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 〜 その5)瞑想法、マインドフルネス、禅 [2024年10月02日(Wed)]

12)薬物療法以外の治療法
 〜 その5)瞑想法、マインドフルネス、禅

 西城氏の続きである。
     B)『精神科医にご用心』西城有朋、PHP文庫
 西城有朋氏が紹介する薬物療法以外の治療法を続ける。 「瞑想」「マインドフルネス」「禅」について述べている。

◆マインドフルネスは再発予防効果がある

まず、初歩的な「無評価で観察」の「対人関係でない場面での瞑想」について。

 「医療としてのマインドフルネスは、禅を学んだアメリカ人の生物学者 ジョン・カバットジンが1979年にマサチューセッツ大学で仏教色を排し、 現代的にアレンジしたマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を始めたことが端緒 となっている。」(p256)

 「とくに不安や心配には、瞑想は大きな効果が期待できる。マインドフルネスを 活用したCBTは、うつ病の再発・再燃のリスクを 低減し、残遺症状を緩和する。再発予防効果は抗うつ薬と同等という報告もある。」(p257)

 うつ病などの症状を軽くする効果、再発予防効果はあるが、「完治」の効果はないということである。現在までの研究の要約だ。

◆禅は重いうつ病に効果がない

 次に、従来、日本で千年以上、実践されてきた「禅」について。

 「一方、本格的なうつ病への抗うつ効果となると、マインドフルネスの効果は、 現在の医学的見解では否定的である。これを裏づけるエピソードとしては、 禅宗の最高峰の僧侶であってもうつ病で自殺した南禅寺の話に留意してほしい。」(p257)

 「臨済宗で師家といえば、お釈迦様の法を継いだ人物ちして、お釈迦様と同格の扱いを受ける 立場である。だが、その師家ともあろうお方が自殺したのである。 このように重いうつ病は、やはりぜひ受診をしてほしい。」(p257)

 このかたは、私(大田)が読んだ文献によれば、高血圧になって、血圧を下げる薬を服用されていたという。 そのために、副作用としての抑うつ症状を起こしてしまった。当時(1983年)は、40年前であり、うつ病のことも 血圧降下薬の副作用でうつ病になることも知られておらず、ご当人はわけもわからずお亡くなりになったのだろう。

 坐禅の最高峰のひとでも、うつ病となり自殺するのだから、坐禅はうつ病の効果はないと西城氏は評価されたのである。

 ブームの「マインドフルネス」も、うつ病の治療法にはならず、再発予防の効果しかないということが最近報告があった。

◆日本の禅は無力か

 以上、西城氏がブームの「マインドフルネス と、日本の「禅」について触れたが、以下、私(大田)の感想である。

 日本の禅は、西田幾多郎、鈴木大拙などによれば、宗教の極致であり、かれらは日本の禅を称賛している。 だが、西城氏が見られたように、論点が違うのか、「禅」の無力なところが紹介された。
 災害があっても、僧侶は被災地の支援に行かず静かな所で坐禅せよ、それが禅だ、と言った学者もいた。つまり、現代人の精神社会的な苦悩は禅とは関係ないというようなことをいう。(それが「宗教」かと、私は強い抗議をしたいが。 西田幾多郎は、人が不幸に陥った時に、宗教を求めるのだというが。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3287  )

 現代人の精神社会問題(うつ病などの改善、克服の支援も含む)に日本の禅は無力な宗教なのか。それでは、被災者の心の支援にも無力か、カルト問題に対抗するとか、「死」におびえるターミナルケア などにも無力なのか、もう宗教者だけに任せておけないのではないのか。禅学、宗学、マインドフルネス学、瞑想の哲学、生きる意味の哲学、人生価値の哲学などという学問として真剣に検討すべきでななかろうか。日本の禅には失望か。(大田)。

 ここまでは、西城氏によれば、ブームの「無評価で観察」の「マインドフルネス」も「禅」もうつ病の治療法には否定的である。 だが、西城氏の瞑想の記述のこれらの段落の見出しは、「瞑想は大きな効果が期待できる」である。 その部分はp258である。西城氏の著書では、最後にそこを見る。


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Posted by MF総研/大田 at 07:33 | 孤独孤立自殺うつ病不安症 | この記事のURL