国木田独歩直筆書簡(河井大介宛・明治27年2月26日付)を観に柳井市立柳井図書館 に行きましたA
[2021年05月19日(Wed)]
【前回の続き】
一方、独歩は『欺かざるの記 前編』「第三」「明治二十七年二月」「二十一日。」の項に
十九日(略)夜、収二及父上より來状。柳井印刷所、讓り受け難き由申し來る、吾直ちに一書を裁して是非に成功す可しと申す、且つ讓らんば借り受ける可しと申しやる。
と記しており、「柳井印刷所」と呼んでいたようです。
印刷所の名称については、『青年時代の国木田独歩』(谷林博/著 柳井市立図書館 1970(昭和45).7.10)のP.55に
わたしはかって東条耕平夫人ハナにこの印刷事業について尋ねたことがある。すると「私は明治二十八年(一八九五年)に嫁いで来ましたが、その前年すなわち独歩が交渉した明治二十七年に、柳井津印刷会社は東条家で経営することになって東条活版所と改称しました」と語っていた。
とあり、「東条活版所」とするのが正しいのかもしれません。
独歩は、1892(明治25)年2月から1894(明治27)年9月までの、20歳から23歳の時に、父の勤務の関係で柳井にいた時期があります。
「柳井にいた」と書くと約2年8ヶ月の間ずっと住んでいたように誤解される方もいらっしゃる思いますが、決してそうではありません。
柳井に「住んでいた」といえるのは、1892(明治25)年2月に父母の居住していた柳井村第1041番神田継治に転居し、4月父専八の知人市山増太郎の借家(これが現在「国木田独歩旧宅」と呼ばれている家)に家族で同居し、1893(明治26)年6月上旬上京するまでの約1年4ヶ月といえるのではないでしょうか。
独歩は、「柳井」を「国許」と呼び、「帰国する」とか、「帰省する」などと記しています。
1893(明治26)年9月東京より帰省し、鶴谷学館の教師をするために佐伯に行きます。12月末から1894(明治27)年1月の正月休みに帰宅し、3月印刷所経営交渉のため帰省します。8月初旬佐伯より両親が転居した柳井町宮本の藤坂屋の家作に帰国し、9月初旬上京します。
右側の建物
後に、柳井を舞台にした『少年の悲哀』や
独歩曽遊の地 光台寺楼門 妙見社
『置土産』といった作品を生み出しました。
藤坂屋本店
「置土産」碑
ということもあって、柳井市立柳井図書館には獨歩文庫があります。
独歩文庫は、早くから充実をはかっていたそうで、昭和60年、独歩が暮らしていた柳井市姫田の市山家(当主市山太郎氏)の援助もあり、現在、191冊を所蔵しています。
文庫を見ると、初版本や貴重な書籍が揃っています
『陶庵隨筆』(西園寺公望/(述) 國木田獨歩/(編) 新聲社 1903.1)
『運命』(國木田獨歩/著 左久良書房 1908.9)(初版本は、佐久良書房・1906.3発行)
『涛聲』(國木田獨歩/著 彩雲閣 1908)(初版本は、彩雲閣・1907.5発行)
『病牀録』(國木田獨歩/著 眞山彬/編輯 新潮社 1908.7)
『獨歩集 第二』(國木田獨歩/著 彩雲閣 1908.7)
『獨歩全集 前編』(國木田獨歩/著 博文館 1910.6)
『獨歩詩集』(國木田獨歩/著 東雲堂書店 1913)
『獨歩手記』(國木田獨歩/著 國木田治子/編纂 天分社 1919)(初版本は、早稻田文學社・1916.2)
また、国木田独歩像もあります。
こちらは1891(明治24)年満20歳の像です。
柳井には他にも国木田独歩像があります。
町並み資料館に建つ国木田独歩像。
説明板に「22歳の頃の写真をもとに制作したもの」とあり、独歩が「〈明治廿五年二月七日 国木田哲夫 吉見ハル 於柳井玉光堂(館の誤り)写」と署名した写真がもとになっているのではないかと思われるので、満20歳の独歩です。
国木田独歩旧宅にある国木田独歩の像(山本辰昭/作)。
2001年町並み資料館前に設置されたブロンズ像の原型です。
しらかべ学遊館にある独歩レリーフ。
独歩の二男 国木田哲二作です。
「明治二十五年二月 柳井に於ける国木田哲夫」とあるので20歳の独歩です。
図書館の独歩像と他の3点は少し雰囲気が違う気がします。
次回は時間をたっぷりとって、ぜひ、独歩文庫の初版本や貴重書を見せていただきたい、と思います。
柳井市立柳井図書館の特別の許可を得て、独歩文庫、国木田独歩像を撮影させていただきました。
柳井市立柳井図書館の所蔵です。
ブログへのアップについて、柳井市立柳井図書館の許諾を得ています。
