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宗教レベルのマインドフルネス(1) [2019年05月27日(Mon)]

宗教レベルのマインドフルネス(1)

 がん患者さんのように、死が近いことを意識した人は、宗教のことを知りたがるひとが多いそうです。しかし、難しいのです。

 「あの世」があるといって、「あの世について」語って満足できるひとだけではないでしょう。キリスト教徒でありながら、禅をきわめて、西田哲学、鈴木禅学、キリスト教神学にも詳しいひとが、「あの世」にいくような「霊魂」はないと断言しています。

 「はっきりいって、私は「あの世」を問題にしません。私は禅者ですから、「即今・此処・自己」しか問題にしません。私の宗教においては、あの世など要らない話なのです。ですから私は宗教を語る場合に、あの世についていっさい何も考えません。」(秋月龍a(2001)『現代を生きる仏教』平凡社ライブラリー、61)

 「この梅原氏のいう「魂」という考え方は、はっきり申し上げますが、仏教のものではありません。仏教は「霊魂」というものの存在を認めません。「自我」とか「霊魂」とかいう実体の存在を認めません。その意味では無霊魂論です。」(66)

 「あの世など持ちだして、安心して死なせるのが死の医学だというのは、宗教としては認めがたい、ということを改めて確認した上で、我々の問題である「よく生きる」という問題を考えてみましょう。」(158)

 道元禅師も、死んだら抜け出ていくような霊魂はないといっています。 「あの世」があるという宗教もあるようですから、それを求める患者さんには、そちらを紹介して、それを活用していただけます。そうではなくて、あの世があるとは思えないが、どうしたらいいのかという人には、秋月氏がいうような禅仏教、西田哲学的生き方をアドバイスしていくことができます。

 宗教レベルのマインドフルネスはむつかしさがあります。しかし、苦しむ人が多いので、必要です。西田哲学では「人格的自己」にあたります。死の苦悩だけではなく、人格否定の苦悩(パーソナリティ障害、虐待や犯罪の被害者や差別された人で人格否定の苦しみを持つ人)にも関係しますから、必要です。

(続く)
【目次】第4世代の認知行動療法、第5世代の認知行動療法?
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4236
Posted by MF総研/大田 at 18:00 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL