(3)うつ病は再発が多い〜薬物療法のみであると [2024年08月13日(Tue)]
うつ病は再発が多い
〜薬物療法のみであると
うつ病が治らないひとがいるし、一度、治っても再発が多い、そのせいか、薬物療法が長引き、クリニックは患者であふれている、視察時間が5分という状況が続いている。
和田秀樹氏の著書が出版されたので、これで再確認している。
「精神医療」崩壊 メンタルの不調が心療内科・精神科で良くならない理由 (青春新書インテリジェンス PI 701) 新書 – 2024/8/5
和田秀樹 (著)
「職場復帰した人の約半数が再休職という、治らない現実」(p28)のところで、再発が多いことを
グラフで紹介している。(p29)
同じ厚労省の資料から、作成したグラフがこれである。
これだから、メンタルクリニックに患者があふれる原因の一つだ。半年〜1年の診察を受けるために再発のたびに訪れる。不登校、休退職の繰り返しで患者さんが気の毒である。
少々、古い記事ではあるが、うつ病の治療法をまとめたものである。
認知行動療法(CBT-2)で、治すと再発しにくいと言われる。マインドフルネスSIMT(CBT-4)で治したひとも、再発が少ない事実がある。(CBT-xについては、下記 注6を参照)
たとえば、次のひとは、SIMTを受ける前は、5年ほどの間に入退院を2度繰り返していたが、SIMTで治ってからは再発していない。
機関誌「マインドフルネス精神療法」7号、(p50)
ほかにも、5年以上再発していない人がいる。年賀状をいただいて、消息がわかっているのは、宮城県や茨城県の人である。
抗うつ薬で治療すると、炎症があるという前頭前野、眼窩前頭皮質、前部帯状回などが十分回復しないのだと思う。「寛解」の状態である。
しかし、SIMTでのトレーニング(1年もかけるが)で、そういう部位を動かすような結果となって、神経の再生やネットワークの再生が起こり「完治」するのだとおもう。みな、薬物療法を併用して、SIMTを実践して、軽くなった段階で、薬を少しづつ減らしていって、やがてゼロになった。「完治」である。数年以上、再発しない。つらい出来事が起きた時の心の対処方法(注1)を1年かけて身につけたからであろう。
患者のことを考えるならば、薬物療法に併用するCBTを普及してほしいがいかがであろうか。和田氏が、「医学部のある大学の責任者(教授)がほぼすべて、薬物療法中心の医者である」(p46)
状況だというから、医大で医師に精神療法のスキルを習得するのは難しそうだ(
この詳細はこちら8月17日の記事)
。医学部のある大学病院での臨床試験は望めないだろう。アメリカでは、マインドフルネス(CBT-3)の臨床試験が数多くなされたが、日本ではゼロ。
臨床心理学のある大学で臨床試験をやれないだろうか。連携してくれる大学がないだろうか。
今は、精神療法が重視されず、心理士が精神療法だけで職業にできるような社会になっていないから、参入するひとがいない。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4939
★医師は経営上、認知行動療法の時間をさけない
国の予算か慈善団体から助成で精神療法を提供する団体の設立
しかし、大学のひとは、新しい臨床的行動はしようとしない傾向があるという。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4838
★社会問題は見て見ぬふりする
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4894
★革新説の排除
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4434
★学者や宗教者でも、社会の利益よりも自利
〜革新説をいう者を封じ排除する
長老は自分のものを退職まで執着して新しいことはしない、認めたくない傾向を見る。若手の新しい試みを否定しようとする長老のことは禅、仏教、マインドフルネスの学問(注2)にもあるが、医学部にもあると、西城有朋氏もいう(注3)。
こんなことであれば、長老が力をふるう3,40年のあいだに指摘される新しい社会問題の解決のための新しいものは、採用されない。長老の利益を維持して社会の利益を損なう。生命にかかわる対策も遅れる。エゴイズム、罪なことである。若手には学問の自由がないのである。
心理学の大学も「傾聴」重視が変わらないならば、別の組織が対策を研究、臨床化しなければ、新しく見出される心理社会問題は「見て見ぬふり」されて、国民の苦悩は続く。患者の生命を保護するために、医師、大学に頼らず、国の予算か、慈善団体などから寄付金や助成金を受けて、このような問題に関心のある人を集めて、特別の組織を一つ(効果が見られたら将来は都道府県に一つずつ)作って、そこで、心理士に、効果ある認知行動療法など(CBTー4も候補の一つ)のスキルを習得してもらい、少数だが(毎月1〜2時間ほどの実践指導と実施状況の評価・アドバイスを2,3回するので治療支援に時間がかかる=注4)患者さんに提供するしかないのだろうか。 そういう組織に、精神療法に理解ある医師が参加すれば、心理士のサービスの一部は健康保険扱いにできるだろう。
なお、SIMTも大きな標準的枠組の型しか書籍化しておらず、特定領域の問題(注5)には、応用開発が必要である。特別領域のSIMTを開発すれば、もっと治癒割合が高まるだろう。なお、標準的SIMTは、非定型うつ病、PTSD、不安症、過食症、慢性の痛みなどにも「完治」の事例がみられた。
私も高齢であり、全国にも、SIMTができるマインドフルネス瞑想療法士(MMT)が極めて少ないのが心配である。数年後には、ほとんどいなくなるかもしれない。SIMTを提供できる後任者を得たい。MMTの育成には2年はかけたいので、時間が切迫している。
毎年、2万人の自殺がある。精神科医の治療を受けた人も含まれている。
国民の生命を守るために新しい対策が必要だ。
薬物療法だけでは、不十分という書籍は次もある。
A)『精神科医の本音』益田祐介、SB新書
B)『精神科医にご用心』西城有朋、PHP文庫
C)『精神医療崩壊 メンタルの不調が診療内科・精神科で良くならない理由』和田秀樹、青春新書
D)『ブラック精神医療』米田倫康、扶桑社新書
【注】
(注1)
つらいと評価する感情が起きるが、対処行動は価値崩壊行動ではなく、価値実現行動を選択するという西田哲学の実行。
(注2)
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3686
仏教、禅では、煩悩とか我見、身見などといい、これが自己、他者を苦しめ、社会の利益を害するから、自己自身が気づいて抑制すべきと教えてきた。仏教などの核心である。仏教、禅、道元、マインドフルネスなどの学問における研究者もこれを犯しているだろう。我利我執は公益も害するであろう。医学、心理の学問、現場でも起きるであろう。
このような大学における宗教やマインドフルネスの学問領域にさえも、もしエゴイズムが行使されているのであれば、教育が偏ってしまっているであろう。だから、地方創生SGDsのゴール4を重視したかったのである。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4894
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4719
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5455
学問の自由と偏らない教育、もはや実現しそうもない。次世代の若者に託したい。
大学や有力な組織でこうであれば、いいなり、そんたく、いじめ、革新説の排除などが当然という生き方を身につけてしまう。日本全体の沈没である。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3866
(注3)
「時にベテラン医師は、若い医師が新しい試みで患者を治すと、自分が学んできた努力や人生観までもが否定されたように虚しくなり、抵抗する。」
(『精神科医にご用心』西城有朋、PHP、p111)
【参照】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5058
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4975
(注4)実践の方法の説明のセッションをやりっぱなしにせず、次のセッションまでに、実施状況の評価、アドバイス、質問の回答などを行うので、結局、毎月、2−3回くらい、一人にかけていく。患者が多ければ、実践指導セッションだけは、グループセッションがいい。
評価、アドバイスは、グループセッションにはできない。こうして、一人の患者にかなりの時間をさく。患者の生命、人生を尊重するからである。
なお、アドバイス、評価などは、メール、ZOOMなどでも行う。そのほうがいい場合も多い。
(注5)子どもの「死にたくなる」自殺防止のために子どもに行うSIMT、産後うつ病のためのSIMT、高齢者のためのSIMTなど多数の領域がある。がん患者のためのSIMTは、すでに出版した。
(大田健次郎『「死」と向き合うためのマインドフルネス実践』佼成出版社)
(注6)認知行動療法は研究がされて進展してきた。
認知行動療法(CBT)の発展。
CBT-1:行動療法
CBT-2:認知療法
CBT-3:MBCT,MBSRを用いるCBT。期待されたが、うつ病の治療法にはならなかった。自殺念慮のある患者に長く行うと危険(自傷、自殺のリスク高まる)。倫理的な問題も指摘されてきた。脳の働きとの矛盾もある。
CBT-4:無評価で観察の瞑想ではなく、常時、価値実現か崩壊か評価観察する実践を用いる心理療法。自己洞察瞑想療法(SIMT)は、その一つ。うつ病だけに限らない完治効果が見られる。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5348
★第4世代の認知行動療法(CBT-4)
【連続記事】メンタルクリニックが「治らない患者」であふれ返る深刻な理由
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5458
|
|
Posted by
MF総研/大田
at 22:07
|
孤独孤立自殺うつ病不安症
|
この記事のURL