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【セッション6の意図】 価値実現に影響する「本音」の意識化 [2026年01月14日(Wed)]

マインドフルネス心理療法SIMTの構造

【セッション6の意図】 価値実現に影響する「本音」の意識化

 西田幾多郎が、自己、世界の哲学を研究するのは、こういうことです。  ひとを悲哀においこむもの、天災災害のほか、力あるものによる理不尽な行為もある。
 力あるものが、ハラスメント、いじめ、権力による自由の抑圧、殺戮、・・・。加害者の価値についての思考がそうする。

 また、自分自身も思考によって苦しめることがある。精神疾患が治らないと、苦悩の思考を渦巻かせる。そのような思考は、生理学的にはストレス反応を起こして、症状が悪化する。
 自分や他者を苦しめる欲求、行動の前段階にあるのが、思考である。何かの出来事があって、不快な内容の思考を回転させると、ストレス反応によって、脳内に炎症をひきおこす。

◆意志作用のプロセスで「思考」が重要な役割

 意志作用は、価値実現の目的を設定しての行動と、価値崩壊の目的を設定しての行動がある。
 その目的設定の前に思考している場合があるが、内容が、価値実現の思考・価値崩壊の思考がある。

 意志作用のプロセスで、思考、感情が起きる。思考と感情をどう処理するかが、意志作用に大きな影響を及ぼす。そこで、思考に影響を及ぼす「本音」を意識しないで思考、行動しているが、本音を意識化して、価値実現の行為に影響させて、苦痛を軽減するスキル(内面のスキル、プラクシス)を身につける。
 思考と本音の観察が、精神疾患の治癒に関わることを理解して、治療を効果的にするのがセッション6の意図である。次のようなことを観察して、価値実現の思考を身につける。

 思考は、「世界創造」の偉大な行動もするが、自己や他者の価値を崩壊することもする。
意志作用、行為的直観の行為が価値実現か崩壊かということに思考が重要な役割を果たす。従って、精神療法には、思考の影響を理解し、思考を価値実現の方向に使うことができることが重要である。

 よく知られているように、否定的「思考」は、強い感情(怒り、悲しみ、不安、恐怖など)を起こして、行動、すなわち、意志作用の目的設定に大きな影響を与える。
 感覚によって、世界の情勢を知る。そして、考えて、こうしようという欲求を起こして、目的の設定、行動の順で外に向かって、発言または行動を表出するからである。

(図)無意識で発動の本音を意識化
KN-02d-SIMTセッション6b.jpg

◆無意識的に発動している評価基準=「本音」の意識化

 人は、みな、好き嫌いなのものが違う。各人の好き嫌いの評価基準を「本音」という。西田哲学の用語ではなく、筆者が命名した用語である。仏教で観察する煩悩(貪瞋痴)が含まれる。
 西田哲学では、「独断偏見」が充満しているという。
 人はみな、自分の価値の世界を持つ。それが生きがいであるから、自分の価値の遂行に必死となり、執着して、共生の思想、哲学を重視せずに、他者の価値を崩壊させる行動をしがちである。学者でさえもそうである。オルテガ、はじめ、多くの人が指摘している(注7)。仏教、禅、マインドフルネスでさえもそうである。すぐれた他者の実践、研究を快く認めようとしない。西田幾多郎がいうように独断偏見が充満している。そのために、多くの人が苦しみの中にある。

 幅広く、各人の見る、考える、行動の瞬間に発動される評価基準を「本音」という。SIMTの独特の概念である。従来、無意識的に評価基準を発動させて、思考、欲求、行動をしているが、それを「今、ここ」の見る、考える、目的設定、行動、行動直後の瞬間に、意識化して、世界に向かっての発語、行動に影響させる練習をするのが、SIMTの課題である。セッション6から、それが重要な実践となる。
 見たり聞いたり、考えたり、行為したりすると、感情が起きる。感情が起きるということは、自分の評価基準が発動したのだとその瞬間に意識する。ふつう、ひとは、そういう本音を無意識に発動させているが、これを意識上にあげることを習慣化するように心がけるのがSIMTである。
(本来、大乗仏教もそうなのであるが、日本の仏教は、この重要なことを教えない。)

  第1次的に、感情が起きるのは自然であり、当然である。だが、それに対応した発言、行動は、価値崩壊にも価値実現的にも選択できるのが人間である。感情が起きた時に、背後の本音は何かを意識化する。感情が起きたのは、自分の評価基準によるから、自然であると瞬間的に受容して、ただし、相手への反応、すなわち、言葉や行為は、自分の価値も相手の価値も崩壊させないように(「共生」だ)しようと、その瞬間に努める。SIMTでは、本音を意識上に上げる「本音の意識化」を練習する課題を治療期間中にすすめる。
 本音の意識化は、完治後の生活(家族との対話、職場で)でも継続することが再発防止に効果的である。

◆不快な感情が起きても、その反応は一律ではない、価値実現の決断もできる

 自己は世界の中で生きる。そして、家庭や職場という集団の中で生きていくのである。家庭や職場の集団の中で、自分ができること(7つの価値、フランクルの創造価値、体験価値)で働いていく。そうして、世界に貢献していく、すなわち価値実現をする「責任」を持つ。だから、不快な感情を意識したら、本音を意識化して状況を評価して、どのような、意志作用、行為的直観で反応するか決断するのである。

 これが、セッション6以降、生涯実践することが求められる実践である。本音の意識化が熟練すると、やがて、価値実現行為が自己や本音が意識されずに行われるようになる。

(注1) 大田健次郎(2013)『うつ・不安障害を治すマインドフルネス』佼成出版社

(注2)10段階を一覧表にしたのが、次である。
http://mindfulness.jp/katudou/2023-10session.pdf

(注4)ポイエシスとプラクシスは、無評価ではいけない根本的な説明にもなる重要な西田哲学の実践指針である。次の記事で説明する。
 https://blog.canpan.info/jitou/archive/5821

(注5)7つの価値は、創造価値か体験価値になる。
 https://blog.canpan.info/jitou/archive/5552

(注6)人はみな、つらい状況であっても自由意志で決断して、価値の世界を構築していける存在であると西田はいう。セッション7で説明したい。

(注7)独断偏見を行使するエゴイズムの専門家。政治、宗教、学問、ビジネス。次のように多くの学者が指摘している。うつ病の精神療法、自殺防止対策になるはずの、仏教、禅、マインドフルネスの領域にも、効果がありそうな少数派の説が排除されている。
 独断、偏見、我執に気が付き、抑制することが、自己と他者が共生できる社会となるのだという。総じて、生きる指針は「至誠」だという。これを別の記事に述べておく。
 https://blog.canpan.info/jitou/archive/5824

  西田がいう独断我執は、たとえば次の文である。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5824
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5814
【目次】マインドフルネス心理療法SIMTの構造

Posted by MF総研/大田 at 09:41 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL