人生における「意味」と「価値」 [2026年03月15日(Sun)]
ヴィクトール・フランクル
〜それでも人生には意味がある
〜人生における「意味」と「価値」
テレビ放送の3回目のところで、フランクルの思想の「意味」を見ました。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5788
◆豊かさの中の「空虚」 〜「意味」とは
フランクルは、「心理的」ではなくて、「精神的」な力により、「意味ある行動」ができれば、生きていくことができる、すなわち、自殺しないといいます。
「本能的な欲求から自由になった精神的次元の力を使って「意味ある行動」ができれば、
私たちの気持ちは満たされ、生きる意味を感じられるようになります。」(注1,p71)
意味ある行動ができれば、満足感という快、陽性の感情が起きるので、生きている満足感が得られると言うのです。自殺と無関係になります。
「意味」とは、何でしょうか。
「意味とは、「私は今、この状況で何を求められているのか」あるいは「今、この世界に対して自分は何ができるのか」という問いへの答えです。
その答えは、いつの時代の誰にとっても価値のあることでなければなりません。」(注1,p71)
「自分にとってだけ価値があることではなく、普遍的に、人類全体にとって価値のあることでなければ、ロゴセラピーにおける「意味」とは言えないのです。」(注1,p71)
これが「意味」ですから、その瞬間に、職業としていることや家族のために行動すること、ボランティア活動、といわれるもの、一般的に「価値」といわれるもののためにできること、にあたります。(このことは、西田哲学でも同様です。あとで述べます。)
こう述べていましたが、西田哲学が同様のことをいう言葉を紹介します。
西田哲学における「意味」と「価値」
「自由意志は歴史的限定を越えたものである、歴史的世界の外に、我々は自由なる人格の世界を有つのである。歴史的実在は意味を有つであろう、しかしそれは意味的実在である、価値を有った実在ではない、イデヤ的実在ではない。」(『自覚的一般者に於いてあるもの及それとその背後にあるものとの関係』西田哲学旧全集5巻p336、岩波書店)
「歴史の根底には非価値的なるものがなければならぬ、歴史的事実は意味を有って居るが、価値は有っていない。若し歴史的世界の背後に神意という如きものを置くならば、それは一種の神学であって歴史ではない。我々は自然界に反して意識界を有つ如く、歴史的世界に反して価値実現の世界を有つ、叡智的自己の具体的ノエマ面を有つのである。」(同、p337)
(自己洞察瞑想療法、SIMTは、「価値崩壊の反応」をせずに「価値実現の反応」をするように実践をアドバイスして、うつ病などを治すといいます。西田哲学の原文に、「価値実現」の言葉がみられます。)
フランクルと西田哲学は同じことをいっていますが、「用語」が違うだけのように見えます。上記が西田哲学ですが、解説を加えます。
「自由意志は歴史的限定を越えたものである、歴史的世界の外に、我々は自由なる人格の世界をもつのである。歴史的実在は意味をもつであろう、しかしそれは意味的実在である、価値をもった実在ではない、イデヤ的実在ではない。」(『自覚的一般者に於いてあるもの及それとその背後にあるものとの関係』西田哲学旧全集5巻p336、岩波書店)
人はみな同じような精神の作用を行使しています。
フランクルは、身体次元、心理的次元、精神的次元といいますが、西田哲学では、浅い作用から深い作用の順にいうと、判断作用、意識作用、行為的直観などです。意識の作用は、感覚の働き、思考作用、意志作用(欲求を起こして目的を設定して行動する)に分類できます。さらにそれよりも深い行為的直観があります。人はみなこれを用いています。哲学をしらなくても、これを用いています。
判断作用が対象とするのは、「自然の世界」「自然界」です。
意識の作用が対象とするのは「歴史の世界」「歴史的世界」です。広く種々の「意味」を持つ世界です。各人から選択を待っている「意味」がある世界です。その種々の内容(「意味」)は、自分にとっての人生の現実ではないので、自分の「価値をもった実在」ではありません。
行為的直観が作用するのは「叡智的世界」です。人はみな歴史的世界の中の「意味」のうちから、自由意志を行使して、ごくごく狭い領域(意味)を選択してそこに生命をかけて、人生をかけます。すると、それは、自分にとって「価値」となります。その狭い世界が「叡智的世界」です。自分独自の「価値実現の世界」です。
家族の世界と、少数の職業の世界と、人によっては趣味の世界があります。それらは、歴史世界にある無数の「意味」から選択したものです。自分の「価値」になります。人はみな、自分の価値の世界しか生命、人生をかけません。他の世界は、無視、傍観です。
世界には、無数の職業の可能性(意味)があるが、それらは歴史の世界であり、その無数の意味の中から、一つか2つの意味を選択して、現実に自分の生きがいの世界(叡智的世界)とします。この各人の世界は、ごく狭くて(たとえば、医師の職)、他の広い意味の世界(学問、芸術、農業、ビジネス、政治、国際状況)が全く見えていません。
こういう自然界、歴史の世界、叡智的世界がありますが、ひとはみな、各人が選択した価値を実現しようとして、ごくごく狭い叡智的世界で、5,60年から百年ほどの人生を生きているのです。その個人が作るもの、価値を「叡智的なノエマ」といいます。その働きのほう(ノエシス)を「行為的直観」といいます。そのような主体を「叡智的自己」といいます。
西田の別の原文です。
「歴史の根底には非価値的なるものがなければならぬ、歴史的事実は意味をもって居るが、価値はもっていない。もし歴史的世界の背後に神意という如きものを置くならば、それは一種の神学であって歴史ではない。我々は自然界に反して意識界をもつ如く、歴史的世界に反して価値実現の世界をもつ、叡智的自己の具体的ノエマ面をもつのである。」(同、p337)
自己洞察瞑想療法、SIMTは、このような西田哲学の実践論を、具体的な観察と行為のしかたを「精神療法」として、構成したものです。ひとことで、いうと、長い人生にはつらい出来事があるが、「価値崩壊の反応」をせずに「価値実現の反応」をするように生きていくということです。
支援者は、そのような生き方の哲学と実践方法をやさしくアドバイスして、うつ病などを治す支援をするのです。人はみな自分の価値が実現すると「幸福」だという感情が生じます。だから、他の人の人生を不幸にしてはいけません。「価値実現の行為」は、自己と他者の価値を崩壊させないような行為でなければなりません。ここに、「倫理的要請」が含まれています。
第1世代の「マインドフルネス」は、そのような「倫理的な配慮がない」と批判されています。しかし、西田哲学の実践は、世界中の人類が「共生」していこうという壮大深遠な哲学があるのです。日本には、深いマインドフルネスの哲学があるのです。
このような哲学は、フランクルの哲学に類似します。舶来ものだけを重視せずに、日本にある宝、西田哲学や鈴木禅哲学を生かしていただきたいものです。
もう少し、続けます。
【関連記事】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/1954
★フランクルの「精神次元」が、西田哲学の「行為的直観」
〜これが、日本のうつ病を治し自殺防止に貢献できる
だが理解する専門家はいなかったが、、、、。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4902
★鈴木大拙の「禅者の共生」の思想
https://blog.canpan.info/jitou/archive/2325
★深い自己の哲学がある「仏教」「禅」のはずが
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5450
★西田哲学も先細り
【注】
(注1)NHKこころの時代 テキスト 『ヴィクトール・フランクル 〜それでも人生には意味がある』勝田芽生、NHK出版
(注2)大田健次郎 『うつ・不安障害を治すマインドフルネス』佼成出版社
(注3)フランクル『夜と霧』池田香代子訳、みすず書房
(注4)テキストの第5回で「品格のある人間」「ない人間」がもう少し詳しく述べられます。やはり、フラ ンクルと西田哲学は類似することがわかります。
(注5)フランクル『人間とは何か』山田邦男監訳、春秋社
(注6)SIMT=Self Insight Meditation Therapy。自己洞察瞑想療法。 公刊された書籍は、3つです。ほかに、マインドフルネス瞑想療法士の 講座に使用されるテキスト が多数あります。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5348
★自己洞察瞑想療法、SIMT ブームになった「マインドフルネス」(第1世代マインドフルネス)とは、違います
(注7)ブームの「マインドフルネス」は、各人の意味、価値の場面での観察ではありません。「無評価」ですむ、瞑想時、歩く時、食べる時です。「身体」レベルの浅い意識の「自己距離化」です。「自己超越」の場面が多い人生局面では、できません。外国では、社会問題の見てみぬふりの助長など批判が起きています。この放送の第3回目のロゴセラピーの説明(自分を見すぎるな)を見ても、そのような印象を受けます。それを知ったうえで、限定した場面だけで行うべきです。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5750
【目次】ヴィクトール・フランクルと後期西田哲学の実践論
〜それでも人生には意味がある
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Posted by
MF総研/大田
at 22:24
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マインドフルネス心理療法
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