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(3)利他の第1「布施波羅蜜」〜大乗仏教の核心〜「唯識」で見る [2024年10月29日(Tue)]

大乗仏教の核心〜「唯識」で見る
(3)利他〜布施波羅蜜

◆ 大乗仏教の「利他」とは布施、持戒、忍辱

 大乗仏教の核心は、@「自内證」、A「人間完成」、B「利他」であるが、現代の仏教は、これらに弱いという。 まず、B「利他」とは、他者のために働くことであるが、大乗仏教唯識では、具体的には、六波羅蜜のうちの、3つ、 布施、持戒、忍辱であるという。

 竹村牧男氏の(『知の体系』佼成出版社)でみていく。(Pがそのページを示す)

布施波羅蜜

 大乗仏教徒が実践すべきことの第一は布施である。

「布施というと、お坊さんにお金をあげることとばかり思われがちですが、決してそうではなく、むしろ人びとに、教えや思想、技術等も惜しまず提供し、さらに人間の不安を解消してあげていくことをいう」(『知の体系』 p200)

 大乗仏教は、出家仏教ではなくて、在家仏教である。家族生活、職業生活の中で、涅槃と菩提を求める宗教である。 そうだとすれば、布施の内容が自分の持つ技術等を提供すること、不安を解消してあげていくことは、すべての家族のために働くこと、職を通して人々のために働くことが含まれるはずだ。
 たとえば、農業の人が農産物を生産してくださるから、不安を解消できる。政治、防衛、教育、医療、すべて、不安を解消してもらえる。

 だから、家族のために働くこと、すべての職業における仕事が布施となり、利他を構成する。ただし、涅槃、菩提を求めての他の六波羅蜜のすべてを実践しないと、大乗仏教にならない。

 家庭生活、職業生活が大乗仏教になるためには、六波羅蜜のすべてを実践しなければならない。とにかく、六波羅蜜のすべてを実践していく人の家庭生活、職業生活が「布施」であり「利他」である。

 だから、道元は「 舟を置き橋を渡すも布施の檀度なり、治生産業固より布施に非ること無し」という。道元も、坐禅だけが仏教ではない。道元も職業生活が布施であり、その中でエゴイズムを抑制していくという大乗仏教の核心を教える。道元は己見我利我執を捨てよということに現れている。
 大乗仏教は、僧侶だけのものではない。六波羅蜜を実践する在家すべての生活行為である。
 家族生活の中で、職業の場で、行うすべての生活が大乗仏教の修行である。ただし、持戒しながらでなければならない。家庭生活、職場での生活がすべて、大乗仏教の利他を構成するものとなる。
 エゴイズムの心理を自覚して、他者を苦しめる悪をしないこと、他者が喜ぶ善(家族のため、社会のため)をすることである。
 もちろん、働きだけが、布施ではない。働けない人(子ども、病気の人など)の態度、行為も六波羅蜜を満たすならば、大乗仏教である。

(この記事は次の連続記事の一部です)
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【目次】大乗仏教の核心〜「唯識」で見る

Posted by MF総研/大田 at 17:48 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL