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2020年12月01日

12/1「いのちの日」自殺予防Q&Aコーナー

■■ 共益系NPO・自予活クラブ通信 ■■

2020年12月1日(火)号
12/1「いのちの日」にちなみ自殺予防Q&Aコーナー


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市民の皆様、共益系NPO・自予活クラブ(以下「当NPO」)の活動に、いつも温かいご声援とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。そして部員の皆様、こころの通う対話のできるゲートキーパーとして日々スキルアップを目指し部活へ積極的にご参加下さりありがとうございます。

さて、新型コロナの影響で自殺者が増加していると世間でも話題となっております。「自らもゲートキーパーとして何か自殺者増加を防ぐためにできることはないだろうか?」と考えを巡らせている部員も少なくないと予想できます。

部員の皆様が受講修了された「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」では、"自分の大切な人のゲートキーパーとして"と、講習内容のポイントを絞っております。自分がゲートキーパーとして"死にたいくらい深刻な気持ち"に向き合う相手は信頼関係が構築されている間柄であるという前提で、どのように向き合い接すれば良いかを学ばれました。つまり、皆様の大切な人がそうした状況に陥ることがない限り、養成講習で身につけられた知識やスキルを活かす機会はない。言い換えれば、皆様の大切な人の"もしもの時"がいつ訪れても慌てないよう備えておくための養成講習であるとも、考えられるかもしれません。

実際には、そうであってそうではないのです。

そもそも、自殺対策における自殺予防とは、"もしもの時"がいつ訪れても慌てないよう備えておく領域を指します。ですから「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」の目的も、先述したとおり間違いはありません。しかしながら、「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」で学ばれた知識やスキルは、"もしもの時"に限らず、日常生活の様々な場面でも大いに活かすことのできるものでもあるのです。

さて、つい前置きが長くなってしまいましたが、本日12月1日は、自殺予防の啓発記念日のひとつ「いのちの日」です。9月10日の「世界自殺予防デー」、9月10日〜16日の「自殺予防週間」、3月の「自殺対策強化月間」などと比べて、とてもマイナーなので、ゲートキーパーを含む自殺対策従事者でも知っている人は稀かもしれません。自殺対策基本法がまだ制定されるずっと前に、政府の健康日本21の中で、有識者会議によって定められた啓発記念日であり、日本で心の健康問題に関する正しい理解の普及啓発を行うことが目的とされております。

ということで、「いのちの日」にちなみ、「自らもゲートキーパーとして何か自殺者増加を防ぐためにできることはないだろうか?」と考えを巡らせている部員の皆様へ、Q&Aコーナーを設けたいと思いました。以下の質問は、過去の養成講習で受講者から寄せられたものと、講師陣が学んできたものとを組み合わせました。追加質問も喜んで承りますので、遠慮なくお問い合わせください。

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Q&Aコーナーの目次
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1.自予活クラブの組織に関する質問
(1)グループ組織との関係性を知りたい
(2)将来の展開ビジョンを知りたい
(3)共益系NPOとはどういう意味なのか
(4)組織運営に必要な資金はどのように調達されているのか

2.自予活クラブの部活に関する質問
(1)〈対話法〉のトレーニングを積みたい
(2)養成講習は再受講したほうが良いのか
(3)パステルアートの作品を展示してみたい
(4)合宿研修会は面白いか
(5)合宿研修会では宿泊したほうが良いのか
(6)その道の専門家を講師として招く勉強会は開くか
(7)札幌ばかりではなく岩見沢や旭川でも部活をやってほしい
(8)今後開いてみたいと検討中の勉強会テーマはあるか
(9)気軽に参加できるような読書会を開いてほしい
(10)他の部員とも交流を深めたい

3.自予活クラブの部員に関する質問
(1)部員個人として自殺予防活動する際に所属を名乗ってもよいか
(2)同じ地域にいる部員と一緒に自殺予防活動してもよいか
(3)Twitterにおいて悩み相談の活動をしてもよいか
(4)現在の部員の男女比を知りたい
(5)同じ地域にどのくらいの部員がいるのか知りたい

4.その他の質問
(1)ゲートキーパーとしての最も重要な心得を知りたい
(2)自殺念慮者や企図者を助けられなかった際の心得を知りたい
(3)新型コロナの影響を除いて日本の自殺者数は減っていないのか
(4)地域の自殺念慮者や企図者を支援に繋げるにはどうすればよいか
(5)自分の大切な人に予め自分がゲートキーパーになることを伝えておくべきか
(6)駅前などで自殺予防の啓発活動を行う際に何を配布したらよいか
(7)先進諸国の中でも日本の自殺者数が未だ多い要因として何が考えられるか
(8)土屋講師が自殺対策従事者としての活動を続けてこれた原動力を知りたい
(9)内田講師が自殺対策従事者としての活動を続けてこれた原動力を知りたい

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1.自予活クラブの組織に関する質問
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(1)グループ組織との関係性を知りたい

「自殺予防団体-SPbyMD-」「自予活クラブ」「道民の自殺予防拠点~めいめい~」、この3つのNPOは「SPbyMDグループ」に帰属しております。それぞれは互いに協力し合っており、例えば「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」は自殺予防団体-SPbyMD-の事業として主催されていますが、養成講習で輩出されたゲートキーパーは、自予活クラブがまるっと引き受けて継続的なフォローアップを担当しております。そして、自予活クラブの部員が活動するための拠点として、道民の自殺予防拠点~めいめい~が施設(活動の場)を提供している、という関係図です。3つの組織は、メインで行う事業の方向性がそれぞれ異なっているため、2020年10月に独立しました。

(2)将来の展開ビジョンを知りたい

当NPOの部員数も2020年度以内には100名を超えることが確実となってきました。とても喜ばしいことです。自殺予防団体-SPbyMD-の主力事業によって、ゲートキーパーとして活躍できる北海道民が100名にも増えてきた、ということの証だからです。そこで、将来の展開を思い描いてみたいと思います。今は、部員一人ひとりに対して講師陣がスキルアップとなる研修会などを行うというスタイルしかありません。部員同士の連携は構築しておりません。しかしながら、ゲートキーパーとして自殺対策に携わるなら、部員同士の連携を構築することも必要になるのではないか?と思います。

ひとりのゲートキーパーが、自分だけで抱え込んで、対象者を助けようとしまうのは大変な負荷がかかります。困った時、手や知恵を貸してほしい!と思った時に、遠慮なく助け合えるネットワークを構築しておく必要があります。当NPOに所属している部員は、職業や経験も多種多彩です。「部員同士の連携」これが、将来の展開を思い描く時のキーワードとなりましょう。考えても見て下さい。せっかく優秀なゲートキーパーが100名も、当NPOに部員として所属されているのです。連携できるように展開していくことも、共益性をより高めることにも繋がってゆくのではないかと思います。

(3)共益系NPOとはどういう意味なのか

NPOという言葉自体には公益性という意味は求められていないのですが「NPO=非営利組織」といえば一般的には公益性が求められています。自予活クラブは共益性の高い組織なので、敢えて「共益系」と明記してみました。ちなみに、外に対する取り組みに重点を置いている組織を「公益系」と呼び、内に対する取り組みに重点を置いている組織を「共益系」と呼びます。

(4)組織運営に必要な資金はどのように調達されているのか

当NPOは、グループ組織の自殺予防団体-SPbyMD-と運営資金を共有しております。そのため、当NPOが組織運営するために必要な資金は、自殺予防団体-SPbyMD-が「メンバーの手弁当」「寄付金」「助成金」「補助金」などによって調達しております。ほか、微々たるものですが「事業収益」「販売収益」も資金源となります。

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2.自予活クラブの部活に関する質問
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(1)〈対話法〉のトレーニングを積みたい

〈対話法〉については、不定期的にZOOMで開かれている「オンライン練習会」に参加する方法が、頻度としても良いのではないかと思います。北海道に限らず全国各地から〈対話法〉を真摯に学んでいる方々が集われており、練習のクオリティも高いです。1回あたりの練習時間は1時間未満でも、毎週参加することで確実に身についていきます。
https://www.facebook.com/groups/netdetaiwahou

ほか、自予活クラブの部活でもある「年1回の合宿研修会」に参加するというトレーニング方法もおすすめです。特に、先述した「オンライン練習会」に参加して日々練習を積み重ねている方や、医療・福祉・教育・心理などの現場で実践されている方にとっては、〈対話法〉の生みの親でもある浅野良雄先生と直接お会いして、実践や練習の中で感じられる疑問や壁について納得できるまで質問できるという、滅多にない機会となるでしょう。

(2)養成講習は再受講したほうが良いのか

「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」は何度再受講しても受講料は無料なので、学びを自分の中に落とし込む(=理解を深める)ためには再受講することが良いと思います。実際に、繰り返し再受講を重ねて学びを深めている部員もいらっしゃいます。

また、養成講習の内容も毎年少しずつグレードアップしております。特に、2018年3月の帯広・2018年9月の旭川・2018年12月の岩見沢・2019年5月の札幌、の回を受講修了された部員の皆様には、是が非でも最新の「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」を再受講いただきたいと願っております。当時、お伝えしていた内容に不備が多々あったり、より適切な支援方法を解説できるようになったりと、ずいぶん進化しております。

(3)パステルアートの作品を展示してみたい

実は、多くの札幌市民に自分たちの作品を鑑賞してもらえる機会として「メトロギャラリー」が存在します。土屋さつき講師も以前「メトロギャラリー」を利用してパステルアート作品展を約一ヶ月間実施したことがあります。平日の昼間の時間帯に自分たちで展示作業・撤去作業を行うことが利用条件でした。無料ですよ!

「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」では、受講者の皆様にパステルアートを体験していただき、毎回個性豊かなパステルアート作品がたくさん描かれているため、自予活クラブとしてもその作品たちを集めてメトロギャラリーで展示会を実施したいなぁと考えております。札幌市営地下鉄駅の構内を歩く多くの市民の皆様に作品を鑑賞して楽しんだり、癒されたりしていただくことができます。素敵だと思いませんか?展示に参加したい部員の皆様は、メールでご連絡下さい!

(4)年に1度開かれる合宿研修会は面白いか

〈対話法〉を学びたい気持ち・〈対話法〉のスキルを磨きたい気持ち・こころの通う対話のできるゲートキーパーになりたい気持ちを持っている方であれば、とてつもないレベルで面白く感じ、有意義な時間を過ごせるでしょう。

(5)合宿研修会では宿泊したほうが良いのか

主催者としては、自予活クラブの講師陣や部員たちと交流を深める機会にしていただきたいので、宿泊してもらいたいのです。ただし、今は新型コロナの再流行期でもありますから、新型コロナの感染が心配で、密になって寝泊りする行動を避けたい方は、その日の研修会を終えたら自宅に一時帰宅して翌朝また来るのが良いと思います。

(6)その道の専門家を講師として招く勉強会は開くか

講師陣のひとりでもありますが浅野良雄先生は〈対話法〉の生みの親であり、対人コミュニケーションの専門家でもありますので、2021年1月9・10日に開く合宿研修会は、それに該当するのではないかと思います。

僕たちも、ゲートキーパーとして学ぶべきスキルの専門家たちを講師としてお招きして、たくさん多種多彩な勉強会を開いていきたい!という強い気持ちは以前から持っているのですが、資金と時間の関係でなかなか実現に至っていないのが現状です。

(7)札幌ばかりではなく岩見沢や旭川でも部活をやってほしい

僕たち講師陣も実は同じ想いを持っています。札幌ばかりではなく、少なくともこれまで「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」を開講してきた市町村(札幌・小樽・旭川・岩見沢・深川・砂川・江別・帯広など)では、毎月1回の頻度でフォローアップ研修会などの部活をやりたい!と強く強く想ってはいるのですが、これもまた資金と時間の関係でなかなか実現に至っていないのが現状です。

(8)今後開いてみたいと検討中の勉強会テーマはあるか

勉強してみたい関心の高いテーマはたくさんあります。「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」でもアンケートに記入していただいておりますが、次のようなテーマのリクエストが多いです。順次開いていきたいと考えております。
 ・認知行動療法
 ・自死遺族ケア、グリーフサポート
 ・家族ではなく友人を自殺で亡くした人向けのグリーフサポート
 ・学校教員向けの児童を対象とした自殺予防教育
 ・発達障害をもつ児童を対象とした悩み相談などの支援
 ・より実践的な場面を想定したケーススタディ

(9)気軽に参加できるような読書会を開いてほしい

素敵なアイディアありがとうございます!札幌駅前あるいは地下鉄北34条駅周辺まで来ていただける部員は、すぐにでも読書会を開くことは可能です。興味ある方はメールでご連絡下さい。

(10)他の部員とも交流を深めたい

ぜひ、フォローアップ研修会や合宿研修会にご参加下さい。「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」を再受講されることでも、他の部員との交流になります。

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3.自予活クラブの部員に関する質問
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(1)部員個人として自殺予防活動する際に所属を名乗ってもよいか

例えばTwitter上でお悩み相談の活動を行う際に「ゲートキーパーとして自予活クラブというNPOに所属している内田と申します。死にたいほどつらいお気持ちのツイートを拝見しました。気の利いた返答は不得手ですが、差し支えなければお話聞かせていただけませんか?」、のような挨拶DMを送るようなことでしょうかね。問題ありません。

(2)同じ地域にいる部員と一緒に自殺予防活動してもよいか

「こころの通う対話のできるゲートキーパー養成講習」や自予活クラブのフォローアップ研修会などで知り合った部員同士であれば、積極的に協力し合って自殺予防活動に取り組んで下さい。活動の際に、所属先を問われる場面があれば「SPbyMDグループのNPO・自予活クラブに所属しているゲートキーパーです」と返答して下さって構いません。部員がひとりぼっちで自殺予防活動に取り組むよりも、せっかく同じ地域に部員がいるのであれば、大いに集まって取り組んで下さい。

(3)Twitterにおいて悩み相談の活動をしてもよいか

もちろん構いません。基本的に個人情報は教えてもらえない匿名相談が多いために、相談者がお住まいの地域の支援機関にゲートキーパー側からバトンタッチしようとしても、情報共有ができず困り果ててしまうことも多々あると思いますが、自予活クラブのフォローアップを上手に活用しながら、Twitterで悩み相談の活動が継続的に続くよう祈っております。

(4)現在の部員の男女比を知りたい

2020年12月1日現時点で、自予活クラブ部員は計80名おり、そのうち27名が男性で、53名が女性です。

(5)同じ地域にどのくらいの部員がいるのか知りたい

次の通りですが、2018年3月に帯広市役所と共同主催で開講した回については、申込者リストを持っていないため、自予活クラブの部員に登録できておりません。悪しからず。また、必ずしも開講地と受講者の住居地はイコールではないため、受講地ではなく部員の住居地に基づいて計算しております。
 ・札幌市内 38名
 ・旭川市内 1名
 ・滝川市内 1名
 ・深川市内 3名
 ・砂川市内 1名
 ・小樽市内 5名
 ・帯広市内 2名
 ・江別市内 2名
 ・千歳市内 2名
 ・栗山町内 1名
 ・比布町内 1名
 ・岩見沢市内 7名
 ・北広島市内 2名
 ・道  外 3名
 ・不  明 11名
___________
  総計 80名

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4.その他の質問
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(1)ゲートキーパーとしての最も重要な心得を知りたい

ひとりぼっちではないこと・悩みを聴くことなどを相手に伝えることだと思います。SNS上でお互いの顔や声がわからない状況でも、悩んでいる気持ち・感情・思いを理解できるよう努めて寄り添う態度を、相談者にまず伝えることが重要だと思います。同感や同情ではなく「共感」です。共感=empathy、同感=sympathy。

(2)自殺念慮者や企図者を助けられなかった際の心得を知りたい

助けられなかった際というのは、自分がゲートキーパーとして関わった相手が自殺を遂げてしまった場合もありますが、悩み相談を受けている途中で自分から離れてしまったり電話を切られてしまったりした場合などもあるでしょう。ゲートキーパーとして自分にできる範囲で一生懸命になって行動したのであれば、助けられなかったとしても「致し方無い」「自分にできる精いっぱいの支援はした」と諦めて下さい。自分を責める必要はありません。

(3)新型コロナの影響を除いて日本の自殺者数は減っていないのか

新型コロナの影響を除くならば、日本の自殺者数は減少傾向にあります。政府・都道府県・市町村が自殺対策に真剣に取り組むようになってきたことで、国民ひとりひとりの自殺問題に対する意識(危機感)が、啓発されてきました。

(4)地域の自殺念慮者や企図者を支援に繋げるにはどうすればよいか

地域の自殺念慮者や企図者を支援に繋げるために手っ取り早いのは、地域にある相談窓口や支援機関の存在を分かりやすく示す(=案内する)ことです。精神保健福祉センター・保健センター・保健所などの精神保健福祉の相談窓口を示して下さい。現にいま困りごとを抱えている市民でも、意外とこうした相談窓口が存在すること自体知らないという方も少なくありません。

もし、親しい間柄であれば、一緒に相談窓口に電話してみたり、一緒に訪問してみることをおすすめします。「〇〇駅の近くにA相談窓口があるから行ってみたら?」よりも「〇〇駅の近くにA相談窓口があるから一緒に行ってみないかい?」のほうが、支援に繋がり易いと思います。

(5)自分の大切な人に予め自分がゲートキーパーになることを伝えておくべきか

うーん、伝え方次第で恩着せがましくもなれば、失礼だなと思われてしまうようにもなります…。例えば友人に「お前が自殺したい気持ちになるようなことが将来的に起きた時は、俺がお前の命を守るゲートキーパーになるからな♪」という伝え方をするのは好ましくないと思います。自分が自殺したい気持ちになるような出来事が今後起こることになるかもしれないなんて縁起でもない…って思っちゃいます。

もし伝えておきたいのであれば、何か雑談している時などに「そういえば俺ゲートキーパーっていう自殺予防の勉強し始めたんだ〜」と何気なく日常のエピソードのひとつとして話しておくくらいで良いと思います。つまり、直球で伝えておく必要はあまりなく、日常的にちょこっと伏線を張っておくくらい。すると、その友人に"もしもの時"が万が一にでも訪れて、自分の自殺したいほどのつらい気持ちや悩みを真剣に聞いてくれる奴いないかな…と思うような場面で、あなたの顔が脳裏に浮かぶでしょう。そういえば以前あいつ自殺予防の勉強してるとか話してたっけな…、あいつならもしかしたら聞いてくれるかもしれないな…、と。

補足ですが、既に今が"もしもの時"なのであれば、一秒でも早く直球で伝えて下さい。「お前が抱えている自殺したいほどのつらい気持ち・悩み、俺が聞くよ」と。

(6)駅前などで自殺予防の啓発活動を行う際に何を配布したらよいか

初めてご自身で制作〜配布まで一貫してやってみたい方は「お住まいの地域にある精神保健福祉の相談窓口ご案内」のパンフレットをおすすめします。先述しましたが、地域の自殺念慮者や企図者を支援に繋げるために手っ取り早いのは、地域にある相談窓口や支援機関の存在を分かりやすく示す運動を行うことです。駅前や大型ショッピングモールの出入口で、行き交う市民たちにパンフレットを配布することによって、効率よく叶います。予算に余裕があればポケットティッシュとセットで配布すると受け取ってもらい易いです。

(7)先進諸国の中でも日本の自殺者数が未だ多い要因として何が考えられるか

大きな要因の1つには「精神障害者」「精神疾患」に対する偏見や差別が、世の中にまだ根強く残っていることが関係していると考えられます。自殺と深い関係のある精神疾患に「うつ病」「統合失調症」「双極性障害」などが存在します。専門の医療機関で治療することによって、自殺を回避できる可能性はあります。しかしながら、日本では精神障害者に対する偏見や差別が強くあり、自殺防止の妨げになっているのではないかと思います。家族や友達や勤務先から適切なサポートやケアを受けることができないと、自殺に追い込まれるリスクは高まります。

(8)土屋講師が自殺対策従事者としての活動を続けてこれた原動力を知りたい

現在、「ゲートキーパー養成講習」の講師として活動をしています。受講者から届く講習の感想を読むことによって、私は自分自身が救われていることを感じることができています。私は「人を助けたい精神」を持っていません。自殺未遂者であり、友達を自殺で亡くした当事者として「自分自身を救うため」に活動しています。その精神が、原動力です。

(9)内田講師が自殺対策従事者としての活動を続けてこれた原動力を知りたい

僕が自殺対策に携わり始めてかれこれ10年目に突入するでしょうか。最初は我が国が抱える深刻な社会問題のひとつとして自殺問題に関心を持ち、高校時代からの親友と一緒に勉強するようになったのが始まりでした。2013年に自殺予防団体-SPbyMD-を設立させて、現在のような自殺予防活動を続けてこれた原動力は使命感です。幸せに生きて幸せに死ぬことのできる北海道をつくることが、僕が生まれてきた理由でもあり、僕の人生の意義でもあります。そうした使命感に満ち溢れているからこそ、自殺対策従事者としての活動を続けてこれたと思います。

(10)竹内講師が自殺対策従事者としての活動を続けてこれた原動力を知りたい

それは教え子や大学時代の後輩の自殺が一番大きいです。彼らの死をむだにしたくありません。死を選ばざるを得ないほど、彼らを追い込んだものが何なのか、これからも探り続けていきたいです。そして1人でも多くの人が、死ではなく、生を選ぶような社会を、みんなでつくっていきたいです。

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編集後記「新型コロナによる自殺者を増やさないためには」
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新型コロナは一時的に終息したように思えても必ず第2波・第3波が続いてきます。新型コロナよりも歴史の長い「インフルエンザ」や「ノロウイルス」を見るに明らかです。波のように増えてきたらガツンと対策を打ち出し、国民一人ひとりの心掛けにより、わずかな期間その波が穏やかになります。そこですかさず、GoToキャンペーンのような大々的な経済活動を全国各地で活発に盛り上げることで、生きていくために必要なお金を作り出していくことになります。もちろん、新型コロナは全く消滅したわけではないため、また第3波が訪れてしまうことは必然的です。

しかしながら、新型コロナがまた増えてしまうからといって、「全国各地を巻き込む大きな経済活動は永遠に自粛したままであるべきだ」などという主張は、国が現在よりも強固な社会保障制度を完成させていない限りはただの暴論となります。経済活動自粛とは、生きていくために必要なお金を作り出せないということです。国がしっかりと国民一人ひとりが安心して生きていけるだけの社会保障制度を整えていかない限りは、新型コロナによる自殺者増加を防ぐことは大変に困難でありましょう。ここからも分かるように、社会福祉は自殺対策のひとつです。

「今後も一日も早い終息を祈るばかり」との声、確かにそうですが、現在の第2波が終息しても必ず第3波が訪れてしますことは確定しています。筆者は自殺対策従事者として「一日も早く現在よりも力強い頼もしい安心できる社会保障制度を組みあげることを祈りばかり」との想いを持ちます。もとい、祈るばかりではなく、我々一人ひとりが国に対して呼び掛けていく、声を届けていく活動を行うことも必要なのではないかと思う日々です。そして言うまでもなく、自殺対策に積極的に携わりたいという強い気持ちを持っている部員の皆様が、悩める人たち、困っている人たちのゲートキーパーとして地道に自殺予防活動を行うことも、新型コロナによる自殺者を増やさないために欠かせない行動ではないかと思っています。

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SPbyMDグループ
共益系NPO・自予活クラブ
【当記事の文責】講師陣:内田貴之
【HP】https://jiyokatsu-spbymd.jimdofree.com/
【E-mail】jiyokatsu.spbymd@gmail.com
【拠点】北海道札幌市北区に所在
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