(1)国籍、民族、宗教で対立、支配、殺戮=学者の学問の形で正当化も [2020年08月25日(Tue)]
【書籍紹介】『アイデンティティが人を殺す』
アミン・マアルーフ、小野正嗣訳、筑摩書房
国籍、民族、宗教で対立、支配、殺戮https://blog.canpan.info/jitou/archive/3853 【書籍紹介】「正しさをゴリ押しする人」(榎本博昭、角川新書) 専門家の多数決のエゴイズム オルテガも専門家を批判していました。 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4100 【目次】NHK Eテ レビの「100分de名著」 「大衆の反逆」オルテガ、中島岳志、NHK出版 多数という「驕り」 (スペインの哲学者、オルテガ・イ・ガセット) 「モモ」も、そのようにも、解釈できます。 『アイデンティティが人を殺す』という書物もそうです。 初期仏教の経典、大乗仏教の経典、道元禅師の著書(『正法眼蔵』など)、膨大なテクストがあります。こういうテクストは変化しませんが、解釈が歴史によって、個人によって変化するのです。(ただし、道元禅師のテキストは改変されたことがあることもあるとわかっています。) ◆テクストは変化しない、解釈が変化する 教義の解釈は歴史的に変化しています。 「テクストは変化しません。」(p63) 「いくら聖典を読みふけり、さまざまな注釈を参照し、いろいろな論拠を集めてみたところで、矛盾する異なる解釈はつねに存在するものです。同じ書物に依拠しながら、奴隷制度を受け入れることもできれば批難することもできる。偶像を崇めることもできれば火に投げ入れることもできる。」(p62) 「あらゆる人間社会は何世紀ものあいだ、その時々のおのれの行動を正当化してくれそうな言葉を聖なる書物から見つけ出してきました。」(p62) 「テクストは変化しません。変わるのは私たちのまなざしなのです。しかしテクストは、私たちのまなざしを通じてしか現実世界に作用しません。そしてまなざしがどの文の上でとまり、どの文を見過ごしてしまうかは時代によって変わるのです。」(p63) 大学などでは、ある分野の学者は一人しかいなくて、学生はたいてい、その人の解釈のみを教えられます。学者が自分のまなざしで探して解釈したものなので、膨大な文献の中から多様性ある核心をみな教えてくれないことはよく起きています、現在も。 一例として、大乗仏教は、自内證、利他、自己成長が核心であったとします。それを従来教えてくれた学者や書物があったでしょうか。 別の例として、道元禅師の「正法眼蔵」から、多くの哲学者は、絶対に対象にならない働きがすべての人の内奥に働いていることをいうと解釈しています。しかし、道元研究の学者がそういう解釈をしているのを見つけることは容易ではありません。 竹村牧男氏の本には30年以上も前に接することができました。(この本は最近の本ですが。) また、道元禅師は、坐禅のみを重視したという解釈をする学者もいれば、道元禅師にも、自内證、利他、自己成長を重視する言葉も見つけることができます。 坐禅のみの重視では、こういうことは関係なさそうに解釈されます。 「坐禅を重視したのか、利他は重視しなかったのか、それなら、悩む私には役にたたないな」と思われ、寺離れが起きるのは避けられないでしょう。「道元禅師は何かを食べて生きていたのだろう。在家からの布施ではなかったのか、何もお返しの教えを伝えなかったのか、坐禅だけか。武士や農民にもそれだけか」という疑問も持たれます。 とにかく、仏教や禅の学問は解釈がまちまちです。現在の自分の生き方に貢献できるのか、わかりにくいのです。 アミン・マアルーフ氏は、イスラム教やキリスト教の聖典の解釈の歴史的変遷について述べています。仏教の解釈も時代、学者によって変化しました。 (続く) 【書籍紹介】『アイデンティティが人を殺す』 アミン・マアルーフ、小野正嗣訳、筑摩書房 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4649 (19)人間の尊厳や自由が阻害されている https://blog.canpan.info/jitou/archive/4648 (18)絶望してはいけない https://blog.canpan.info/jitou/archive/4646 (17)民主主義的に見える多数決で決めてはいけないことがある https://blog.canpan.info/jitou/archive/4645 (16)グローバル化による普遍性と画一性 脇道に入っていますが、また戻りました。
(西田哲学や鈴木禅哲学の共生に通じるので脇道へ入りました) 【連続記事】鈴木大拙・鈴木禅哲学の「共生」の思想 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4635 (8)逆説的な指摘=救済されるべきは多数派 =哲学者 千葉雅也氏 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4634 (5)メディアも支配的な意見を拡声するのみ https://blog.canpan.info/jitou/archive/4633 (4)アイデンティティが人を殺す https://blog.canpan.info/jitou/archive/4632 (3)どう戦うか https://blog.canpan.info/jitou/archive/4631 (2)人間の普遍的諸権利は何にもまして優先 https://blog.canpan.info/jitou/archive/4630 (1)テクストは変化しない、解釈が変化する |
Posted by
MF総研/大田
at 19:36
| さまざまなマインドフルネス
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