(7)盤珪の利他の方法(3) [2024年12月02日(Mon)]
【書籍紹介】深い禅に関係する昭和の時代の書籍
『禅門の異流 盤珪・正三・良寛・一休』
〜解説 竹村牧男(東洋大学名誉教授)
(7)盤珪の利他の方法(3)
盤珪の禅が現代に活用できるかもしれない。最近、再刊された本書でみていく。
『禅門の異流』秋月龍a、講談社学術文庫
秋月龍a、講談社学術文庫、2024年9月10日 (Pがそのページを示す)
盤珪の利他の方法(3)
大乗仏教の核心の一つに「利他」がある。 これは、悪をしない、善をする、他者の利益のために働くことであった。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5498
現代の「禅」はこれを言わないように見える。ただ坐禅するとか、公案を見よという。 これが人びとの苦の救済になるのか、わかりにくい。だが、大乗仏教は自分や他者の「苦の救済」を強調した。盤珪は大乗仏教と似たようなことをいう。
著者の秋月氏は、現代の臨済宗も盤珪のような指導法にしたほうがいいというのだ。
解説の竹村氏は、唯識の哲学のようなものが、心理療法として活用できるはずだというのである。
仏教者も研究者も怠っていることになる。
盤珪について説明・説法について竹村牧男氏の紹介
盤珪は「やさしい言葉で説明」したという。竹村氏はこういう。
「ちなみに、盤珪は「皆の衆にはむだ骨をおらしませずに、畳の上にて楽々と、法成就させましたさに、
精を出して」(六〇頁)、毎日、毎日、説法しているという。我々は盤珪の説法によって、労することなく根本的な安心に至り得るのである。
ここに、盤珪のあふれる慈悲心を見ることができる。漢語を用いず、やさしい言葉で説明し、臨済宗に
あっても公案を用いないスタイルは、唐代の黄檗や臨済に直結するものであった。」(p328)
この方法を著者秋月龍a氏は絶賛し、今日の臨済宗は「白隠禅師中心に偏せず、大いに盤珪禅をこそ挙揚すべきである」というのである。
(ブログ5507)
「時あたかも、今年は、本書で私が巻頭に取り上げた盤珪永琢禅師の三百遠忌の年に当たる。 私は、今後の 日本臨済宗は、これまでの白隠禅師中心に偏せず、大いに盤珪禅をこそ挙揚すべきであると信じているだけに、 嬉しさひとしおの思いである。」(p324)
3)生活の場での心得を平易な言葉で説明
秋月氏は、盤珪の教えの特徴を「不生禅」という。
「不生になろうとせず不生でおれ」と盤珪はいう。・・・ それは如何にしても客体的に対象化することはできないもの、主体的に行為的直覚的に、 それ自体のはたらきそのものとなって見る(「ものとなって見る」は西田哲学の術語)ほかにないものである。」(p85)
盤珪の方法は、平易な言葉で生活の場での心得を説く。不生の仏心は、今ここで、常にはたらいていることを自覚し観察し、よけいなことにしかえてほしくないのである。
そういう方法は、現代の「マインドフルネス」の説明のしかたに似ている。ただし、盤珪の説明は、静かな場所、対人でない時の、坐禅や瞑想の方法ではない。すべての生活の場面においての内面の実践の仕方を説明する。
「悟り」(自内證)に導く指導者で、こういう禅の説法は、現代でもみることはできない。盤珪の特徴だ。
「一切の迷いは皆な身のひいきゆえに、迷いますわいの。見のひいきせぬに、迷いは出来はしませぬわいの。」(p81)
「仏になろうとしょうより、仏でおるが造作がのうて、ちかみちでござるわいの」の一句、盤珪禅の神髄である。」(p86)
参禅のものが七つ八つまでは至るが、あとを越えない「とが」はどこにありますか、と問うと「ひっきょう大法の望みうすきゆえなり。」と答えた文を紹介している。
この語のところで、秋月氏はこういう。
「盤珪禅のおそろしさを肚の底から痛感させられる文字である。」(p89)
(当時はまだいた。現代のひとも「大法の望み」をもつひとはいない。禅僧、学者でも説くひともいない。[マインドフルネス」は、ジョン・カバットジン氏が「入口」といったように、そのさらに奥に、盤珪のいうレベルの自己観察があるのだが、それを望むひとが現代でもいない。弊害が指摘されたのに、浅い観察のみがブームになった。)
こんなふうに、盤珪は通常の会話のような質疑を応答し、やさしい言葉で説く。しかし、奥が深い。「大法」に至るものは少ない。しかし、十数人が悟りを得たという。「公案」でなくても悟りの体験ができる。そのような、わかりやすく説いたのが盤珪であった。
現代の宗門にも、このような方法を進めたのが秋月氏であった。
大乗仏教も多くの言葉で説明した。たとえば、唯識は次のように論理的に説明して、実践を志すようにしてくれた。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5495
【目次】大乗仏教の核心〜「唯識」で見る
(続く)
(この記事は次の連続記事の一部です)
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5493
【目次=書籍紹介】
『禅門の異流 盤珪・正三・良寛・一休』
著者秋月龍a、解説 竹村牧男(東洋大学名誉教授)
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Posted by
MF総研/大田
at 16:27
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新しい心理療法
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