トーク「紙資料を未来へー文学館のシゴト」を聴講しました@
[2019年09月01日(Sun)]
8月17日(土)、セントコア山口で行われた中原中也記念館主催のトーク「紙資料を未来へー文学館のシゴト」に参加しました。
中原中也記念館は今年の2月で25周年を迎えました。中原中也に関する一次資料の展示・イベント・出版を通して中也の世界を伝えてきました。
講師の修復家の秦博志さんは、中也に関する一次資料(直筆資料等)を後世に残していくためのいろいろな研究、技術が生かされている様子を写真を投影されながら、話してくださいました。
「紙資料は後世からのプレゼントではなく、預かり物です。次の時代の人に残さなくてはいけない。
だからと言って、しまいこんで使わないのではなく、経年劣化をくい止め、紙資料を現代に活用することが大切」と話されていました。
また、修復することによって見えてくるものもあるのだそうです。例えば、「春の夕暮」が書かれた原稿用紙の裏側に書かれた「青木三造」ですが、裂け方(中也が裂いたっぽい)からどちらを残そうとしてしていたかが分かります。
▼秦博志さんがてがけた資料修復の報告書
秦さんは東京の美大の出身で油絵画家を目指されていた時期もあったそうですが、東京修復保存センターに就職されました。
記念館が、中也の日記「ボン・マルシェ日記」の修復を東京修復保存センターに依頼したときの担当が秦さんでした。2005年のことです。
その後、故郷の鳥取に修復工房を開設され、今回の資料修復事業につながりました。
2016年度606点、18年度に190点、計796点の資料が修復されました。
▼中原中也記念館収蔵資料の修復報告書
@火災による炭化 → プラズマ処理
中也の生家である中原医院の建物は1972年に火災で焼失しました。 火災現場から救出された資料は、周囲が焼け焦げ、あるいは消火の際に水をかぶり、非常にもろくなってしまいました。
紙は本来、親水性(水になじみやすい)ですが、火災による炭化で、疎水性(水をはじく)になり、糊がつかなくなっていました。
窒素ガスを使用したペン型のプラズマ放電装置によりプラズマ処理することで表面を改良し、裏打ちするこができました。
A酸性紙問題 → 脱酸性化処理 ブックキーパー法
近現代資料に共通の酸性紙問題です。
15世紀頃紙は麻ボロを集めてstamping millで細かくして製紙原料にし、紙を作っていました。
印刷技術が確立して紙への需要が大きくなると供給不足になり、19世紀には木材パルプからつくられるようになります。
また、洋紙は、古くからインクの滲みを解決するため、ゼラチンや膠の液に浸していました。その後19世紀初頭、ロジン(松脂)などを原料とした滲み止め材 ロジン・サイズが製造工程の途中で施されるようになりました。陰イオンを持つ鹸化ロジンエマルションを、同じく陰イオンを持つ紙の繊維のヒドロキシ基に定着させるためには、硫酸アルミニウムを添加して、錯体のロジン酸アルミニウムを形成させる必要があります。しかし、硫酸アルミニウムの持つ硫酸イオンは空気中の水分と反応して紙の中で硫酸を生じ、紙を酸性にします。この硫酸は紙の繊維であるセルロースを徐々に加水分解する作用を持ち、経年変化で次第に紙を劣化させます。
酸性紙の脱酸(中和)処理とは、紙の中の酸をアルカリ物質により中和する処理のことをいい、劣化により失われた紙の強度を回復するのではなく、将来の劣化を抑制する方法です。
アルカリ性の酸化マグネシウムの微粒子を分散させた不活性な液体(無害のフッ素化合物)の中に分散液に紙を浸漬、あるいは液を紙に噴霧し、この液体を気化させると、酸化マグネシウムの粒子だけが紙の中に残ります。
これによって紙のpHを8〜9.5に上昇させ、紙の寿命を5倍程度のばすことができます。
・・・書いていてよくわかわからないけど、こんな話でした(すみません。うまくつたえられなくて…)
▼洋紙の違い
Bインクの抗酸化処理
鉄製のクリップやステープラの芯などの金具が錆びるとやがて紙に穴が開きます。
それと同様なことが、古典ブルーブラックインクでも起こっているのだそうです。
実際、記念館に展示されている中也の書いたものを見ると、ブルーブラックで書いているにもかかわらず、黒インクて書いているとしか思えません。
実は、このブルーブラックインは、タンニンと鉄を反応させ黒い顔料を生成したもので、配合されている鉄が、経年の酸化によって黒く変色します。なんと、筆跡が錆びているのです。さらに、酸化が進み、紙に穴が開いてしまったものもあります。
この筆跡の腐食を食い止めるために、ジュースや肉類などの酸化を抑える抗酸化剤のフィチン酸を使って抗酸化処理をされたそうです。
▼古典ブルーブラックインクと染料インクの違い
C紙の破れ、脆弱化、欠損 → リーフキャステイグや裏打ち補修など
リーフキャステイグ(漉き嵌め)とは、紙漉きの簀に載せて紙漉きと同じように漉きます。水の中に繊維を分散させて、 その繊維を資料の欠損部に流し込むことで、 欠損部を埋めて補紙を形成する修復方法です。この方法は、両面に文字がある資料でも文字を隠さず補修することができます。
裏打ち補修は、裏全面に薄い和紙を貼る方法です。
糊は、小麦粉から抽出した生麩糊の粉を使用する度に水で溶いて煮て、デンプン糊を作ります。冷蔵庫で1週間位もつそうです。
和紙は美濃紙などが用いられます。
綴じ糸によって切れた部分の補強には、雁皮紙を使います。
以上のようなお話だったのですが、途中、勉強不足のためついていけず未消化な部分もあり、また、用意されていた画像を全部見せていただきたかったです
なので、ぜひ、もう一度、じっくりお聞きしたいです。
今、記念館で配布しているリーフレット「紙資料を未来へー中原中也記念館 資料修復事業」に、今回のトークのエッセンスが、わたしの拙い文章と違って、わかりやすく記載してあります。
ぜひ、記念館でそちらをGETしてください
【次回に続く】
中原中也記念館は今年の2月で25周年を迎えました。中原中也に関する一次資料の展示・イベント・出版を通して中也の世界を伝えてきました。
講師の修復家の秦博志さんは、中也に関する一次資料(直筆資料等)を後世に残していくためのいろいろな研究、技術が生かされている様子を写真を投影されながら、話してくださいました。
「紙資料は後世からのプレゼントではなく、預かり物です。次の時代の人に残さなくてはいけない。
だからと言って、しまいこんで使わないのではなく、経年劣化をくい止め、紙資料を現代に活用することが大切」と話されていました。
また、修復することによって見えてくるものもあるのだそうです。例えば、「春の夕暮」が書かれた原稿用紙の裏側に書かれた「青木三造」ですが、裂け方(中也が裂いたっぽい)からどちらを残そうとしてしていたかが分かります。
▼秦博志さんがてがけた資料修復の報告書
秦さんは東京の美大の出身で油絵画家を目指されていた時期もあったそうですが、東京修復保存センターに就職されました。
記念館が、中也の日記「ボン・マルシェ日記」の修復を東京修復保存センターに依頼したときの担当が秦さんでした。2005年のことです。
その後、故郷の鳥取に修復工房を開設され、今回の資料修復事業につながりました。
2016年度606点、18年度に190点、計796点の資料が修復されました。
▼中原中也記念館収蔵資料の修復報告書
@火災による炭化 → プラズマ処理
中也の生家である中原医院の建物は1972年に火災で焼失しました。 火災現場から救出された資料は、周囲が焼け焦げ、あるいは消火の際に水をかぶり、非常にもろくなってしまいました。
紙は本来、親水性(水になじみやすい)ですが、火災による炭化で、疎水性(水をはじく)になり、糊がつかなくなっていました。
窒素ガスを使用したペン型のプラズマ放電装置によりプラズマ処理することで表面を改良し、裏打ちするこができました。
A酸性紙問題 → 脱酸性化処理 ブックキーパー法
近現代資料に共通の酸性紙問題です。
15世紀頃紙は麻ボロを集めてstamping millで細かくして製紙原料にし、紙を作っていました。
印刷技術が確立して紙への需要が大きくなると供給不足になり、19世紀には木材パルプからつくられるようになります。
また、洋紙は、古くからインクの滲みを解決するため、ゼラチンや膠の液に浸していました。その後19世紀初頭、ロジン(松脂)などを原料とした滲み止め材 ロジン・サイズが製造工程の途中で施されるようになりました。陰イオンを持つ鹸化ロジンエマルションを、同じく陰イオンを持つ紙の繊維のヒドロキシ基に定着させるためには、硫酸アルミニウムを添加して、錯体のロジン酸アルミニウムを形成させる必要があります。しかし、硫酸アルミニウムの持つ硫酸イオンは空気中の水分と反応して紙の中で硫酸を生じ、紙を酸性にします。この硫酸は紙の繊維であるセルロースを徐々に加水分解する作用を持ち、経年変化で次第に紙を劣化させます。
酸性紙の脱酸(中和)処理とは、紙の中の酸をアルカリ物質により中和する処理のことをいい、劣化により失われた紙の強度を回復するのではなく、将来の劣化を抑制する方法です。
アルカリ性の酸化マグネシウムの微粒子を分散させた不活性な液体(無害のフッ素化合物)の中に分散液に紙を浸漬、あるいは液を紙に噴霧し、この液体を気化させると、酸化マグネシウムの粒子だけが紙の中に残ります。
これによって紙のpHを8〜9.5に上昇させ、紙の寿命を5倍程度のばすことができます。
・・・書いていてよくわかわからないけど、こんな話でした(すみません。うまくつたえられなくて…)
▼洋紙の違い
Bインクの抗酸化処理
鉄製のクリップやステープラの芯などの金具が錆びるとやがて紙に穴が開きます。
それと同様なことが、古典ブルーブラックインクでも起こっているのだそうです。
実際、記念館に展示されている中也の書いたものを見ると、ブルーブラックで書いているにもかかわらず、黒インクて書いているとしか思えません。
実は、このブルーブラックインは、タンニンと鉄を反応させ黒い顔料を生成したもので、配合されている鉄が、経年の酸化によって黒く変色します。なんと、筆跡が錆びているのです。さらに、酸化が進み、紙に穴が開いてしまったものもあります。
この筆跡の腐食を食い止めるために、ジュースや肉類などの酸化を抑える抗酸化剤のフィチン酸を使って抗酸化処理をされたそうです。
▼古典ブルーブラックインクと染料インクの違い
C紙の破れ、脆弱化、欠損 → リーフキャステイグや裏打ち補修など
リーフキャステイグ(漉き嵌め)とは、紙漉きの簀に載せて紙漉きと同じように漉きます。水の中に繊維を分散させて、 その繊維を資料の欠損部に流し込むことで、 欠損部を埋めて補紙を形成する修復方法です。この方法は、両面に文字がある資料でも文字を隠さず補修することができます。
裏打ち補修は、裏全面に薄い和紙を貼る方法です。
糊は、小麦粉から抽出した生麩糊の粉を使用する度に水で溶いて煮て、デンプン糊を作ります。冷蔵庫で1週間位もつそうです。
和紙は美濃紙などが用いられます。
綴じ糸によって切れた部分の補強には、雁皮紙を使います。
以上のようなお話だったのですが、途中、勉強不足のためついていけず未消化な部分もあり、また、用意されていた画像を全部見せていただきたかったです
なので、ぜひ、もう一度、じっくりお聞きしたいです。
今、記念館で配布しているリーフレット「紙資料を未来へー中原中也記念館 資料修復事業」に、今回のトークのエッセンスが、わたしの拙い文章と違って、わかりやすく記載してあります。
ぜひ、記念館でそちらをGETしてください
【次回に続く】
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