一方、独歩は『欺かざるの記 前編』「第三」「明治二十七年二月」「二十一日。」の項に
十九日(略)夜、収二及父上より來状。柳井印刷所、讓り受け難き由申し來る、吾直ちに一書を裁して是非に成功す可しと申す、且つ讓らんば借り受ける可しと申しやる。
と記しており、「柳井印刷所」と呼んでいたようです。
印刷所の名称については、『青年時代の国木田独歩』(谷林博/著 柳井市立図書館 1970(昭和45).7.10)のP.55に
わたしはかって東条耕平夫人ハナにこの印刷事業について尋ねたことがある。すると「私は明治二十八年(一八九五年)に嫁いで来ましたが、その前年すなわち独歩が交渉した明治二十七年に、柳井津印刷会社は東条家で経営することになって東条活版所と改称しました」と語っていた。
とあり、「東条活版所」とするのが正しいのかもしれません。
独歩は、1892(明治25)年2月から1894(明治27)年9月までの、20歳から23歳の時に、父の勤務の関係で柳井にいた時期があります。
「柳井にいた」と書くと約2年8ヶ月の間ずっと住んでいたように誤解される方もいらっしゃる思いますが、決してそうではありません。
柳井に「住んでいた」といえるのは、1892(明治25)年2月に父母の居住していた柳井村第1041番神田継治に転居し、4月父専八の知人市山増太郎の借家(これが現在「国木田独歩旧宅」と呼ばれている家)に家族で同居し、1893(明治26)年6月上旬上京するまでの約1年4ヶ月といえるのではないでしょうか。
独歩は、「柳井」を「国許」と呼び、「帰国する」とか、「帰省する」などと記しています。
1893(明治26)年9月東京より帰省し、鶴谷学館の教師をするために佐伯に行きます。12月末から1894(明治27)年1月の正月休みに帰宅し、3月印刷所経営交渉のため帰省します。8月初旬佐伯より両親が転居した柳井町宮本の藤坂屋の家作に帰国し、9月初旬上京します。
右側の建物
後に、柳井を舞台にした『少年の悲哀』や
独歩曽遊の地 光台寺楼門 妙見社
『置土産』といった作品を生み出しました。
藤坂屋本店
「置土産」碑
ということもあって、柳井市立柳井図書館には獨歩文庫があります。
独歩文庫は、早くから充実をはかっていたそうで、昭和60年、独歩が暮らしていた柳井市姫田の市山家(当主市山太郎氏)の援助もあり、現在、191冊を所蔵しています。
文庫を見ると、初版本や貴重な書籍が揃っています
『陶庵隨筆』(西園寺公望/(述) 國木田獨歩/(編) 新聲社 1903.1)
『運命』(國木田獨歩/著 左久良書房 1908.9)(初版本は、佐久良書房・1906.3発行)
『涛聲』(國木田獨歩/著 彩雲閣 1908)(初版本は、彩雲閣・1907.5発行)
『病牀録』(國木田獨歩/著 眞山彬/編輯 新潮社 1908.7)
『獨歩集 第二』(國木田獨歩/著 彩雲閣 1908.7)
『獨歩全集 前編』(國木田獨歩/著 博文館 1910.6)
『獨歩詩集』(國木田獨歩/著 東雲堂書店 1913)
『獨歩手記』(國木田獨歩/著 國木田治子/編纂 天分社 1919)(初版本は、早稻田文學社・1916.2)
また、国木田独歩像もあります。
こちらは1891(明治24)年満20歳の像です。
柳井には他にも国木田独歩像があります。
町並み資料館に建つ国木田独歩像。
説明板に「22歳の頃の写真をもとに制作したもの」とあり、独歩が「〈明治廿五年二月七日 国木田哲夫 吉見ハル 於柳井玉光堂(館の誤り)写」と署名した写真がもとになっているのではないかと思われるので、満20歳の独歩です。
国木田独歩旧宅にある国木田独歩の像(山本辰昭/作)。
2001年町並み資料館前に設置されたブロンズ像の原型です。
しらかべ学遊館にある独歩レリーフ。
独歩の二男 国木田哲二作です。
「明治二十五年二月 柳井に於ける国木田哲夫」とあるので20歳の独歩です。
図書館の独歩像と他の3点は少し雰囲気が違う気がします。
次回は時間をたっぷりとって、ぜひ、独歩文庫の初版本や貴重書を見せていただきたい、と思います。
柳井市立柳井図書館の特別の許可を得て、独歩文庫、国木田独歩像を撮影させていただきました。
柳井市立柳井図書館の所蔵です。
ブログへのアップについて、柳井市立柳井図書館の許諾を得ています。
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