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何ができるのか(2)  〜 子どもの自殺を止めるために [2025年08月26日(Tue)]

何ができるのか(2)  〜 子どもの自殺を止めるために

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5523
★何ができるのか(1)  〜 子どもの自殺を止めるために

  子ども・若者の自殺をなくすためには、何ができるか、渋井哲也氏。

 「筆者自身は、目の前の人の自殺を止めようとしても意味があるのかと思っている。というのも、「いま」自殺を止めることができても、自殺を止め続けることができるかは疑問だからだ。 24時間365日、ずっと一緒にいることもできない。 そのため、自殺の背景となった問題を解決できればよいが、その影響で形成された心理的な問題のケアもしなければならないだろう。」(A,p235)

 ここに、重要なことが指摘されている。炎症性サイトカインで、脳に炎症が進行すると、うつ病という診断基準に会うようになり、社会的に生き抜いていく人生価値の実現で幸福感を得るという働きが低下して「希死念慮」がおきる。それは、なかなか消えない。

【課題1】自殺の背景となった問題を解決するように援助

【課題2】その影響で形成された心理的な問題のケア

課題1 自殺の背景となった問題を解決するように継続した援助事業

 相談を受けて、そのつらさをよく聴きとり、そして、そのつらさの原因となっていることが、 相談で解消したのであれば、相談の効果があったことになる。
 しかし、容易に解消しない要因であることがわかったら、要因を解消する支援をしなければならない。従来の相談事業で不十分であるのは、そこだろう。

 子どもの場合、いじめ、虐待、厳しい指導、オーバードーズ、その他が、相談者のつらい要因とわかったら、その要因を解決するために継続した支援が必要だろう。

 大人の場合、たとえば、ライフリンクの調査によって、自殺の 危機要因が明らかになった。

https://lifelink.or.jp/Library/whitepaper2_1.pdf

 p21ページに「危機の進行度」の図があるが、過労、事業不振、職場の環境、 身体疾患、人間関係、失業、負債、家族の不和、生活苦などが自殺の危機要因とされている。

 相談を受けて、どの要因であるかわかったら、実際、相談者がそれを解決する行動をするために、支援を充実させることだ。上流の支援である。

課題2 【課題2】その影響で形成された心理的な問題のケア

 【課題2】は、下流の支援である。相談者は、そのつらさの要因によって、心理的に脆弱性を抱えている。それが、1,2回の相談で、 正常化して、もう自分で生きていけるという心理状態になるのであれあばよい。 しかし、・・。
 背景に「疾患」がある場合、1,2回の相談で、「いきぬいていく心理」になるだろうか。、そうではない。

 警察庁のデータでは、自殺したひとが、精神疾患、および、身体疾患であったひとがいる。 うつ病、統合失調症、がん、アルコール依存症、摂食障害、その他の健康問題となっている。 病名が把握されていなくても、うつ病になっていた場合も多いはずである。 医者の診断を受けていないから、「うつ病」が原因とカウントされないだけであろう。

 警察庁の調査で、「うつ病」とされたケースが多いが、それは、うつ病と精神科医の診断を受けて、治療を受けていたのに、自殺したのであり、これが深刻な社会問題である。
 薬物療法での「完治割合」が低いと言う社会問題である。
 がんや他の疾患の場合、もう医者の治療は受けているはずである。それなのに、自殺するのである。だから、その疾患のつらさ、死の恐怖などからうつ病になって自殺するのであろうが、そうしないで、病気であろうとも、自殺しないで生き抜いていくような心理的なケアの対策が求められる。「相談」ではなくて、いきぬいていく心理を持ち続ける支援である。一定の年数の継続的な支援が必要であろうと推測する。
 私の30年にわたる実際支援の体験では、うつ病になって希死念慮まで起こり、薬物療法だけでは、うつ病が治らなかったひとは、自己洞察瞑想療法(SIMT)では、1年近くかかって、自立していく心理になった。新しい精神療法を研究開発すべきなのである。この対策が一般国民に見えない。
 がんや難治性の障害・疾患、などの場合、治る治療法がない時代(いつかは、治療法が完成する時代がくる)には、死(自殺によらずに)の間際までの継続的な心理的なケアの支援事業が望まれる。

 ここが、全く、弱いだろう。医師の治療技法は、主にセロトニン神経に作用する薬の処方が中心(注1)であり、心理カウンセラーの支援技法は、「傾聴」が多いようだが、それでは、自殺念慮のある重いうつ病は治らず、自殺は防止できていない。渋井哲也氏が、従来の専門家では不十分、「古い」という。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5706
「子どもの自殺を減らすことは、既存の統計やデータをベースにした施策ではできない。 同時に、既 存の施策の中で提言や政策実行をしてきたプレイヤー(有識者など)では、限界があることを示してい る。 大きく転換するにはプレイヤーを変えて、あるいは加えて、新たな視点で政策に取り組む必要がある。 本来は、そのための 「こども庁」であり、「子どもの自殺対策室」のはずだったが、 いまだに、古いプレ イヤーの枠組みを超えていないように思える。」(A、p220)

(注1)
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5458
★メンタルクリニックが「治らない患者」であふれ返る深刻な理由

【関連記事】

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https://blog.canpan.info/jitou/archive/4848
★うつ病の治療法の現在と問題

 この問題は、長期間続いている問題である。

2009年8月5日に開始したのが次の記事である。16年前である。対策はどれほど進化したのだろうか。
 学問は、ほとんど進化していないのではないのか。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/1781
【連続記事】大人になると違法薬物依存(これは犯罪)の深刻な問題

(続く)

(参照書籍)
A)渋井哲也『子どもの自殺はなぜ増え続けているのか』集英社新書、2025年5月

B)末木新『「死にたい」と言われたら 〜 自殺の心理学』ちくまプリマ―新書、2023年6月

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Posted by MF総研/大田 at 17:48 | 自殺防止は医者以外も | この記事のURL