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(3)期待されたマインドフルネス(無評価で観察の瞑想)もうつ病の治療法にはならなかった [2024年03月30日(Sat)]

NHKが14年前とりあげたうつ病の実態
 〜 今もなお精神療法が普及していない(3)

  ◆期待されたマインドフルネス(無評価で観察の瞑想)もうつ病の治療法にはならなかった

 14年前、NHKがうつ病が治らずに自殺が多いことを取り上げていました。それに、私が論評を加えた連続記事でした。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/1835
【目次】NHK「うつ病治療 常識が変わる」(2009年)

 今でもなお、薬物療法の完治率は高くありません。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5389

 うつ病は、精神作用が回転しにくい症状があって、つらいので、「希死念慮」(死にたい)という症状が深刻です。そういう人に大きな出来事が起こると実際に死んでしまわれます。警察庁・厚労省による自殺の分析に「うつ病」があるのは、それでしょう。すでに治療中であったのでしょう。

 NHKが、薬物療法で治らない患者さんが多いことを指摘しました、イギリスでは、認知行動療法が進められる、という報道もありましたが、それほど効果があるわけでもないようです。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5490
『精神科医に、ご用心!』西城有朋、PHP文庫、2022年12月
で紹介。

無評価で観察の瞑想はうつ病の治療法にはならない

 2009年当時の、NHKの書籍では、マインドフルネスについてはまだ触れていませんでした。2005年に書籍は発行されましたが、まだ日本では臨床に用いる医師、心理士がいなかったのでしょう。(いまもなお「治す」マインドフルネスを臨床にもちいているひとはいないでしょうが。)

 うつ病を治す(はずの)新しい精神療法、マインドフルネス(第1世代)が日本で紹介されるのは、この5年前でした。

 私どものSIMTと似た、自分の意識を観察する方法ですので、共に発展するだろうと期待しました。

 まず、期待された新しい第3世代の認知行動療法の書籍が2005年に紹介されました。 その頃の様子を次の記事に書いています。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2334
【2012年2月15日】自己洞察瞑想療法(SIMT)
 =マインドフルネス心理療法の一種

 無評価で観察のマインドフルネスではなく、生活行動時のすべてに観察する自己洞察瞑想療法、SIMTの研究開発の歴史を述べました。この中に、アメリカの新しい認知行動療法の出現を知ったことを述べています。

 「アメリカでは、2000年前後から、マインドフルネスおよびアクセプタンスの技法を取 り入れ た心理療法プログラムが多数発展している。アクセプタンス&コミットメント・セ ラピー(ACT)、 弁証法的行動療法、マインドフルネス認知療法、行動活性化療法な どである。これらは、2005年9月 に翻訳出版された書籍(1)によって日本に紹介され 始めた。」
(1) 「マインドフルネス&アクセプタンス  ー認知行動療法の新次元ー」 編著=S.C.ヘイズ、V.M.フォレット、M.M.リネハン、 ブレーン出版、2005/9/10

 この本によって、日本も「マインドフルネス」の導入(主に、MBSRとMBCT)が始まったのです。 うつ病についての効果も述べられていたので、これが日本でも導入されて、薬物療法で治らない患者さんの治療にも用いられて、自殺が減少するだろうという期待がありました。

 『マインドフルネスストレス低減法』の再出版、『マインドフルネス認知療法』の出版がされました。
 日本でも、かなりブームになりましたが、日本では、うつ病の再発予防にしか用いられていないようです。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5489
でこう述べました。
 「 そして、ジョン・カバットジン氏の「マインドフルネスストレス低減法」(MBSR)を活用した、「マインドフルネス認知療法」(MBCT)、弁証法的行動療法などが紹介されたので、うつ病の精神療法が日本でも盛んになりそうだと、期待したのですが、結果は違いました。」

 これまでの20年ほどで、マインドフルネスの限界がわかり指摘されました。人が生きる世界は、他者から評価され、こちらも評価することで成り立っている世界ですから、評価し評価される世界でどう生きていけばいいのか、内面の心の成熟さが求められるのです。

 「無評価で観察のマインドフルネス」は、アメリカでも、研究がすすんで、結局、無評価で観察のマインドフルネス瞑想は、うつ病については画期的な効果はみられませんでした。さらに、倫理道徳面から批判されています。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5296
★第1世代のマインドフルネスへの批判

 さらに、危険性も報告されました。特に、希死念慮、自殺念慮の強い患者がそれを長い期間行うと自傷、自殺のリスクが高まるおそれがあると報告されました。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4947

 こんな状況では、アメリカで開発された、MBSR,MBCT、弁証法的行動療法は、自殺念慮のあるうつ病の人には、不適当でしょう。

 そして、うつ病の治療法には大きな効果は確認されていないということです。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5282
☆「マインドフルネス」を用いる療法はうつ病・不安症には顕著な効果が報告されていない

 そこで、さらに、深く観察するマインドフルネス(第2世代マインドフルネス)が期待されているわけです。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5312

 「無評価で観察のマインドフルネス」は第1世代のマインドフルネスで、それを活用した認知行動療法は、題3世代の認知行動療法と呼ばれました。
 深刻な精神社会問題の解決には、不十分であるということで、自己を観察する手法は、次の「第2世代のマインドフルネス」と呼ばれます。
 これを活用した認知行動療法を私は、「第4世代の認知行動療法」と呼びます。これに該当する精神療法はまだ多くありません。

 日本のSIMTは、最初から、この部類に属します。だから、これを基礎にして、社会問題のそれぞれのテーマに効果的に詳細な実践方法を開発して、水平展開されることを願っています。

 薬物療法で治らない患者が死ぬことがないように、うつ病を治す効果の高い精神療法を 普及させるべきです。さうでないと、自殺者数を減らす(SGDsターゲット3.4)のに限界があるでしょう。

 警察庁と厚労省によって、29日、2023年の自殺者数の確定値が公表されました。 2万1837人でした。 前年より44人の減少でした。なかには、うつ病だったひとがいます。他の原因からもうつ病になります。治らなければ自殺するひとがいます。

【読売新聞】2023年の小中高生の自殺513人、前年から高止まり



(続く)


https://blog.canpan.info/jitou/archive/5329
【目次】今年も第2世代マインドフルネスでSDGs3.4 自殺の減少を

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5223
【目次】地方創生SDGs 3.4 自殺の減少 〜 2023年

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4893
【SDGsターゲット3.4 自殺の問題】種々の問題がここに集約されています

https://blog.canpan.info/jitou/archive/5338
【目次】孤独孤立対策にうつ病の視点を

第4世代の認知行動療法を活用します
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5348
【目次】第4世代の認知行動療法としての自己洞察瞑想療法SIMT
Posted by MF総研/大田 at 13:11 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL