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(8)がんや難病の患者の死の不安 [2021年07月21日(Wed)]

(8)がんや難病の患者の死の不安

 がん患者ががんであると医師から告知された後で、自殺することがあるのですが、うつ病になったと思われます。前に述べたとおりです。このような苦悩はやはり支援方法があるべきです。

 詳細に検討しなければなりませんが、次の二人の歌をご覧ください。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/1020
 殺人を犯した死刑囚・島秋人の歌。
    この澄める
    こころ在るとは
    識らず来て
    刑死の明日に
    迫る夜温し
 死刑を宣告された。獄中で、仏教の実践をして、悟りを得たと思われます。あす、執行されると聞いた夜。相手の人格の根底の尊厳を知らずに事件を起こしてここに来てしまった。もし、事件前にこの根源を知っていれば、事件を犯さなかった。同時に、死の受容も感じとれます。 悟りを得ても、いや、それであってこそ、罪が消えるわけではないことを確認し、死に向かっていったのでしょう。
 がん患者さんもなれるならば、その自己探求の支援は、ターミナルケアになるにちがいありません。

 この歌と同じような境地の歌が、哲学者、西田幾多郎の次の歌です。
    我が心深き底あり
    喜びも憂いの波も
    とどかじと思ふ
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3496
★道元禅師が「自己もと道中にあって、、、」と同じことをさしていると見るひとたちが多い。 良寛、西田幾多郎、西谷啓二、鈴木大拙、井筒俊彦、平塚らいてう、秋月龍a、竹村牧男、・・・。
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3022
★自己の根源

 がんや難病になって、うつ病になりかねない人々に、こういう境地に近づくような心理的な支援が貢献することは間違いないでしょう。死を意識する人、余命何年、何か月と覚悟する人が多いわけです。 こういう死を意識する人の心理的な支援は、薬物療法では絶対にありえないことでしょう。 どうしても、心理療法、精神療法でなければなりません。しかし、その支援活動には、相当の時間とエネルギーをさくことのできる人でないとできないでしょう。こういうことをするひとは多くはないでしょう。
 無評価観察のマインドフルネスがブームになる前に、深く自己の探求を深めていく禅や西田哲学が、日本にはありました。昭和時代にありました。 西田哲学もその生活化実践化が遅れています。
 お孫さんの嘆きです。
   https://blog.canpan.info/jitou/archive/3495
 宝が活用されていないのです。活用が始まったばかりです。

 もちろん、苦悩は深く広く、この深い禅、仏教、マインドフルネスSIMTでみな解決できるはずがありません。しかし、それでも、治りにくいとされていたうつ病の一部でも治るということがわかれば、さらに新しい方法を開発することができるはずだと思われるに違いありません。 他の支援方法との協同で、そういう可能性があることを予感しています。
 今、このレベルの最も深い根源の探求の本を執筆中です。この本は患者さんのための本ですから臨床する人には、出版の後、現場の臨床する他の支援団体との協同でさらに応用領域を広げていけるのではないかと期待しています。

http://mindfulness.jp/sdgs/20-02-target3-4.pdf
 うつ病は、この記事のように、実に多様な現場で起きています。 みなさんの家族、親戚、知人、教え子、組織の重要な部下、同僚、檀家信者などがそうなる可能性があります。 しかし、うつ病になると、薬物療法や従来の認知行動療法では治りにくい人がおられます。
 この治りにくいうつ病の治療法の解決計画が見えていません。計画があるのかどうか知らされていません。これで、いいのでしょうか。あるのならば広く公表していただきたい。治らないで苦しむ人が希望を持つことができます。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4834
【連続記事】一体どういうリソースなのか
 =薬物療法で治らないうつ病などが治るような長期的な支援をして自殺を減少させるのは
Posted by MF総研/大田 at 22:59 | 自死予防対策 | この記事のURL