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こどもと本ジョイントネット21・山口


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穂村弘「中原中也をはじめとする詩人たちの短歌」に参加しました [2024年03月25日(Mon)]
2月18日(日)、歌人 穂村弘さんによる中原中也記念館開館30周年記念公開講演「中原中也をはじめとする詩人たちの短歌」に参加しましたぴかぴか(新しい)

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まず、中原中也記念館での企画展U「中也と短歌」を2度目の鑑賞をしてから行きました!

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2月18日は開館30周年の記念日で入館無料でした。

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講演では、「詩人たちの短歌」はもちろんですが、『文藝春秋』2014年2月号(文藝春秋 2014.1)に掲載された代表的日本人の 「新選・百人一首」(岡井隆・馬場あき子・永田和宏・穂村弘/選)、『新・百人一首 ― 近現代短歌ベスト100』(岡井隆・馬場あき子・永田和宏・穂村弘/選 文藝春秋 2013.3)『短歌のガチャポン』(穂村弘/著 小学館 2022.12.6)も踏まえて、短歌が専門でない、違うジャンルの人々の短歌も紹介してくださいました。

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ところで、短歌の制作数が多い人、ご存知ですか?

3位 5万首   与謝野晶子
2位 約10万首 明治天皇
1位 15万首  出口王仁三郎

なんだそうです。

詩人が最初に短歌を詠む例は、萩原朔太郎などにもありますが、中原中也も13歳の頃から短歌を詠んでいました。
紹介された短歌を幾つかあげてみましょう。


かわいい中原中也(1907〜1937)
大河に投げんとしたるその石を二度みられずとよくみいる心
(歌集『末黒野』(吉田緒佐夢・宇佐川紅萩・中原中也/著 1922.5)収録)


工藤玲音(1994〜)
たくさんの投げぬ石から投げる石選ぶわたしの顔に差す影
(『水中で口笛』(左右社 2021.4)収録)

に通じる。

1920年2月、中原中也12歳の時、雑誌「婦人画報」に自作の短歌が初めて掲載されました。その後「防長新聞」「文章倶楽部」と発表の場を広げ、2年後の1922年には歌会の先輩二人と合同歌集『末黒野』を刊行するまでになりました。
山口では少年歌人として活躍した中也でしたが、その後、故郷の山口を離れ、京都の中学校に転校し、本格的に詩を制作するようになった1923年以降、短歌作品は数首ほどしか確認できません。しかし、歌を詠んだ経験は、詩作にも強い影響を与えているように思われます。

(中原中也記念館企画展U「中也と短歌」チラシより)



かわいい宮沢賢治(1896〜1933)
まことかの鸚鵡ごとく息かすかに
看護婦たちはねむりけるかな。


いざよいの
月はつめたきくだものの
匂をはなちあらはれにけり。


視覚、触覚、嗅覚が連動した歌で、「五感の越境」が読み取れます。

「青空の脚」といふもの
ふと過ぎたり
かなしからずや 青そらの脚


後年の作品に通じる幻視の感覚。

父よ父よなどて舎監の前にしてかのとき銀の時計を捲きし



かわいい三好達治(1900〜1964)
ははそはのははもそのこも
はるののにあそぶあそびを
ふたたびはせず

「いにしへの日は」(『花筐(はながたみ)』(昭和19年刊行)収録)より

詩「いにしへの日は」の末尾です。


  いにしへの日は

いにしへの日はなつかしや
すがの根のながき春日を
野にいでてげんげつませし
ははそはの母もその子も
そこばくの夢をゆめみし
ひとの世の暮るるにはやく
もろともにけふの日はかく
つつましく膝をならべて
あともなき夢のうつつを
うつうつとかたるにあかぬ
春の日をひと日旅ゆき
ゆくりなき汽車のまどべゆ
そこここにもゆるげんげ田
くれなゐのいろをあはれと
眼にむかへことにはいへど
もろともにいざおりたちて
その花をつままくときは
とことはにすぎさりにけり

ははそはのははもそのこも
はるののにあそぶあそびを
ふたたびはせず



『測量船』も「春の岬」という題の短歌形式の作品から始まっています。

春の岬旅のをはりの鴎どり
浮きつつ遠くなりにけるかも

(「春の岬」(『測量船』収録))



かわいい立原道造(1914〜1939)
何しに僕は生きてゐるのかと或夜更に一本のマツチと会話(はなし)をする
(歌誌『詩歌』(昭和7年2月号)収録)

山本祥彦のペンネームで口語自由律短歌を歌誌『詩歌』に発表していました。
この歌を四行詩に改め、タイトルをつけました。

  問答

何しに僕は生きてゐるのかと
或夜更に
一本のマツチと
はなしをする



クレヨン画の飛行船に乗つて、お魚みたいに時間が流れる !
(歌誌『詩歌』収録)

消えるやうに倒れたあなたに接唇した、船の灯が一つ一つ消えて行つた
(歌誌『詩歌』収録)



かわいい吉岡実(1919〜1990)
夕光る鏡の上のチョコレートのうすき歯のあと夏はきたりぬ
(吉岡実歌集『魚藍』(私家版(1959)⇒新装版(橋本真理/装幀 深夜叢書社 1973(昭和48).8.28)限定800部)収録)

詩人 吉岡実の第一歌集にして唯一の歌集である『魚藍』は、40代で結婚する時、結婚式の引出物として70部作ったそうです。

白孔雀しづかにねむる砂の上バナナの皮の乾きたる午後
(吉岡実歌集『魚藍』収録)

夜の蛾のめぐる燈りのひとこころめくりし札はスペードの女王
(吉岡実歌集『魚藍』収録)

秋ひらく詩集の余白夜ふかみ蟻のあしおとふとききにけり
(吉岡実歌集『魚藍』収録)



かわいい谷川俊太郎(1931〜)
午後四時の机の上に匙がある嬰児の声が庭に聞こえる
(『谷川俊太郎エトセテラ』(大和書房 1979.11)収録)
(2006年4月、いそっぷ社より『谷川俊太郎エトセテラリミックス』と改題増補改訂)

建物は実にかすかに揺れているそのことだけに気がついている



かわいい萩原朔太郎(1886〜1942)
しののめのまだきに起きて人妻と汽車の窓よりみたるひるがほ

夕さればそぞろありきす銃器屋のまへに立ちてはピストルをみる

幼き日パン買ひに行きし店先の額のイエスをいまも忘れず



かわいい佐藤春夫(1892〜1964)
ああナイフ紅き林檎の皮と実のあひだをさっと音たててゆく

ちくたくと時を刻める夜の時計この世の外にわれ眠る間も

いと赤きネクタイつけし黒人(くろんぼ)と肩擦り合わせ夏の街ゆく




「新選・百人一首」には、西郷隆盛、山縣有朋、新島八重、山本五十六、石坂泰三、樋口一葉、芥川龍之介、永井荷風、三島由紀夫、海音寺潮五郎、新田次郎、三浦あやこ、渡辺淳一、栗本薫、徳富蘇峰、西田幾多郎、寺田寅彦、湯川秀樹、河上肇、村岡花子、竹久夢二、小津安二郎、大橋巨泉、坂口弘などによる優れた歌が取り上げられています。その一部を紹介されました。

かわいい出口王仁三郎(1871〜1948) 宗教家
山が崩れてきても足許に火が燃えついてもびくともせない阿呆になりたい
(『王仁三郎歌集』(太陽出版 2013.12)収録)



かわいい寺田寅彦(1878〜1935) 物理学者
好きなもの 苺珈琲花美人 懐手して宇宙見物



かわいい山本五十六(1884〜1943) 海軍軍人
うつし絵に口づけしつつ幾たびか千代子と呼びてけふも暮しつ



かわいい芥川龍之介(1892〜1927) 小説家
わが前を歩める犬のふぐり赤しつめたからむとふと思ひたり

赤いという視覚を冷たさという触覚で表現する「共感覚」の歌です。「五感の越境」。
このような俳句もあります。

青蛙おのれもペンキぬりたてか



かわいい金田一京助(1882〜1971) 言語学者
我が顔に君は恐らく友情の限界を見て微笑して死せり

石川啄木(1886〜1912)と金田一京助の交友は有名ですが、啄木四十年忌に作られた歌です。



かわいい福島遥(1989〜) フォークロックユニット「ハルカトミユキ」
今日君が持ってる本を買いました。もう本当のさよならなんだ
(福島遥歌集『空中で平泳ぎ』収録)
(写真短歌集『壊れていてもかまわない』(雲居ハルカ/短歌 町田千秋/写真)収録)



穂村さんの講演はユーモアに溢れ、会場は何度も笑いの渦に包まれていました。
穂村さんの親しみく分かりやすいお話で、短歌との距離もグッと縮まり、私でも詠めそうな気がしてきました……。
3月9日の木下龍也創作ワークショップ「1首つくり終わるまで出られない短歌教室」に参加できていたら、きっといい歌が詠めたのに!(すぐに満席になったようで参加できませんでしたもうやだ〜(悲しい顔)
穂村さんは今年度から中原中也賞の選考委員になられたし(講演会の前日が選考会!)、木下さんは周南市のご出身だし、これからもこのような機会があることでしょう。期待しています揺れるハート



『短歌のガチャポン』
(穂村弘/著 小学館 2022.12.6)
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『文藝春秋』2014年2月号「新選・百人一首」
(岡井隆・馬場あき子・永田和宏・穂村弘/選 文藝春秋 2014.1)
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『魚藍』
(私家版 1959 限定70部)
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『魚藍』
(新装版 吉岡実/短歌 橋本真理/装幀 深夜叢書社 1973(昭和48).8.28 限定800部)
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