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第1回の(10)重い精神疾患の治療支援は何か月かかるのか [2025年11月12日(Wed)]

ヴィクトール・フランクル
 〜それでも人生には意味がある
第1回の(10)重い精神疾患の治療支援は何か月かかるのか
 〜フランクルのロゴセラピーが日本に多い自殺をなくすために

◆精神因性神経症(実存的空虚感)やうつ病(自殺念慮のある)

 それでは、「希死念慮」のある、「うつ病」はどうでしょうか。それから、生きる意味が感じられない「実存的空虚感」で苦悩する精神疾患はどうでしょうか。 日本に多い「ひきこもり」のなかにも、これに該当する人々がいるかもしれません。こういう種類の精神社会問題に、 フランクルは、治療法を開発したのだと思います。

 ロゴセラピーでは、「逆説志向」という「治療手法」があるといいます。しかし、自殺念慮者に、「逆説志向」は、禁止です。 (注3,p428)

 人間の心の働きには、浅いものから深いものまであって、苦悩も浅い段階から深い段階まである。 その苦悩の「治療」は、その段階にあったものでなければならないのです。
 身体の病気の症状である「咳」で例えましょう。「咳」がある病気として、風邪、インフルエンザ、コロナ感染症、肺炎、間質性肺炎があるとします。 医師は、どの病気による「咳」であるか、検査、診察して、どれであると診断して、ふさわしい治療法を提供するでしょう。

 それと類似します。精神の病気も、どの深さの問題から起きている「苦悩」であるか、ぴったりあった「治療法」=精神療法でないと解決しないのです。

 「自殺念慮」のある人には、ロゴセラピーでは、別の「治療手法」を用いるそうです。
 また、心因レベルの精神的苦悩ではないものがあり、その苦悩には、心因レベルの心理療法では治せないというのです。
 心を病む人、精神疾患、神経症という、の患者のうち、心因性レベルではないものがあるというのです。

 フランクルは、神経症の2割が精神因性だといいます。 (注3,p10,p422)
 神経症の2割が無意味感=実存的空虚感からです。 (注3,p35)

  この深い苦悩は「実存的空虚感」といいます。この深い精神疾患を「治療する手法」は、ロゴセラピーでは、  「逆説志向」ではなくて、 「意味を見出す能力を与える」支援手法です。(注3,p422)

 人生に意味を見出す能力というのですが、フランクルは、「人生の意味」、「苦悩の意味」、「労働の意味」、 「愛の意味」を説きます。これらを失うと、空虚感におそわれ、ときには、自殺念慮が起こります。
 「人生の意味」の中で、3つの価値カテゴリー(創造価値、体験価値、態度価値)を説きます。
 「労働の意味」の中で、創造価値は職業労働と一致といいます。(注3、p207)。たいていの人が、労働によって人生の意味を見出します。
 「愛の意味」は、家族の愛です。創造価値、労働の意味とは、次元の違う「人生の意味」を与えます。労働は、経営者によって働く行為を愛されます。存在まるごとを愛してくれません。しかし、家族の愛は、行為でなく、存在まるごとを愛します。愛を感じるひとは、自殺のリスクが低くなります。
 フランクルのロゴセラピーの真骨頂は、「苦悩の意味」のところでしょう。不治の病気、不治の身体障害を負ってしまった人(たとえば、三浦綾子のように)の苦悩、明日死ぬかもしれない重いがんの人の苦悩など。労働の意味では救われないし、愛する意味を持っていても、押し寄せる「苦悩」。
 三浦綾子は、宗教者、キリスト教の、支援を受けながら、闘病を続けたのですが、 ロゴセラピーでは、精神療法で、宗教者でないから宗教でなく、そういうひとにも精神療法で、生きる意味を見出す支援をするといいます。

 「彼らが何らかの理由で得ることのできなかったものが無くても生きてゆくことができるばかりか、 まさにその中に望ましい人生の一片の意味を見つけねばならないこと、そして自らの不幸を内面的に克服し、 その不幸において成長しうること、たとえ何かが運命的に与えられていなくても、その自らの運命に打ち克つことができること、このようなことを彼らが示して見せるように、 彼らを導くことが必要なのである。」(注3,p123)

 このような、ロゴセラピーですので、治療期間、支援期間は、短いケースや長いケースがあるでしょう。

 こういう深刻な精神の苦悩をかかえるひとを支援するロゴセラピー。テレビ放送で紹介されます。
 私は、日本にある西田哲学を基本として、マインドフルネス心理療法、SIMTを研究してきたが、態度価値のような、詳しい説明がない部分は、フランクルで補っていけば、広く、深く、日本の精神社会問題の解決支援ができそうな気がします。
 西田哲学には、宗教レベルの苦悩まで述べられています。そこに宗教レベルの苦悩(たとえば、がん患者の死の苦悩、カルトによる苦悩、カルトへの苦悩など)の解決の精神療法もあると思います。



(注1)NHKこころの時代 テキスト
『ヴィクトール・フランクル 〜それでも人生には意味がある』勝田芽生、NHK出版

(注2)SIMT=Self Insight Meditation Therapy。自己洞察瞑想療法。

(注3)ヴィクトール・E・フランクル『人間とは何か 〜実存的精神療法』山田邦男監訳、春秋社

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5750
【目次】ヴィクトール・フランクルと後期西田哲学の実践論
 〜それでも人生には意味がある
Posted by MF総研/大田 at 10:21 | 孤独孤立自殺うつ病不安症 | この記事のURL