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「幸福の哲学」と類似 [2026年02月10日(Tue)]

ヴィクトール・フランクル
 〜それでも人生には意味がある

第4回 人生という「砂時計」
〜(その4)過去は保存されている
 「今、ここ」しかないという教えとの関係は?

 フランクルの愛するひとがいなくても人生の価値は豊かであるという哲学思想を検討していて、ロゴセラピーやSIMTのような精神療法には以下のことが浮き彫りになってきました。家族がうつ病になったり、自殺されたりを予防するヒントがありそうです。

A)「愛する家族がいても自殺される
 →ブログ5843
B)人生の「価値」は重要であるが、「価値」にも執着しない
  →ブログ5844
C)他の哲学者が「幸福の哲学」を述べているが、
 深い哲学とロゴセラピーやSIMTは類似
  →この記事 ブログ5845
D)孤独・孤立から起きるうつ病、自殺の防止対策

C) 「幸福の哲学」と類似

 幸福とはどういうことかについて、多くの哲学者が書籍を書いているのですが、次の哲学者は真剣に、この問題を考察しています。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4459
【目次】幸福の哲学

 誰もが、一般的に「幸福とは」と述べているのですが、この著者は、次のようにいうくらいに考察が真剣です。

 「私が最も嫌悪するのは、生の安全で怠惰な継続が保証された環境において何にも真剣に向き合わずヘラヘラと笑い、そうした安全地帯から、何かに必死で向き合うひとを「お気の毒に」と嘲笑するひとびとである(とはいえ私は、そうした生き方をしていることそれ自体が彼らあるいは彼女らに対する最大の「罰」だ、とも考えているのだが)。」(注6,p267)

 この連続記事のなかの次の記事で紹介したことです。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4462
★快楽、欲求充足、客観的な人生のよさの3つの共振

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4465
★超越的幸福

 超越は、フランクルの放送の5回目でみます。それはおいて、この記事の最後に次のように述べました。

 「人生の生きがい、人生の価値、自分で選択した一つのものに真剣になるのが幸福です が、しかし、執着しすぎると絶対視してかえって自分や周囲を傷つける、自分の人生価値 をも相対化して見ることができるのがいいと。執着絶対視すると、それから外れる領域の 問題解決を無視傍観してしまいます。本人にとっても、価値を絶対視すると、予測できない 人生の出来事で、それがなくなった時(定年退職、解雇、病気、事故、親の介護など)に、 家庭崩壊、違法薬物、自殺などが起こり得るでしょう。そこで、生涯、幸福であるためには、 超越の幸福の哲学とアイロニーの幸福の哲学があるわけです。真剣でない哲学者はこれ を誤解して伝えるのです。アイロニーの生き方とはどういうのでしょうか。次で見ます。」

 そこで、次です。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4467
★アイロニーを伴った生き方

 これが、フランクルがいうように、一つの価値が重要ではあるが、絶対視せず、状況に応じて、柔軟に移っていくことをいいます。現在の価値に執着しすぎると、災害、事故、病気、家族の何かの大きな状況などで自分や家族の生活が大きく変化して、従来の価値(職業など)に執着が強いと、その価値を遂行できなくて苦悩が強まり、うつ病になり、自殺のリスクもあります。
 こういう場合、環境の激変を受けいれて、これまでの価値を捨てて、新しい価値をさがしてもらうことで、残りの人生を生き抜いていきます。
 高齢になって、年齢やがんの発症でも、創造価値への執着ではなくて、新しい体験価値などを探すことになります。

◆ロゴセラピーやSIMT
 こういうところが「アイロニーを伴った生き方」でしょうが、フランクルやSIMTに類似していると思います。フランクルとSIMTは、「精神療法」です。この価値への移行がうまくいかずに、うつ病になって、希死念慮が起きている深刻な状況にある患者に対して、うつ病、希死念慮を治療する支援をするのが「精神療法」の使命です。

 理屈は簡単ですが、実際の臨床治療は、かなり難しいと思います。メンタルな治療支援がやさしいのであれば、がん患者が自殺するはずがありません。精神療法者(精神科医や心理士など)は、がんは治しません(それは、がん治療の主治医の使命です)が、うつ病の症状、自殺念慮を治療するのは精神療法者の使命です。
 その時に、SIMTならば、次のようなことが行われるでしょう。

 やはり、価値の切り替えをアドバイスするでしょう。「価値」については、何を苦悩してうつ病になったのか、自問してもらいます。仕事の価値(創造)ができなくなったからか、「死ぬ」という「存在価値」の消滅の恐怖からでしょうか。
 やはり、「体験価値」をさがし、いつも「今」を生きること、それを体験すること(新しい価値実現)を喜びとすることが第一の選択でしょう。
 また、「死」の問題であれば、現在を体験価値に専念する時は、未来の死は意識されないことを深く観察するでしょう。
 また、自己は超越(絶対者)に包まれていることを信じたいという超越の問題に取り組む希望のあるひとには、とりくんでもらうでしょう(注3)。西田哲学による超越の哲学(フランクルの放送は第5回で、ヤスパースの放送は2月23日)を説明しての支援は、日本では宗教者は扱わないことが多いので、それに使命感を持つ人材が支援できるのではないでしょうか。そういう人材が支援しないと「死」を意識した終末期患者のメンタルケアがいつまでもなされません。
 山口尚氏は、超越的幸福を述べているので、これでもいいですし、後期西田哲学によるSIMTも、その領域もあります(注3)。
 フランクルは、法律による制約や宗教の影響が強い国でのロゴセラピーを開発したので、超越での手法は言わなかったようですが、彼も超越について語っています。第5回放送で検討します。

(注1)NHKこころの時代 テキスト 『ヴィクトール・フランクル 〜それでも人生には意味がある』勝田芽生、NHK出版

(注2)大田健次郎(2013)『うつ・不安障害を治すマインドフルネス』佼成出版社
SIMT:Self Insight Meditation Therapy(SIMT)、自己洞察瞑想療法

(注3)大田健次郎『「死」と向き合うためのマインドフルネス実践』佼成出版社

(注5)フランクル『人間とは何か』山田邦男監訳、春秋社

(注6)山口尚『幸福と人生の意味の哲学』トランスビュー



https://blog.canpan.info/jitou/archive/5750
【目次】ヴィクトール・フランクルと後期西田哲学の実践論
 〜それでも人生には意味がある
Posted by MF総研/大田 at 07:09 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL