• もっと見る
«幸福は3つの共振 | Main | 超越的幸福»
昨日は、マインドフルネス瞑想療法士の認定講座の第7回でした。 [2019年12月16日(Mon)]

マインドフルネス瞑想療法士認定講座の第7講義

 昨日は、マインドフルネス瞑想療法士の認定講座の第7回でした。

 最近、欧米の「マインドフルネス」には、いくつかの問題が指摘されてきましたので、どういうことなのか焦点をあてながら、「初期仏教」を概観しました。

 自己の意識現象を観察することは、初期仏教、禅、西田哲学にありますので、その哲学と観察方法を学習します。8回目が「道元禅」にある人間哲学、9,10回目が西田哲学にある人間哲学です。それぞれ、観察の方法があります。両方とも「超越」まであります。それが哲学者の一致した見解です。

第7講義  初期仏教の実践と哲学思想の問題

第1 テキスト
「マインドフルネス心理療法入門講座7回目レジメ」
(A)『マインドフルネスSIMT基礎講座 第7』
   =初期仏教の実践と哲学思想の問題
(B) 『初期仏教のマインドフルネス 〜 「正念」の方法』
(C) 『パニック症と広場恐怖症』
(D)『初期仏教のヴィパッサナー瞑想の現代的活用と検討』

第1 初期仏教にある正念とマインドフルネスの問題

1)マインドフルネスは哲学なしでいいのか
  ビパッサナー瞑想は、
  東南アジア諸国に伝わるパーリ仏教の方法
  釈尊の直説ではない。
2)三世実有・六道輪廻
3)初期仏教の解脱・涅槃・悟り
4)僧侶の修行の進度・聖者に4段階
  最高の阿羅漢になれることはとても難しくて、もう一度生まれ変わってから解脱するなどの思想がある。
5)高度の禅定(滅尽定)を目指す
6)ダルマの実体視
7)世界の構成要素=五位七十五法
   これを実体視視した(大乗仏教から批判された)
8)四諦・八正道
  八正道のうちの「正念」は経典にどう記述されていたか。世界、自己の構成要素を75に分析して、すべてを観察する。もちろん、アメリカの「マインドフルネス」が強調する「感覚」「思考」「行為」も含まれる。エゴイズムの心理を含むが、アメリカのマインドフルネスはこれが強調されない、
   アメリカのマインドフルネスMBSRの観察するのは、ごく一部。

第2 大乗仏教が批判した初期仏教の問題

1)大乗と初期仏教の違い
 家庭、職業を捨てる初期仏教。大乗仏教、日本仏教は家庭職業の中で至誠の実践。
2)三世実有・法体恒有の批判
 すべての人間の根底の絶対平等性が言われない。
3)初期仏教には利他がないという批判
 家庭職業を持たず自分たちだけ戒を守り修行して、六道輪廻からの解脱を求めていくので、社会での問題解決から離れていて「自利」だと批判された。家庭職業の中で、下のような深い哲学を体験的に証明して苦悩から解放されるべきで、当然、すべての人がこの人生で(六道輪廻でなく)苦悩を解決して社会創造に参画していく哲学と実践が大乗仏教で強調された。

第3 現代の仏教学、哲学からの批判

1)仏教学者禅学者からの批判
2)西田幾多郎による初期仏教批判
3)他の哲学者からの問題指摘

 総合すれば、「四諦四諦八正道」として整理された初期仏教の思想哲学、実践は、「六道輪廻からの解脱」を目標として体系づけられていて、家族、職業を捨てた純粋の出家が行うほうが有利となっているもの。しかもなお、最高の阿羅漢になれるのは難しくて、生まれ変わってから阿羅漢になれる段階などがある。
 現代のように家庭、職業を持つ人が、その中で至誠の実践をして、本音(初期仏教で煩悩といったものに類似)や人間の自然の愛情(人や社会に対する)を滅尽することなく、至誠の工夫をしながら悟りを得ることができるという後世の禅(道元禅師、禅ではないが西田幾多郎、鈴木大拙、井筒俊彦など)とは異なる。
 初期仏教は、「人を殺さない」という倫理もあって、戦争の現場で活用できるものでもない。無評価のマインドフルネスは、欲求、意志、行為などにある倫理的心理を観察しないので、軍事利用や悪用されるおそれがある。
 欧米のマインドフルネスは、宗教を排除するというが、そういう排斥ではなくて、宗教的レベル(超越)の幸福も、日本の哲学者(青山卓央氏、山口尚氏)が紹介してくれた。欧米のマインドフルネスも、超越のマインドフルネスも必要なひとがいる。それぞれの強みを生かして「共生」していけばいいのだろう。
 現代のマインドフルネスは、フランクルがいうように、人類共通の実践であり、「仏教」という必要はないかもしれない。宗教の違いを包含して全人類に共通であるから、仏の教えという必要もないかもしれない。

 仏教者も研究していただきたい。哲学者は真剣に精緻に考察している。一般市民には、その情報も入る。仏教僧、仏教学者の解釈が浅い、真剣でないことが比較されて、市民が仏教からいよいよ離れていく。仏教が亡びるおそれがある。
 大乗仏教の各派も現代に活用できる方法を含んでいるのではないか。各教団が現代に活用する開祖の思想と方法を研究してほしいものと思う。そうでないと、若手の僧侶や檀家に他のすぐれた生き方の情報が入ってくる現代では、亡びるおそれがある。
 うつ病、不安症、PTSD、過食症、はほんの一部。日本的マインドフルネスは、ひろく、深く活用できるだろう。


第4 パニック症と広場恐怖症

参照:テキスト『パニック症と広場恐怖症』
 不安症/不安障害のなかでも、割合多いのがパニック症である。 広場恐怖症と併存することがある。
パニック症と広場恐怖症もSIMTでよく改善している。

詳細は機関誌「マインドフルネス精神療法」第2号

第5 SIMTのセッション7
セッション7は、不快事象の受容

不快なことを受けいれる洞察実践を整理します。 これまで、断片的にトレーニングしてきましたが、現実の人生には受け入れがたいことがおきるのが当然、必然という哲学を理解し、実際受け入れます。 そして、その中でも、自分の生きがいを感じることをみつけて生きていきます。 社会の中で生きているので、社会の中に生きる道をさがしみつけます。 まとめです。家庭、職場、仲間の中で起きる「小さな不快事象の受容」で、トレーニングします。大きな不快事象の受容も基本的には同じです。

次回は、マインドフルネスのための道元禅入門
 深い人間哲学と真剣な観察実践(ほとんど知られていない道元禅の素顔)
Posted by MF総研/大田 at 07:43 | 私たちの心理療法 | この記事のURL