「第30回やまぐち朗読Cafe 〜朗読と蓄音器ジャズの夕べ〜」に参加しました
[2021年11月20日(Sat)]
11月16日(火)、ジャズ スポット ポルシェで開催された「第30回やまぐち朗読Cafe 〜朗読と蓄音器ジャズの夕べ〜 」に参加しました

もちろん、進行は中原中也記念館の中原豊館長です。

【第一部 蓄音機ジャズ】
今回はジャズ・オーケストラ特集でした。
@ベニー・グッドマン・オーケストラ「ブルースカイ」

「Fox Trot」とあるのは「foxtrot」のことで社交ダンスの一つで、ダンスの伴奏曲。

Aグレン・ミラー・オーケストラ「ムーンライト・セレナーデ」

グレン・ミラーの作曲です。
A面は「Stardust」で、こちらはすでにかけたことがあるそうです。
Bデューク・エリントン・オーケストラ「Hy'a Sue」

デューク・エリントン自身の作曲です。
サキソフォーンとトランペットの掛け合いの面白い曲です。

Cカウント・ベイシー・オーケストラ「One O'Clock Jump」

カウント・ベイシーの作曲です。
「朗読Cafe」の前身で純粋に蓄音機ジャズを楽しむ会が2回行われた際、最初にかけた曲が「One O'Clock Jump」で、その時は、ベニー・グッドマンが演奏したSPだったそうです。
【第二部 自由朗読】
1、NMさん
出口康夫「「できること」から「できなさ」へ」
2、THさん
佐藤春夫「井伏鱒二は悪人なるの説」
太宰治は井伏鱒二は悪人なりの一句を言ひ遺して死んだと聞く。これはなかなか重要な遺言だと思はれるから、自分はこれを解説し太宰にとつて井伏鱒二が悪人であつた事を裏書きして置きたいと思ふ。(中略)
太宰の奴はその死を決するに当つて、人間並にも女房や子供がかはいさうだなといふ人情が湧いたのである。(中略)
所詮人並の一生を送れる筈もないわが身に人並に女房を見つけて結婚させるやうな重荷を負はせた井伏鱒二は余計なおせつかいをしてくれたものだな。あんな悪人さへゐなければ自分も今にしてこんな歎きをする必要もなくあつさりと死ねるのだがなあ。井伏鱒二のおかげで女房子供に可愛そうな思ひをさせる(と太宰は井伏を悪人にして一切の責任をこれに転嫁した)それ故あの一句の影には太宰の、女房よ子供よこの悪い夫を悪い父を寛恕せよといふ気持を正直に記す気恥しさを「井伏鱒二は悪人なり」と表現したのであつた。(中略)
余計な解説をしたのを知つて地下の太宰は今ごろは佐藤春夫悪人なりと憤慨してゐるかも知れない。
(一部抜粋)
3、KTさん
青木玉『帰りたかった家(うち)』(講談社 1997.3)より「散歩」

前回に続いて、青木玉『帰りたかった家』からのチョイスです。
4、OYさん
筒井康隆『くたばれPTA』(新潮文庫)(新潮社 1986.10)より「美女」

5、FKさん
北原白秋「落葉松」(詩集 『水墨集』(大正12年6月18日アルス発行)より)
落葉松
一
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
二
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
三
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
四
からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
五
からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。
六
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
七
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。
八
世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
6、MTさん
アルチュール・ランボー/詩 中原中也/訳「幸福」

▲『ランボオ詩集』(岩波文庫)(アルチュール・ランボー/詩 中原中也/訳 岩波書店)
幸福
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
無疵(むきず)な魂(もの)なぞ何処にあらう?
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
私の手がけた幸福の
秘法を誰が脱(のが)れ得よう。
ゴオルの鶏(とり)が鳴くたびに、
「幸福」こそは万歳だ。
もはや何にも希ふまい、
私はそいつで一杯だ。
身も魂も恍惚(とろ)けては、
努力もへちまもあるものか。
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える。
私が何を言つてるのかつて?
言葉なんぞはふつ飛んぢまへだ!
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える!
7、MKさん+山口
カニエ・ナハ 詩集『CT』(カニエ・ナハ 2020.1)より冒頭の詩、「演劇」「彫刻」「演劇」

『CT』は、詩人としてだけでなく、ブックデザインなど様々なアートシーンで活躍するカニエ・ナハさんの詩集です。
全34篇、右から左へ流れる「演劇」と、右へ逆行することでずっと屹立し静止続ける「彫刻」で構成されています。
表紙装画は、カニエさんの詩集でおなじみの中島あかねさんです。それは、「カ」とも読め、「カ」を切り取った断層ようでもあります。
映画『つつんで、ひらいて』上映後、広瀬奈々子監督と中原中也記念館 特別企画展「書物の在る処 ― 中也詩集とブックデザイン」の監修者 カニエ・ナハさんの対談を聴きました。
その後のサイン会で、偶然、MKさんも私も『CT』を求めました。MKさんより「朗読カフェで一緒に朗読しない?」と誘われて、「いいね。」と即答。
ノリで、二人で朗読することになりましたが、じっくり詩集を読んでみると、言葉は平易ですが、同じ言葉が繰り返され、難解なのです。
メッセンジャーでやりとりをして、朗読の担当を決めました。
朗読をした後の感想ですが、とにかく、爽快で気持ち良く、楽しかったです。
この詩集は、朗読するために作られたのではないかと思ったほどです。
8、原明子さん
北村太郎『港の人』(港の人 2017.9)より「1」

函から出すと紺色の落ち着いた本です。

『港の人』は、思潮社 (1988.10)で発行されています。

9、FYさん
自作詩「2014・301」
初めての参加の方です!
自作詩はやはりいいですね。
10、HMさん
自作ショートストーリー「白日夢(ディドリーム)」
ポルシェに来た時は二行だけしか書いていなかったそうですが、朗読するときには完成!できたてほやほやのショートストーリーでした。
11、中原豊さん
伊東静雄『反響』(創元社 1947.11)(復刊:竹林館 2005)より「中心に燃える」

中心に燃える
中心に燃える一本の蝋燭の火照に
めぐりつづける廻燈籠
蒼い光とほのあかい影とのみだれが
眺め入る眸 衣(ころも) くらい緑に
ちらばる囘歸の輪を描く
そして自(みづか)ら燃えることのほかには不思議な無關心さで
闇とひとの夢幻をはなれて
『反響』は伊東静雄の第4詩集です。他に『わがひとに与ふる哀歌』(1935)、『夏花』(1940)(北村透谷賞受賞)、『春のいそぎ』(1943)があります。
11月17日(水)に防府市立図書館で「伊東静雄と中原中也」(防府市読書グループ連絡協議会 令和3年 文学講座)という講座があるので読まれたそうです。
次回は、2021年12月22日(水)です。

もちろん、進行は中原中也記念館の中原豊館長です。
【第一部 蓄音機ジャズ】
今回はジャズ・オーケストラ特集でした。
@ベニー・グッドマン・オーケストラ「ブルースカイ」
「Fox Trot」とあるのは「foxtrot」のことで社交ダンスの一つで、ダンスの伴奏曲。
Aグレン・ミラー・オーケストラ「ムーンライト・セレナーデ」
グレン・ミラーの作曲です。
A面は「Stardust」で、こちらはすでにかけたことがあるそうです。
Bデューク・エリントン・オーケストラ「Hy'a Sue」
デューク・エリントン自身の作曲です。
サキソフォーンとトランペットの掛け合いの面白い曲です。
Cカウント・ベイシー・オーケストラ「One O'Clock Jump」
カウント・ベイシーの作曲です。
「朗読Cafe」の前身で純粋に蓄音機ジャズを楽しむ会が2回行われた際、最初にかけた曲が「One O'Clock Jump」で、その時は、ベニー・グッドマンが演奏したSPだったそうです。
【第二部 自由朗読】
1、NMさん
出口康夫「「できること」から「できなさ」へ」
2、THさん
佐藤春夫「井伏鱒二は悪人なるの説」
太宰治は井伏鱒二は悪人なりの一句を言ひ遺して死んだと聞く。これはなかなか重要な遺言だと思はれるから、自分はこれを解説し太宰にとつて井伏鱒二が悪人であつた事を裏書きして置きたいと思ふ。(中略)
太宰の奴はその死を決するに当つて、人間並にも女房や子供がかはいさうだなといふ人情が湧いたのである。(中略)
所詮人並の一生を送れる筈もないわが身に人並に女房を見つけて結婚させるやうな重荷を負はせた井伏鱒二は余計なおせつかいをしてくれたものだな。あんな悪人さへゐなければ自分も今にしてこんな歎きをする必要もなくあつさりと死ねるのだがなあ。井伏鱒二のおかげで女房子供に可愛そうな思ひをさせる(と太宰は井伏を悪人にして一切の責任をこれに転嫁した)それ故あの一句の影には太宰の、女房よ子供よこの悪い夫を悪い父を寛恕せよといふ気持を正直に記す気恥しさを「井伏鱒二は悪人なり」と表現したのであつた。(中略)
余計な解説をしたのを知つて地下の太宰は今ごろは佐藤春夫悪人なりと憤慨してゐるかも知れない。
(一部抜粋)
3、KTさん
青木玉『帰りたかった家(うち)』(講談社 1997.3)より「散歩」

前回に続いて、青木玉『帰りたかった家』からのチョイスです。
4、OYさん
筒井康隆『くたばれPTA』(新潮文庫)(新潮社 1986.10)より「美女」

5、FKさん
北原白秋「落葉松」(詩集 『水墨集』(大正12年6月18日アルス発行)より)
落葉松
一
からまつの林を過ぎて、
からまつをしみじみと見き。
からまつはさびしかりけり。
たびゆくはさびしかりけり。
二
からまつの林を出でて、
からまつの林に入りぬ。
からまつの林に入りて、
また細く道はつづけり。
三
からまつの林の奥も
わが通る道はありけり。
霧雨のかかる道なり。
山風のかよふ道なり。
四
からまつの林の道は
われのみか、ひともかよひぬ。
ほそぼそと通ふ道なり。
さびさびといそぐ道なり。
五
からまつの林を過ぎて、
ゆゑしらず歩みひそめつ。
からまつはさびしかりけり、
からまつとささやきにけり。
六
からまつの林を出でて、
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
浅間嶺にけぶり立つ見つ。
からまつのまたそのうへに。
七
からまつの林の雨は
さびしけどいよよしづけし。
かんこ鳥鳴けるのみなる。
からまつの濡るるのみなる。
八
世の中よ、あはれなりけり。
常なけどうれしかりけり。
山川に山がはの音、
からまつにからまつのかぜ。
6、MTさん
アルチュール・ランボー/詩 中原中也/訳「幸福」

▲『ランボオ詩集』(岩波文庫)(アルチュール・ランボー/詩 中原中也/訳 岩波書店)
幸福
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
無疵(むきず)な魂(もの)なぞ何処にあらう?
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える、
私の手がけた幸福の
秘法を誰が脱(のが)れ得よう。
ゴオルの鶏(とり)が鳴くたびに、
「幸福」こそは万歳だ。
もはや何にも希ふまい、
私はそいつで一杯だ。
身も魂も恍惚(とろ)けては、
努力もへちまもあるものか。
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える。
私が何を言つてるのかつて?
言葉なんぞはふつ飛んぢまへだ!
季節(とき)が流れる、城寨(おしろ)が見える!
7、MKさん+山口
カニエ・ナハ 詩集『CT』(カニエ・ナハ 2020.1)より冒頭の詩、「演劇」「彫刻」「演劇」

『CT』は、詩人としてだけでなく、ブックデザインなど様々なアートシーンで活躍するカニエ・ナハさんの詩集です。
全34篇、右から左へ流れる「演劇」と、右へ逆行することでずっと屹立し静止続ける「彫刻」で構成されています。
表紙装画は、カニエさんの詩集でおなじみの中島あかねさんです。それは、「カ」とも読め、「カ」を切り取った断層ようでもあります。
映画『つつんで、ひらいて』上映後、広瀬奈々子監督と中原中也記念館 特別企画展「書物の在る処 ― 中也詩集とブックデザイン」の監修者 カニエ・ナハさんの対談を聴きました。
その後のサイン会で、偶然、MKさんも私も『CT』を求めました。MKさんより「朗読カフェで一緒に朗読しない?」と誘われて、「いいね。」と即答。
ノリで、二人で朗読することになりましたが、じっくり詩集を読んでみると、言葉は平易ですが、同じ言葉が繰り返され、難解なのです。
メッセンジャーでやりとりをして、朗読の担当を決めました。
朗読をした後の感想ですが、とにかく、爽快で気持ち良く、楽しかったです。
この詩集は、朗読するために作られたのではないかと思ったほどです。
8、原明子さん
北村太郎『港の人』(港の人 2017.9)より「1」

函から出すと紺色の落ち着いた本です。
『港の人』は、思潮社 (1988.10)で発行されています。

9、FYさん
自作詩「2014・301」
初めての参加の方です!
自作詩はやはりいいですね。
10、HMさん
自作ショートストーリー「白日夢(ディドリーム)」
ポルシェに来た時は二行だけしか書いていなかったそうですが、朗読するときには完成!できたてほやほやのショートストーリーでした。
11、中原豊さん
伊東静雄『反響』(創元社 1947.11)(復刊:竹林館 2005)より「中心に燃える」
中心に燃える
中心に燃える一本の蝋燭の火照に
めぐりつづける廻燈籠
蒼い光とほのあかい影とのみだれが
眺め入る眸 衣(ころも) くらい緑に
ちらばる囘歸の輪を描く
そして自(みづか)ら燃えることのほかには不思議な無關心さで
闇とひとの夢幻をはなれて
『反響』は伊東静雄の第4詩集です。他に『わがひとに与ふる哀歌』(1935)、『夏花』(1940)(北村透谷賞受賞)、『春のいそぎ』(1943)があります。
11月17日(水)に防府市立図書館で「伊東静雄と中原中也」(防府市読書グループ連絡協議会 令和3年 文学講座)という講座があるので読まれたそうです。
次回は、2021年12月22日(水)です。
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