルガン曲のハ短調パッサカリアとフーガであった。(略)指揮者ストコフスキーが華麗な管弦楽法を用いて編曲したものであったが、(略)

に言及されているバッハ「パッサカリアとフーガ」にも触れます。こちらは、中也が聴いていたことに間違いないのですが、中也旧蔵レコードとしては残っていません。

バッハ
「パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582」(Passacaglia and Fugue in C Minor, BWV 582)
L. ストコフスキーによる管弦楽編

編曲かわいいレオポルド・ストコフスキー(Leopold Stokowski) 
指揮かわいいレオポルド・ストコフスキー 
演奏かわいいフィラデルフィア管弦楽団(Philadelphia Orchestra)
録音かわいい1929年


また、当然と言えばそうですが、その他にも愛聴したレコードがあったことを、内海誓一郎、大岡昇平、吉田秀和らの友人たちが伝えています。 
その中から、

1マスネ「エレジー」
2ベートーヴェン『ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調』(「月光」)
3バッハ『パッサカリアとフーガ ハ短調 BWV 582』
4チャイコフスキー ピアノ組曲『四季』より6月「舟歌」

の4曲を、中也所蔵および当時発売されたSPレコードの音源によって試聴機で実際に聴くことができるようになっていましたひらめき
 
舟歌については
https://blog.canpan.info/jointnet21/archive/760
で触れています。

そこには、はっきりとした旋律をもつ楽曲に愛着を示し、自らもそれを口ずさむという、中也独特の西洋音楽への接し方が浮かび上がっています。
(『中原中也記念館 特別企画展 中原中也と西洋音楽』(中原中也記念館 2005.7.27)P9「第U部「中原中也の愛聴盤」より抜粋)


平成29年度特別企画展「詩が生まれた場所へ ―中也の見た風景」でも、レコード VICTOR K6003 バッハ、グノー「アヴェ・マリア」/マスネ「エレジー」とレコード POLYDOR Order No.66173 ベートーヴェン「ピアノソナタ第14番 嬰ハ短調 作品27-2(「月光」)」でも展示されていました。
中原中也を読む会「蓄音機で中原中也と同時代の音楽を聴く」に参加しました(3) [2026年03月16日(Mon)]
前回の続き

以上10曲(正確には9曲)聴きましたが、どうしても挙げておきたい曲があります。

2025(令和7)年7月31日(木)から10月5日(日)に中原中也記念館で開催された「特別企画展「中原中也の〈声〉――朗読とラジオ放送」」で展示されていた日記の演奏です。

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十月卅日。
(略)
 モツアルト、ヷイオリン・コンチェルト第五番イ長調をラヂオで聴いて感銘す。
(略)

中原中也が1934(昭和9)年5月から1936(昭和11)年12月まで使用した「日記(雑記帖)」の10月30日の記述です。

中原館長のお話を伺っていて、中也の聴いたモーツァルトのヴァイオリン・コンチェルト第5番イ長調を一体誰がヴァイオリン独奏していたのかとても気になりました。
答えは、庄司達也「音楽から出会う中原中也」(『中原中也記念館 館報 2019』第24号(中原中也記念館 2019.3.31))や『新編 中原中也全集 第五巻 日記・書簡 解題篇』(角川書店 平成15.4.10)にありました。

JOAK(現NHK東京)第二放送で午後7時半から8時まで放送された番組「名曲鑑賞(レコード)」でのヤシャ・ハイフェッツのヴァイオリン独奏でした。


モーツァルト
ヴァイオリン・コンチェルト第5番イ長調 K.219「トルコ風」Violin Concerto No.5 in A major, K.219, "Turkish"

ヴァイオリン独奏かわいいヤシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz)
演奏かわいいロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(The London Philharmonic Orchestra)
指揮かわいいジョン・バルビローリ(Sir John Barbirolli)
録音かわいい1934年2月19日,21日&23日


同じく、「日記(雑記帖)」の9月23日には

九月二十三日。 ラジオを修繕。(略) ベトーベン第三シンフォニー「ハ」短調をきく。面白かった。(略)

とあります。こちらは、「ピアノ協奏曲ハ短調第三番」の誤記で、JOAK第一放送で午後8時5分から放送された番組「ピアノと管弦楽」でのレオニード・クロイツアーによるピアノ独奏でした。

ベートーヴェン
ピアノ協奏曲ハ短調第3番(Piano Concerto No.3 in C minor op. 37)

ピアノかわいいレオニード・クロイツァー(Leonid Kreutzer)
演奏かわいい日本放送管弦楽団
指揮かわいいニコライ・シフェルブラット(Nicolai Schifferblat)



