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価値実現のネットワーク [2021年11月20日(Sat)]
【目次】痛み・痛みの緩和

慢性の痛み 〜 慢性の「身体の痛み」がどうしてSIMTで治るのか(2)
 〜 価値実現のネットワーク

 マインドフルネスSIMTの1年前後の実習によって、慢性のうつ病、パニック症、痛みなどが改善する事例を多くみた。どうして、SIMTで改善するのだろうか。

島皮質の低下が改善する

 これらの疾患に共通に見られる機能低下している部位が「島皮質」である。この機能は、こうである。

 主観的価値の評価に関わる脳領域群は2つのタイプの領域に分類できるという(乾110)。一つは、上記の眼窩前頭皮質、前帯状皮質、側坐核である。もう一つは、前島、背側線条体、背内側前頭前野、視床などである(乾111)。
 「内受容信号と外受容信号の統合および主観的感情状態の生成には、島皮質が中心的役割を果たしている(乾49-50)。」
  島は意識的で主観的な感情の中枢である(同26,115)。
 「島には多くの種類の情報が来て後方から前方へと処理が進められるが、なかでも前島は、視覚、嗅覚、味覚、聴覚、体性感覚など多くの種類の情報を統合する(乾81-82)。」

 島には、様々な情報が入力される。側頭葉(ここに視聴覚など外的感覚が入力される)、内受容信号(内臓感覚)、ホメオスタシスの運動機能(視床下部、扁桃体)、環境刺激(嗅内野)、側頭極)、快楽状態(側坐核、眼窩前頭皮質)、モチベーション、社会的認知的要因(前帯状皮質、腹内側前頭前野、背外側前頭前野)などがある(乾82図)。 これを図にしたものである。
2021-4-価値づけ3.jpg

 側頭葉には外的感覚の情報が集まる。この島皮質には、外的感覚(見る、聞くなど)も内的感覚(内臓から)の情報も、感情、報酬評価、行為選択までの情報が集まっている。島皮質がこれらを統合する機能は、マインドフルネスSIMTで意志作用にあたる。
 マインドフルネスSIMTにより観察するのは、意識現象のすべてである。 次のように図で示す。
2021-4-こころの階層.jpg

マインドフルネスSIMTの構造と島皮質の対応

 SIMTでいう「本音」と比較評価は、扁桃体、前帯状皮質や眼窩前頭皮質の機能であり、価値の想起が側坐核の機能であり、行動の決定が淡蒼球の機能にあたる。外的感覚は、側頭葉から島皮質の情報にあたる。 これらのすべてを現在進行形で観察評価し行動選択する働きをSIMTでは、「意志作用」と呼ぶ。見た聞いた感じた(内臓感覚や症状など)ものが不快であっても、価値を想起して価値実現の行為や発言は何かを結果を評価して選択し表出する。それは、脳では「島皮質」の機能に該当する。

慢性のうつ病やパニック症が治るわけ

 慢性のうつ病やパニック症のクライアント(患者)は1年ちかく、意志作用の実践を繰り返す。一人で考えている場面や 対人場面は過去の想起、未来の予測で感情が起きた時、また、対人関係で感情が起きた時、本音を観察し、感情が起きた理由を評価して、価値的反応をするようにトレーニングする。その実践を繰り返し行うので、島皮質が炎症を起こしていても、少しそこを動かして血流が生じて、SIMTのトレーニングは、島皮質の本来の機能を動かすというリハビリテーションのような実践にあたるのだろう。 このことによって、眼窩前頭皮質、前帯状皮質、側坐核、淡蒼球、島皮質の機能が正常化して、うつ病などが治癒すると考えられる。

慢性の痛みも改善する理由

 慢性うつ病・パニック症などに併存していた「慢性の痛み」が改善する理由はどうしてだろうか。意志作用の繰り返しのトレーニングによって、少しづつ実践効果を感じるのでクライアントは、喜びを起こすことで、ドーパミン神経系が活性化し、側坐核に価値実現の反応が学習されて保存されて、不愉快な出来事があっても、価値実現の反応を選択することが容易になる。結果、日常生活で喜びを感じることが多くなる。治るだろうという未来の報酬予測が強まり、一層、SIMTの課題を実践する動機づけが起こる。こうなると、ストレスがあっても衝動的な反応少なくなるので、慢性ストレスが慢性ストレスではなくなっていって、ストレスホルモンや炎症性サイトカイン分泌が少なくなり、痛みをひきおこしていた部位の炎症が治癒していくのではないか。慢性の痛みがSIMTで治癒する理由をこのように推測する。

 慢性の精神疾患や慢性疼痛で苦しみ続ける人が大変多いのだから、 マインドフルネスSIMTを試してほしい。そのためにも、臨床試験をする医療機関が現れてほしい。

 こういう対策は、市町村単位では対策をとりにくい。広域の都道府県規模で対策をとってもらいたい。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/1807
★2009年の記事。県単位で慢性の疾患に薬物療法以外の支援対策をとらないと、自殺が2万人くらい継続するだろうと予測していた。

【参照文献】
乾敏郎(2021)『感情とはそもそも何なのか』ミネルヴァ書房.
仙波恵美子(2010)「ストレスにより痛みが増強する脳メカニズム」
日本緩和医療薬学雑誌、3号

栗原里美、石村郁夫(2016)「慢性疼痛研究の動向と今後の展望
〜心理社会的側面に焦点を当てて〜」
東京成徳大学臨床7心理学研究、16号

高橋大樹etc.(2019/9/17)北海道大学 プレスリリース「慢性痛が気分を落ち込ませるメカニズムを解明」

大田健次郎(2013)『うつ・不安障害を治すマインドフルネス』佼成出版社
(本音の評価、価値実現の行為選択までを含むマインドフルネスSIMT)
【新しい記事の目次】痛み・痛みの緩和
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4867


【別の記事の目次】痛み・痛みの緩和
http://mindfulness.jp/kunou/fl-itami/ix-itami.htm

Posted by MF総研/大田 at 20:19 | 痛み | この記事のURL