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(4)精神療法と宗教の違い [2024年12月13日(Fri)]
医師による宗教への配慮・宗教者による精神療法への配慮

精神療法と宗教の役割と境界
 (4)精神療法と宗教の違い

 ナチスの収容所に収容されたが、生き残り、ロゴセラピーを普及させた精神科医ヴィクトール・フランクル。深い宗教と精神療法の違いを見ている。
    【参考書】
     『人間とは何か 実存的精神療法』ヴィクトール・フランクル、山田邦男監訳、春秋社

宗教と精神療法は別のもの

 フランクルによれば、結局、宗教と精神療法は、別物である。

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 「もちろん、だからといって、精神療法の目標と宗教の目標とがあたかも同一の存在次元にあり、同程度の価値を有しているわけではない。むしろ、心の健康のレベルと魂の救済のレベルとは別ものである。つまり、宗教的人間が突き進む次元は、より高い次元への突破は、しかし、知識においてではなく、信仰において生起するのである。」(p386)

 「精神療法の目標は心の治療である。これに対して、宗教の目標は魂の救済である。 これら二つの目標設定がそれぞれどれほど違っているかは、次の事実から明らかであろう。 聖職者は、場合によっては、信者をそのことでますます強い緊張へと陥れる危険をまったく承知しながら、信者の魂の救済を得ようと苦心するであろうーーー聖職者は信者にそうさせないで済ませることはできないであろう。というのも、聖職者にとっては、いかなる精神衛生上の動機も、最初から、かつ根本的に問題にならないからである。」(P385)

 フランクルによれば、元来、医師は、精神疾患の治療であり、魂の配慮はしない。宗教は配慮しない。

 聖職者は、精神疾患は考慮せず、信仰、超越の問題を扱う。聖職者を訪問してくる者が健常者であるか、精神疾患の患者であるかは関係なく、宗教で応える。

 こうであれば、宗教者や医師のもとにいくひとは、注意が必要である。 がん患者などの「死」についての苦悩は、医師は扱わないだろうと思うしかないだろう。 宗教者が扱うことになるが、キリスト教の聖職者はキリスト教で支援するだろう。「ただ坐禅」しかいわない宗教は、超越ではないので、支援できないだろう。「無評価で観察」の瞑想のマインドフルネスと同じであるから、二元観であり、「科学」の領域の範囲であるから。

 現在は、がん患者の病床では、魂の問題は、患者が信仰がないので、医師も仏教の聖職者も充分な支援がされていないのではないか。 キリスト教の聖職者は、信者が信仰があれば、喜んで支援しているだろう。

 日本では、がん患者による自殺が多いので、医師か宗教者か、対策を検討すべきである。

 うつ病の希死念慮の問題は、どちらが扱うのだろうか。
 うつ病になった人の「死」の問題は、どう支援したらいいのであろうか。告知後、1か月以内の自殺防止の支援、および、闘病中に悪化していく、薬だけでは自殺念慮がなくならない患者の支援がある。今後も無策であり続けるのか、どちらか、または、新しい人材ができるか。

自己洞察瞑想療法、SIMTの場合

 第2世代のマインドフルネスを研究開発すべきであるが、今は、みな、自己洞察瞑想療法、SIMTとはよぶが、宗教以前と宗教レベルがある。
 うつ病、不安症、PTSD、痛み、などの患者へのセッションは、宗教レベル以前しか提供しない。 「治すこと」が目標だから、1〜2年の期限つきである。宗教以前の脳神経科学などを考慮した、宗教ではない精神療法である。

 宗教問題で来るひとは、別のセッションで扱う。治療ではない。がんなどの治療は、全く、医師の治療をすすめる。並行して、宗教的な探求、超越、絶対に取り組みたい人が対象である。副次的効果として、フランクルがいうような、うつ病の予防の効果はあるようである。 「悟る」という体験まで起きなくても、死の直前まで、真剣に取り組む態度がみられた。
(【参照】大田健次郎『「死」と向き合うためのマインドフルネス実践』佼成出版社)

ほかの手法、ほかの人材も研究すべき

 SIMTは、西田哲学の実践化の一つである。一つにすぎない。もっといい方法もある。この問題は、医師は扱わないだろうから、宗教者や新しい人材(心理職、哲学者か)がこの領域に参加してほしい。
 「超越」の領域であろうと、宗教教団の宗教者だけがわかるというわけではない。 私は、どの教団にも属していない、宗教者ではない。在家である。実は、大乗仏教が、元来、在家のものである。大乗経典でも、宗教者でない在家が活躍している。
 日本には、「超越」をいう小説家(遠藤周作、三浦綾子など)、芸術家(東山魁夷、金子みすゞ、茨木のり子など)も多い。それで救われる患者もいるだろう。

(編集中です)

【参考】

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2614
★宗教レベルのマインドフルネスと宗教以前のマインドフルネス


https://blog.canpan.info/jitou/archive/5527
【目次】医師による宗教への配慮・宗教者による精神療法への配慮
Posted by MF総研/大田 at 17:21 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL