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こどもと本ジョイントネット21・山口


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第28回中原中也賞贈呈式 & 記念講演 萩原朔美「中也の風、朔太郎の白」 [2023年05月29日(Mon)]
4月29日(土・祝)、第28回中原中也賞贈呈式記念講演 萩原朔美「中也の風、朔太郎の白」に行きましたぴかぴか(新しい)

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中原中也賞は、山口市出身の詩人中原中也の業績を永く顕彰することを目的に、新鮮な感覚を備えた優れた現代詩の詩集に対して贈られる賞です。

第28回の対象は、2021年12月1日から2022年11月30日までに刊行された現代詩の詩集で、公募と推薦あわせて、204点の応募がありました。
1月の推薦会で7作品にしぼられ、2月の選考会で選ばれたのが、青柳菜摘さんの『そだつのをやめる』 (thoasa 2022)ですわーい(嬉しい顔)

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▲『そだつのをやめる』(thoasa 2022)



まず、選考委員紹介
佐々木幹郎(詩人)さん、荒川洋治(現代詩作家)さん、井坂洋子(詩人)さん、蜂飼耳(詩人)さん、高橋源一郎(作家)さん。
高橋さんは欠席。

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佐々木さんは「成長の過程で忘れてしまった言語習得以前の体験をこれまでにない形で捉えた作品」と評価し、高橋さんは「選考を終えてもまだ解釈したくなる。今までに読んだことのない新しさ」と絶賛されています。

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いただいたパンフレットに選評が載っていました。

(略)青柳菜摘詩集は、まったく新しい「時間」の取扱いかたをしている。セミや蝶などの虫の視点から生きものの成長(育ち方)を見る。同時に成長すると見えなくなる成長の過程を、また人間存在そのものを見直そうとしている。本文を読み進めるうちに、見つめている人間がどこにいるかわからなくなる、距離感の無くなる面白さがあって、詩集の中に閉じ込められるような、言葉の迷路の快感に誘われる。その新しさによって、第28回中原中也賞の受賞作に決定した。

佐々木幹郎さんによる講評

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・類まれなる可能性を秘めた詩人であり映像作家。
・詩の枠組みを解体する奇抜な視点。
・読めば読むほど味が濃くなる。
・非常に不思議な言葉の迷路。
と話されていました。

今回の第28回をもって、佐々木さん(第1〜28回)、荒川さん(第1〜28回)、井坂さん(第9〜28回)、高橋さん(第11〜28回)は中原中也賞の選考委員を退任されます。
蜂飼さん(第17回〜)【2000年第5回『いまにもうるおっていく陣地』】のみ続投され、新しく、カニエ・ナハさん【2016年第21回『用意された食卓』】、川上未映子さん【2009年第14回『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』】、野崎有以さん【2017年第22回『長崎まで』】の3人の中原中也賞受賞詩人と歌人の穂村弘さんが就任されます。
「大きく可能性が広がる新人を迎えたことで、中原中也賞は今後も発展するでしょう。」とエールを送られていました。


第28回中原中也賞贈呈
青柳さんに伊藤和貴市長から、萩焼の賞状(陶板)、

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正賞として中也と親交のあった彫刻家高田博厚(1900〜1987)制作の中原中也ブロンズ像と、

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副賞として100万円を贈呈されました。

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山口市長の主催者挨拶の後、花束贈呈

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受賞者挨拶
壇上に上がられた青柳さんは、岩川千歩さんデザインのイエローの衣装を纏い、

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スピーチが苦手ということで「受賞者のあいさつを、どうしようどうしようと悩んで巻紙なら読めると思い書いてきました。」とおもむろに銀色のポシェットから、巻紙を出されました。

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なんと、それは、おそらく手書きの3メートルを優に超えるパタパタ折本形式の折りたたみ巻紙。

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手書きの文字は青柳さんの口から音となって発せられると、さらさらと、さらさらと下に落ちていき、おそらく空調からのさやかに吹く風に、言葉は、はたはた はたはたと はためいて、ゆあーん ゆよーん ゆやゆよんと舞っていました・・・
受賞作を発行した書店「コ本や」を営む傍ら、映像や絵画制作でも活躍されているアーティストだけあって挨拶も「パフォーマンス」です。

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カニエ・ナハさんから「作品には映像や空間を踏まえた踏まえた詩情がある。絶対に詩を書いた方がいい」と勧められ、詩作を始めたということです。
青柳さんは「映像作品で追求した人間じゃないものをどう描くかという問いが受賞に結実した」と喜びを語っていらっしゃいました。

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 わたしはアーティストとして活動を続けるなかで、ビジュアルに表せない言葉の表現というものに苦戦しながらも挑んできました。だからこそ、「一冊の詩集」として表現することは、私にとっておおきな挑戦でもありました。『そだつのをやめる』は、単純に成長しなくなることではありません。過去も、先も見通して、意思をもって「そだつ」を考えなおすことです。

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最後に一つのメルヘンを朗読してくださいました。

一つのメルヘン

秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があつて、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。

陽といつても、まるで硅石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。

さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。

やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかつた川床に、水は
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました……




記念講演 萩原朔美「中也の風、朔太郎の白」

萩原朔太郎の長女 葉子さんの長男で、前橋文学館館長の萩原朔美さんが、こんなにたくさんの詩人の前で、詩人や詩について話しづらいと言われながら、ご講演くださいました。

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受賞式が終わってから、大雨の中、山口情報芸術センターへ、三宅唱監督「ケイコ 目を澄ませて」トークイベントを聴きに行きましたぴかぴか(新しい)
「ケイコ 目を澄ませて」は、聴覚障害を持つプロボクサーが主人公の物語です。ケイコ役の岸井ゆきのさんが第46回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞しています。
・デジタルではなく、撮り直しの難しい16ミリフィルムを敢えて使ったことから、緊張感や撮影現場の一体感が増したこと
・聞こえない人が見ることを意識し、音楽で感情を導くのではなく、画面で伝えるため、音楽をなくしたこと
・日本語字幕にも自ら関わり、縄跳びのシーンを「縄跳びの音」と表すか、「縄跳びが床を打つ音」と表すかなど細部までこだわったこと
などなど、製作秘話を話してくださいました。

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空の下の朗読会、GOMESSさんのライブ、佐々木幹郎さんの講評、青柳菜摘さんの受賞者挨拶、萩原朔美さんの記念講演、三宅唱監督のトーク・・・ことばと声の一日でした。
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