CANPAN ブログ検索
Loading
  • もっと見る
«激しい痛み・線維筋痛症 | Main | 大江健三郎 『燃えあがる緑の木』(3) »
大江健三郎 『燃えあがる緑の木』(2)祈り、集中、注意 [2019年09月22日(Sun)]

大江健三郎 『燃えあがる緑の木』(2)祈り、集中、注意

 =マインドフルネス心の世界遺産

 HKH Eテレビが、ノーベル文学賞を受けた大江健三郎さんの小説を紹介しています。もう、3回目が終わりました。明日、最終回 です。
 『燃えあがる緑の木』神のない信仰がありうるかを探索した物語。

 この小説の中の、重要な言葉として「集中」があります。祈り、瞑想も関連します。だから、この小説は、マインドフルネス、宗教(仏教、キリスト教)、自己とは何かという哲学との関係が深いのです。

 3回目は、テレビとテキストとでは、かなり重点のおきかたがちがっていました。テレビは、筋の展開が中心でした。「集中」については簡単な説明でした。 テキストのほうでは、かなり詳細な解説があります。

 燃えあがる緑の木の教会で、メンバーの分裂騒動が起きます。最も重要な「集中」も理解がバラバラのようです。

「集中の対象に何があるのかは、「救い主」とされたギー兄さん自身にもわかりません。」 (p92)

 「きみの教会に、神はいないんだって!」
 「空屋のごとき教会」と形容もします。ギー兄さんは、その「空屋」という比喩を「繭」にたとえて、ザッカリーに同意します。」(p92)

 「その繭に向けて集中する強さということは、把握しえていると思う。 しだいに手ごたえの確実になる、生きることの習慣として。」

 ブームの「マインドフルネス」も「集中」といいますね。ただし、ギー兄さんのものは次のようなものです。かなり違うようです。オウム真理教の予言のようだという評価がありましたが、「マインドフルネス」の予言でもあるようです。実践はさまざまな解釈が可能であり、仏教も分派しました。

 「空屋の教会でどうしてよくないだろうか?」 そのなかを充たすのは、またそこから現れるのは、さきにもいったけれど、ソレのというか神のというか、先方の仕事でね。こちら側の責任ではないはず、と私は思っているんだ。」(p93)

 とても深いことを言っています。キリスト教のエクハルトが似たことを言っているのです。

 解説の小野さんは、このように言います。

 「大切なのは、集中することを、生きる習慣とすることなのです。そのような生き方こそが、ギー兄さんにとって魂のことをすることにほかなりません。このとき、集中するとは、あるものに対して注意を深く強く傾けることです。」(p93)

 マインドフルネスと似ていますが、静かな場所で感覚などに集中ではなくて、生きる価値あるもの、人生の意味にであろうと思います。
 その時に、我(が)、独断、エゴイズムが問題になります。我があれば、先方の働きが現れないでしょう。我がない時に、「神のというか、先方の仕事でね。こちら側の責任ではないはず」ですから。

 作者の大江健三郎さんは、日本では親鸞聖人や道元禅師の教えに似たことを言っているように見えます。「生きる習慣」という言葉がありますが、西田哲学の「行為的直観」に似ています。「人生の習慣」です。この時に、我をもちだすか、我を捨てるかを、ギー兄さんは言っているようです。西田哲学は、我がある人の現れは行為的直観で、我がない時に「創造的直観」といっています。

 この小説は、人生の生き方、宗教について問題にしているようです。「神のない生き方、神仏のない宗教があるかないか」もテーマでしょう。フランスの哲学者、アンドレ・コント=スポンヴィルも「神なき時代の哲学」を提案しています。西田哲学の最奥の絶対無、そして日本の深い禅の真の自己は「対象的な絶対者」ではないので、大江さんと似ているかもしれません。
 明日が最終回です。テキストは内容がわかりますが、テレビはどこに焦点をあてるのか楽しみです。

参照
「100分で名著 燃えあがる緑の木」小野正嗣、NHK出版

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4369
【1】

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4373
【2】
★「マインドフルネス心の世界遺産」の索引です
http://mindful-therapy.sakura.ne.jp/sekai-isan/mokuji-sekaiisan.htm

【目次】このようなところに活用できそう
 マインドフルネスSIMT 2019

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4243
Posted by MF総研/大田 at 12:10 | 深いマインドフルネス | この記事のURL