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(10)現在の制度のままでは医師は経営的に精神療法を提供できそうもない [2022年02月26日(Sat)]
【連続記事】一体どういうリソースなのか
 =薬物療法で治らないうつ病などが治るような長期的な支援をして自殺を減少させるのは

(10)現在の制度のままでは医師は経営的に精神療法を提供できそうもない
 和田秀樹さん

うつ病は死亡率の高い病気
 うつ病、PTSDなどが薬だけでは治らない患者がかなりおられます。治らないで休退職、休学になり、回復しないと「自殺」が起こるという生命にかかわる深刻な病気です。死亡率を減少させる治療法の研究開発が緊急の課題です。

 アメリカにも、日本にも心理療法があります。どうして、提供する仕組みを作らないのでしょうか。他の病気は、難治であれば、そこから紹介されて、引き受ける病院があります。うつ病も難治性の患者を紹介して、治療を引き受ける病院(そこで心理療法も提供)を県に1か所は作るべきではありませんか。

 アメリカのうつ病の治療法が翻訳紹介されているが、今のままでは、日本の医師や心理士は提供したくても、経営上難しそうです。

 マインドフルネス心理療法SIMTで、毎月1,2回のカウンセリングの支援で、1年もかかります。薬物療法で治らなかった患者さんなので、難治性です。それでも、真剣に課題を実践する人は、1−2年で治っています。マインドフルネスのうちでも、無評価で観察する瞑想ではありません。職場や家庭では、必ず感情が起こります、感情を起こすのだから評価しているのです。現場は瞑想ではありません。お互い相手の言葉、行為を評価し感情を起こします。
 このように、現場での心の用い方は、無評価ではすみません。だから、マインドフルネスでも、対人場面での対処法を織り込んだ自己洞察マインドフルネスで、何とか治りますが、支援は簡単ではありません。時間がかかります。

 こういう手法をアドバイスするためには、支援者が時間と対面の手間をかけなければなりません。医師は、薬物療法であまり時間をかけずに診療しています。それで経営がなりたっています。

 日本での、健康保険制度では、医師が提供できそうもありません。精神科医の和田秀樹氏が、この状況を説明しています。

 「精神科領域でも治療薬の開発が進み、患者さんの約6割は薬物療法で改善する。」

 「とはいえ、問題はPTSD(心的外傷後ストレス障害)など、薬が効かない残りの約4割の患者がいることだ。治療は長時間かかり、診療報酬では採算が取りにくいが、心理療法に取り組むしかない。そこで、精神科は自由診療として診察しようとするが、患者としては高額な医療費がネックとなる。・・・・患者には敬遠されがちだ。」 (雑誌「プレジデント」2022.3.4号 特集「精神科、心療内科のウラ側」)

 こんな事情があります。薬で治らない患者さんに、医師が心理療法を提供すると、多くの時間がかかるので、高額の治療費を患者が負担しないと経営がなりたちません。高額だと患者が受けないので、医師は心理療法のみをやっていけません。結局、医師は心理療法を提供できません。

 では、心理カウンセラーはどうか。これも、かなりの治療 費を患者が支払ってくれて、相当数の患者がいれば、心理カウンセリング所として経営がなりたつのですが。

 和田氏は、こういう状況も教えています。もう、真剣に対策をとらないと、うつ病が一定の割合残る状況が続き、自殺がなくならないでしょう。薬が効かない人に心理療法を提供する制度を作るべきです。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3670
★うつ病は現在の抗うつ薬(セロトニン神経に作用)では限界がある
 (最近のうつ病の研究では、ミクログリア細胞から分泌される炎症性サイトカインによって、前頭前野、島皮質などに炎症が起きている。セロトニン神経に作用する抗うつ薬では、そこを十分回復させないためではないか。=大田)
 https://blog.canpan.info/jitou/archive/3358 (島皮質)
 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4873 (島皮質)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4448
★日本にあるものを見ないで、外からの輸入ばかり

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4067
★「科学者たちはこの分野を研究したくないのです」   うつ病、自殺念慮の改善の治療法も本務として研究できるひとがいないようだ。アメリカの研究を待つ状況。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4263
★社会には様々な問題で苦しむ人々がいるのに 臨床しない専門家は「私は幸福だ」と自己満足


https://blog.canpan.info/jitou/archive/4839
【連続記事】一体どういうリソースなのかー2022年


https://blog.canpan.info/jitou/archive/4976
★(13)皆さんの地元に薬物療法で治らないひとを支援するマインドフルネス心理療法のカウンセラーは不要ですか 〜 10年前も

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4940
★(12)心理士による心理療法も普及しない

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4939
★(11)現在の制度のままでは医師は経営的に精神療法を提供できそうもない
 和田秀樹さん
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4834
【連続記事】一体どういうリソースなのかー2021年
 =薬物療法で治らないうつ病などが治るような長期的な支援をして自殺を減少させるのは
Posted by MF総研/大田 at 20:33 | 自殺防止対策 | この記事のURL