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(11)心理士による心理療法も普及しない [2022年02月27日(Sun)]
【連続記事】一体どういうリソースなのか
 =薬物療法で治らないうつ病などが治るような長期的な支援をして自殺を減少させるのは

(11)心理士による心理療法も普及しない

 うつ病はつらい病気です。自殺したくなる症状があります。日本の自殺が多い理由の一つが心理療法が普及していないからでしょう。

 日本での、健康保険制度では、医師が提供できそうもありません。精神科医の和田秀樹氏が、この状況を説明しています。

 「薬しかわからない精神科医を増やし、薬が効かずに、難民化する患者も大勢生み出している。」(雑誌「プレジデント」2022.3.4号 特集「精神科、心療内科のウラ側」)

 「そこで苦肉の策だが、医師の5分診療とは別に、臨床心理士や公認心理士のカウンセリングを受ける手もある。料金は30分5000円が相場だ。・・・・ 実は、良心的な精神科医の多くは、有能なカウンセラーを雇ったり、提携したりしている。 だが、問題もある。日本ではカウンセラーの社会的な地位が低く、「医師のカウンセリングでないと不満」という患者さんも少なくない。」

 しかし、カウンセリングができる医師が少ないのだと和田氏はこういう。

 「もっとも日本には、カウンセリングがわかる精神科医自体が少ない。なぜなら、儲からないのに加え、医学教育でカウンセリングが軽視されてきたからだ。」 (雑誌「プレジデント」2022.3.4号 特集「精神科、心療内科のウラ側」)

 こういう状況です。心理療法を重視しなかった政策の失敗というべきでしょう。 自殺を減少させるためには、うつ病やPTSD、パニック症を完治させる療法を行う専門家が必要です。このような状況を嘆きカウンセリングしたい人でも、自分や家族の生活のために収入が必要です。収入が少ないなら、これに従事するひとがいるはずがありません。
 予算を「配分するだけでも成功しません。難治性のこうした疾患を治すことは専門的スキルやコミュニケーション能力、共感のスキルが必要です。これを職業として従事したいという人でなければなりません。そういう人材がみつかるのでしょうか。 一体、どうするのでしょうか。どこまで、自殺者が出るのでしょうか。

 薬が効かないひとがいます。心理療法もかなり効果があることがわかっています。 薬が効かない人に心理療法を提供する制度を作るべきです。
 しかし、どうするのでしょうか。今の自分のもので満足している人は乗り出しません。学者も乗り出さないでしょう。
 専門家の特徴です。自己満足の叡智的自己になってしまいます。今の職、地位、収入、名誉で満足。「私は幸福だ。」(目を転じれば苦しむひとがいるのに本気で共感しない自己、見て見ぬふりする自己、そして批判者を排除する自己)
 この自分の幸福を変化させない 、壊さない。新しいことはしない。批判説、おびやかすものを排除したくなる。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/2787
★利己的になりやすい専門家=誠実でない叡智的自己

 現場にいて、今もなお、苦しむひとがいるところがかなりある。新しいことが必要だとしみじみ感じている現場の人。新しいことを研究し乗り出す行動をしたいと思う人。 臨床が好きである人でなければならないです。この悲しい状況に共感してくださる人でないとできません。マインドフルネスSIMTでなくてもいい、何でも現状の維持ではなく、今までに不足しているところを補う必要があると真剣に思う人。

 西田哲学では、すべてのひとが叡智的自己になるといいます。その行動指針は「至誠」誠実であるといいます。これを動かすのが各人の「良心」です。自分さえ幸福であればいいという良心のうすい独断の叡智的自己がいます。そして、他者の苦を共感する深い良心を持つ「意的叡智的自己」がいます。他者の苦を共感し自己の不足を思い苦しみます。

 いつ、自分の身近な人がうつ病になり、薬が効かないという事態になるかもしれないのです。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2802
★くすり漬けにどう対応するか
「結果的に「くすり漬け」になっている患者さんがいるとすれば、くすりでは解決できないニーズがそこ にはあるはずです。プラスアルファの役割を臨床心理士が担う可能性があるということです。」 (p44)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/2803
★心理学系大学にマインドフルネス心理療法センター
★臨床心理士がだめなら社会人のボランティアか
 これは、普及しなかった=1年もかかる大変難しい支援。乗り出す人はいなかった。
★この記事では、欧米のマインドフルネス(無評価で観察)も効果があると書いているが、 最近の研究で欧米の無評価で観察は症状を悪化させる疑問(DPTでさえも自傷(死ぬことも)を悪化させる) が出てきた。欧米の無評価で観察は、重いうつ病の患者には提供しないほうがいいのだろう。
だから、難治性のうつ病(PTSD,パニック症も)にはもっと完治できる心理療法を開発し、新しい支援制度を作らないと、薬で治らない患者の自殺防止に限界がある。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4839
【連続記事】一体どういうリソースなのかー2022年


https://blog.canpan.info/jitou/archive/4834
【連続記事】一体どういうリソースなのかー2021年
 =薬物療法で治らないうつ病などが治るような長期的な支援をして自殺を減少させるのは
Posted by MF総研/大田 at 14:47 | 自殺予防対策 | この記事のURL