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「マインドフルネス」(第1世代)は組織構造的、社会的問題を見えにくくする(1) [2023年12月21日(Thu)]

2023年、 日本、世界で種々の事件、紛争が勃発した時点で「マインドフルネス再考」
第1世代マインドフルネスに向けられた批判
 〜 主にMBSR、MBCTの弊害

「マインドフルネス」(第1世代)は組織構造的、社会的問題を見えにくくする(1)

 次の論文で指摘された「マインドフルネス」に対する批判について紹介するとともに、私見を述べている。
    (B) 池埜聡・内田範子「第2世代マインドフルネス」の出現と今後の展望ー社会正義の価値に資する「関係性」への視座を踏まえてー、Human Welfare, 12:87-102,2020年 (これは、上記雑誌、1月号で、林紀行氏が注9)で紹介している。(p15) )
 池埜内田論文で指摘したマインドフルネス批判の第2は、組織構造的問題の見て見ぬふり、の助長である。

2) 組織構造的、社会的問題の不可視化

 「第2の批判は、マインドフルネスが問題を個人に帰結させ、組織構造的、さらには社会的な影響を不可視化することに加担しているという見解である。」(IUp91)

 二つの領域での問題があるという。
    A) 企業マインドフルネス

    B) 企業マインドフルネスにとどまらない

A)企業マインドフルネス

  「第2の批判は、マインドフルネスが問題を個人に帰結させ、組織構造的、さらに社会的な影響を不可視化することに加担しているという見解である。」(p91)
 企業マインドフルネスは、マインドフルネスで個人の「ストレス対処法」「集中力向上」など個人の成長であるようにみせて、実は改善すべき組織の問題を見ないとか、改善しないとかすることに加担するという問題であるという。

 「企業マインドフルネス」を例にとると、マインドフルネスをストレス対処のための処方箋として位置づけることで、問題解決を個人に委ねてしまい、企業の構造的な問題を隠してしまうリスクが潜在していると見なす(Gelles,2015;Purser & Loy,2013)。」(p91)

 「マインドフルネスによって個人の生産性と満足度が高まり、企業の利益にもつながるという一見すると企業と就労者のウイン・ウインの関係の背後には、問題を個人化させ、結果的にストレスを生み出す構造を助長することになりかねない、という趣旨の批判である  (Kucinskas,2019;Purser,2018,2019)。」(p91)

 このように、個人の成長のためと称して、マインドフルネスを社員に実践させる。しかし、企業に「ストレス」「過労」があるのは、企業内のセクハラ、パワハラ、人員不足、上司の指導不足、など個人に帰すべき問題ではなく、組織構造を変えるべきことが見逃されてしまうということであろう。
 マインドフルネスのうちでもMBCTは、復帰プログラムにおいて、うつ病の再発予防として活用されるが、これも発症した個人に帰しているのであるが、そもそも、社員(学校では教員)をうつ病に追い込む組織構造の問題、組織風土を改革すべきところを見えにくくするのであろう。
 薬物療法で治らず復帰プログラムにも参加できず、やがて退職していく社員(学校では教員)もいるが、そもそも、うつ病に追い込む組織風土を変革すべきことが見逃されているように見える。そういう批判であろう。

(続)

【MBCTの問題】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5287

 ここに述べたように、MBCTでは、対人場面でも、「賛成も反対もせず、好き嫌いもせず、自分の番になったら何を言うかも考えないで、ただ聞く」という。

【考えていただきたい】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4345
★欲求、欲望も意識作用。他者を害する「悪」ではないかの「評価」判断。自己を観察することは、仏教では2000年、試行錯誤を繰りかえした。深いものの、無知、不知により善悪の評価もを間違って、枠外の社会問題の救済解決を妨害して、結果的に倫理的な悪になることもある。やさしい多数説は倫理的に危ういことが起きやすい。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3686
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4100
★ひとはみな自分の「もの」に執着する傾向がある。倫理的にふるまう学者ばかりではない。

(続く)

◆2023年、 日本、世界で種々の事件、紛争が勃発した時点で「マインドフルネス再考」
https://blog.canpan.info/jitou/archive/5296
【目次】第1世代のマインドフルネスに対する批判
   〜 問題を克服するために第2世代マインドフルネスへ


Posted by MF総研/大田 at 15:09 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL