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(7)現在の自殺対策に「間隙」があるところに新しい対策を [2024年06月11日(Tue)]
【目次】第4世代の認知行動療法SIMT
  (「マインドフルネス」は第2世代)
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5348

(7)現在の自殺対策に「間隙」があるところに新しい対策を
   孤独・孤立対策への効果も
   〜 無視傍観、そして、無関心ではいけません
   〜 自殺防止対策、孤独孤立対策

 現在の自殺対策に「間隙」があると私が思う領域は、「うつ病」の「治療」の領域です。「完治割合」が低い。薬だけでは治りにくい不安症(社交不安、パニック症など)、PTSD、過食症なども、治らないとうつ病を併発し自殺も起こります。不登校、ひきこもり、8050問題、孤独死などの原因の一部でしょう。
 がん患者もがんで死なずに自殺で亡くなる人も多いです。がん患者のメンタルケアも不十分です。

 ほかの病気ならば、患者や家族が「もっと別の治療法」を研究加速してほしいと政府に陳情することが多いです。しかし、この領域の「間隙」が30年(私が見てきた)あまり、画期的にいい改善策がとられたとは感じていません。
 それは、うつ病、不安症、PTSD、過食症などの認知行動療法(CBT)です。もし、効果的な認知行動療法があれば、薬物療法が効果がない患者さんの一部を「治療」できるはずです。図のようになります。
 CBTは、SIMTとは限りません。効果があるCBTなら、どれでもいいです。ただし、MBSR、MBCTでは不十分です。治すには、2か月標準ではいけません。うつ病の完治には、1年から2年近くかかるようです。

 生涯にかかる割合が高い、うつ病と適応障害、こういう割合からみると家族のうつに、必ず発症するでしょう。精神科医が少ない、薬物療法が効かない割合も高い、これを補う支援対策を国民全体で考えてほしい問題です。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4814
★「自殺念慮」の症状がある適応障害、うつ病の割合

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2244
★(2011年)うつ病、不安症、PTSD、過食症などはCBTで治る人も多いのに、支援制度から漏れている。日本の心理職は「傾聴」が多くうつ病などの治療法を学ばない。そうさせる日本の医療状況。治らず絶望する国民が死んでいかれる。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4757
★2010年ころはこうでした。うつ病、PTSD、パニック症などが伴う苦悩を支援する場所はいまだに極めて少ない。

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 末木氏が次のようにいっていることの一つの「間隙」です。  

 「また、こうした役割は変化する社会の中における伝統的な職業に必ずしも反映されているわけではなく、既存の仕事の隙間になっている場合もままあります。昨今ではそのような変化し続ける社会に新しく生まれた間隙を埋めるため、NPO法人を立ち上げ、社会のために尽くす人々が大きな活躍をしています。 」(p183)

 「相談」機関は「治療」をしません。精神科医が「治療」をします。しかし、薬物療法で3−4割が治らない患者さんを別の「治療」法(CBTなどで)で治療するひとが極めて少ないです。希望すれば、だれでも受けられるようになっていません。
 精神科医には、CBTを実施するインセンティブが働かないと、和田秀樹氏もいいます。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4939
★現在の制度のままでは医師は経営的に精神療法を提供できそうもない
 うつ病の「治療」を受けているのに「自殺」するひとが大変多いです。末木氏が言われる「 社会に新しく生まれた間隙」の一つですが「埋めるため、NPO法人を立ち上げ、社会のために尽くす人々が大きな活躍をしています。 」というようなところは、この領域は該当しません。小さな活躍もありません。あっても、見えません。あるのなら、「死亡」のリスクのある病気だから、ご家族はそこにいくはずです。どこにいけば受けられるのか情報がありません。何年も服用して治りません。だから、クリニックは「再来患者」が多く、新規の患者は、かなり待たされるという事態も起きているそうです(加藤忠史氏)。

 認知行動療法は、第一世代が行動療法、第二世代が認知療法と認知行動療法でした。これでも治らない患者さんがいるので、アメリカでは、第三世代の認知行動療法(無評価で観察の瞑想を付加=第1世代の「マインドフルネス」)の研究、臨床が行われてきましたが、「うつ病」を完治させる効果のあるものは日本で実際に行われません。自殺念慮の強いひとに提供すると、自傷、自殺のリスクを高める傾向があると発表されました。アメリカでは、そこまで多数の研究、臨床試験が行われてきました。
 アメリカでは、「マインドフルネス」は「第2世代」に入ったそうです。日本はまだです。遅れています。うつ病を完治させる支援のできる「認知行動療法」を受けられるような対策はまだとられていません。もし、そういう認知行動療法が開発されて、低廉な費用で受けられるようになれば、自殺が少し減少するのは確かです。5年も非定型うつ病が治らないで自殺未遂をして、入退院を繰り返したひとでも、認知行動療法で「完治」することがあるのですから、完全ではなくても「認知行動療法」は、薬で治らないうつ病でも「完治」にすることもありえることは事実です。
 国民の生命を守るために、うつ病の認知行動療法の研究をすすめて、一部の人でも「完治」になるような対策をとってほしいのです。

 末木氏は、自殺対策には、それを担う人々に「インセンティブ」が働ないと指摘されています。 行政官、医師、心理カウンセラー、研究者などに、インセンティブが働かない。自殺念慮と言う深刻な症状のある難治性のうつ病の方を「治す」支援(1年もかかる)をボランティアでできるような仕事ではありません。忙しい研究者も参入しません。

 それで、私は、近い周辺の学者、専門家からも「無視傍観される病」であると感じてきました。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/1812
【目次】無視・傍観・軽視・放置・見放される病(2009年から)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3461
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4650
【目次】見て見ぬふりする社会

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4939
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4834
https://blog.canpan.info/jitou/archive/2961
【重大問題】最前線は誰がになうのか

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2194
★うつ病やPTSDなどを完治させるには1,2年、実践指導しなければならない
 〜治す訓練を体験したひとが、体験を指導できる。体験が必要

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4052
★現場の実践と研究は違う〜研究者が現場を妨害しないで

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4120
★独断的な権威に従わず

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3801
★「反抗的人間」であれ=カミュの「ペスト」

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2614
★宗教レベルと宗教レベルでないマインドフルネス心理療法SIMTが必要
 宗教レベルなのに、日本の宗教は応えていない
 それだから、宗教レベルの哲学のある救済方法(精神療法的)が必要
 〜がん患者の死の不安、犯罪被害者の自己否定からの救済、カルト被害者の救済など。
 次は、宗教レベルとそれ以前の自己洞察法の両方をカバー
 右矢印1 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4917

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3915
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5150
【CBTがうつ病、PTSDを治せるのになぜ普及しないのか】

★双極症(双極性障害)も自殺リスクの高い精神疾患
 しかし、心理的なサポート体制がない
http://mindfulness.jp/shoki-soukyoku.htm

注)末木新『「死にたい」と言われたら 〜 自殺の心理学』ちくまプリマ―新書

(続く)
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5338
【連続記事】孤独孤立対策にうつ病の視点を

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5329
【連続記事】地方創生SDGs ターゲット3.4 自殺防止


https://blog.canpan.info/jitou/archive/5313
【連続記事】大震災の被災地にうつ病、自殺が増加するおそれ
この記事は次の一部です。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5441
【連続記事目次】効果的な自殺対策、孤独・孤立対策とは?

Posted by MF総研/大田 at 20:08 | 孤独孤立自殺うつ病不安症 | この記事のURL