【参考】
『中原中也 その頃の生活/日記(一九三六年)他』(中原中也/著 日本図書センター 2012.4.23)P232 P236
『新編 中原中也全集 第五巻 日記・書簡』(角川書店 2003.4.10)P216 P218
国書データベース
 「日記(雑記帖)」9月23日
 「日記(雑記帖)」10月30日
『any』vol.132 2025年夏号(7〜9月)(公益財団法人山口市文化振興財団 2025.7.1)P1〜7「特集 詩の中に息づく中也の〈声〉特別企画展「中原中也の〈声〉―朗読とラジオ放送」」

『新編 中原中也全集 第五巻 日記・書簡 解題篇』(角川書店 2003.4.10)P178 P181
『中原中也記念館 館報 2019』第24号(中原中也記念館 2019.3.31)P6〜8「音楽から出会う中原中也」(庄司達也)



【次回に続く】
中原中也を読む会「蓄音機で中原中也と同時代の音楽を聴く」に参加しました(2) [2026年03月10日(Tue)]
前回の続き

45メンデルスゾーン
「ヴァイオリン協奏曲」 ホ短調(Concerto in E Minor) 作品64

メンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲 ホ短調」をハイフェッツクライスラーのヴァイオリン演奏で聴き較べました。
テンポも違い、みんなの好みも分かれました光るハート


ヴァイオリンかわいいヤッシャ・ハイフェッツ(Jascha Heifetz) リトアニア
演奏かわいいロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団(The Royal Philharmonic Orchestra)
指揮かわいいトーマス・ビーチャム(Sir Thomas Beecham, 2nd Baronet)
録音かわいい1949年

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ヴァイオリンかわいいフリッツ・ クライスラー(Fritz Kreisler)
演奏かわいいロンドン・フィルハーモニー管弦楽団(The London Philharmonic Orchestra)
指揮かわいいサー・ランドン・ロナルド(Sir Landon Ronald)
録音かわいい1935年4月8日

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69メンデルスゾーン
劇付随音楽『夏の夜の夢』(A Midsummer Night's Dream)より
「ノクターン(夜想曲)」
「結婚行進曲」Wedding March

シェイクスピア戯曲『夏の夜の夢』のための付随音楽(Incidential Music to Shakespeare’s Play)です。

指揮かわいいアルトゥーロ・トスカニーニ(Arturo Toscanini)
演奏かわいいNBC交響楽団(The NBC Symphony Orchestra)
録音かわいい1947年11月4日 カーネギー・ホール (ニューヨーク) [RCA]

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7ヘンデル 
オラトリオ 『エジプトのイスラエル人』 (Israel in Egypt)より
「ああ感謝せん」Dank sei Dir Herr

アリオーソ(arioso)です。
アリア(aria)とレチタティーヴォ(recitativo)の中間です。レチタティーヴォよりも旋律的な音楽、あるいはアリアよりもより小規模な音楽を指します。


ソプラノかわいいフルダ・ラシャンスカ(Hulda Lashanska) アメリカ人
ヴァイオリンかわいいミッシャ・エルマン(Mischa Elman)
チェロかわいいエマヌエル・フォイアマン(Emanuel Feuermann)
ピアノかわいいルドルフ・ゼルキン(Rudolf Serkin)
録音かわいい1939年1月14日、ニューヨーク、RCA第二スタジオ

『エジプトのイスラエル人』 HWV54は、英語のオラトリオで、旧約聖書の出エジプト記と詩篇を元にしています。



8ヘンデル 
組曲 『水上の音楽』(Water Music)より
第6曲「アレグロ・デチーソ」 (Allegro deciso)

演奏かわいいロンドン・フィルハーモニー管弦楽団

ジョージ1世(1660〜1727)がテムズ川で舟遊びをしたときのための音楽です。
ヘンデルによる自筆譜は見つかっていません。
いくつかの版が存在し、このレコードは、イギリスの作曲家・指揮者 ハミルトン・ハーティ(Sir Hamilton Harty)が6曲を選んで編曲した版いわゆるハーティ版によるものです。
ハーティ版は、1922年に出版されました。
終曲にあたる「アレグロ・デチーソ」は、他の版の第2組曲ニ長調「アラ・ホーンパイプ」で、『水上の音楽』の中で最も有名な曲です。

デチーソは、「決然とした、断固とした、きっぱりと、思い切った」という発想記号(発想標語、曲想標語)です。



10ヘンデル
『オルガン協奏曲集』オルガン独奏編曲版
第2番

オルガンかわいいマルセル・デュプレ(Marcel Dupré)

こちらは、3度のチャレンジにかかわらず、回転がうまくいかず、結局、鑑賞できませんでしたもうやだ〜(悲しい顔)



※中原豊館長が説明されたことを聴き取って書いているので、聴き間違いなどあると思いますが、ご了承くださいふらふら


次回に続く
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