• もっと見る
«ロゴセラピーの「自己超越」の手法に類似するSIMT | Main | 100分de名著」では、ドイツの哲学者、ヤスパースも深い「超越」を言う»
愛するひとがいなくても人生の価値は豊か [2026年02月06日(Fri)]

ヴィクトール・フランクル
 〜それでも人生には意味がある

第4回 人生という「砂時計」
〜(その4)過去は保存されている
 「今、ここ」しかないという教えとの関係は?

愛するひとがいなくても人生の価値は豊か

 前の記事に、こう述べました。
 「以上のように、フランクルは、人生における「愛」の特別な意味を詳細に分析しました。しかし、「愛」の機会を持たなかったと思うひとが幸福ではないということではないと、フランクルは言っている。この言葉を重視したい。」

 愛は、特別の意味、人生価値を持つことをフランクルは分析しました。しかし、「愛」は最大の機会ではないといいますので、「愛」にも執着してはいけないのです。

 「愛は実際には、人生を意味で充たす可能な機会の一つにすぎないのであり、決してその最大の機会なのではない。 もし人生の意味が愛の幸福を体験するか否かということにかかっているのだとすれば、われわれの存在が悲しいものになることもあるだろうし、またわれわれの人生も貧しいものになると言わねばならないであろう。」(注5,p235)

 「それは創造価値の実現の優位ということを考えるだけで明らかである。愛したり愛されたりすることのない人間であっても、それゆえ、その人生を最高に有意味に形成することができるのである。」(注5,p235)

 「愛」に執着すると、かえって、うつ病になり不幸な結果にもなるでしょう。 フランクルは、愛、特定の人間に対する「愛」でなくても、種々の物、サービス、芸術などを 社会に向かって創造していくという尊い創造価値があると言います。

 このことは、うつ病による自殺を防止する「精神療法」には、次のように自己洞察瞑想療法SIMT(注2)においても、重要なポイントです。

 確かに、愛する家族を亡くして、重症のうつ病になり、薬物療法でも治らず、深刻な自殺念慮が持続する場合があります。こういうかたの場合、私は、次のように支援しています。

 SIMTの全体のあらましを説明します。

@ 脳の部位(眼窩前頭皮質など)に炎症が起きているらしいという神経生理学

A 意志作用と価値にむけての行動の訓練(これがSIMTの核心ですが)が炎症を回復する(これまでのSIMTの実際)こと。現在までの研究で公表されている最新の成果(眼窩前頭皮質などの炎症説)をもとにした治る理由の推測を説明。

B 愛する人を亡くしたことはとてもつらいことだが、その亡くなった人も、あなたの(今生きている)他の家族もあなたが苦しむのを喜ぶはずがないから、うつ病を治しましょう、という。

C それで、暫定的に「1年かけて病気を治す」または、「これならできる行動」ということを「価値」にしましょう、といい、自分で「価値」を決めてもらう。

D 現在の日常生活で、症状や家族との会話などで、不快な感情が起きるが、これまでの行動(寝る、ひきこもる、紛らす行動、悩むだけの思考、など)は意志作用のうち、価値崩壊(=治らない)の「目的」の行動だと心得て、それではなくて、家族や社会のためになるささやかな行動や運動をすること(「行動活性化手法」)を「目的」として、治るまで、生活しましょう、という。

 「行動活性化手法」は、注2のテキストp50に、11ほどの実例をあげています。 重症のひとでも、できる行動で、自分で選択してもらいます。「これならできる行動」として、「散歩」「水泳」や「トイレ掃除」を選択したひとがいました。症状がつらいが、まぎらし行動をしたり寝るという行動をせずに、暫定的に決めた「治るまでの価値」としての行動を実行してもらいます。

 こうしたことを念頭において、価値実現への「意志作用」としての「行動」を繰り返し実践してもらうと、たいていのうつ病が完治しました。

 フランクルがいうように、愛するひとを亡くしたことによる「自殺念慮」を、価値実現の行動(=創造価値や体験価値といえる)を繰り返すことで、うつ病が治るのです。

 重症のうつ病を治す「精神療法」の視点からでも、次のようなこと、フランクルがいうように、創造価値、体験価値の「優位」がみられます。

@「愛は実際には、人生を意味で充たす可能な機会の一つにすぎない」
A「決してその最大の機会なのではない」
B「創造価値の実現の優位」
C「愛したり愛されたりすることのない人間であっても、それゆえ、その人生を最高に有意味に形成することができるのである。」

ということは確かであると言えます。

 さらに、このことは、以下のことと、フランクルのロゴセラピーやSIMTが精神療法として効果があることを示唆すると思うのです。次の記事で述べてみます。

@ 愛する家族がいても自殺される

A人生の「価値」は重要であるが、「価値」にも執着しない

B他の哲学者が「幸福の哲学」を述べているが、深い哲学とロゴセラピーやSIMTは類似

C孤独・孤立から起きるうつ病、自殺の防止対策

(注1)NHKこころの時代 テキスト 『ヴィクトール・フランクル 〜それでも人生には意味がある』勝田芽生、NHK出版

(注2)大田健次郎(2013)『うつ・不安障害を治すマインドフルネス』佼成出版社
SIMT:Self Insight Meditation Therapy(SIMT)、自己洞察瞑想療法

(注5)フランクル『人間とは何か』山田邦男監訳、春秋社



https://blog.canpan.info/jitou/archive/5750
【目次】ヴィクトール・フランクルと後期西田哲学の実践論
 〜それでも人生には意味がある
Posted by MF総研/大田 at 09:19 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL