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(8)「生きている死者」の存在 [2019年02月27日(Wed)]

(8)「生きている死者」の存在
  「大衆」は過去にいた偉大な死者を無視する
 =多数派の驕り、「大衆の反逆」スペインの哲学者オルテガ

 NHK Eテレビの「100分de名著」で放送されたが「オルテガ」です。 中島岳志氏の解説でした。(評論家、東京工業大学教授)

 中島氏はオルテガの文を引用して、わかりやすく解説しておられました。原文が引用されているのですが、中島氏の説明文をみます。

 第3回では「死者の民主主義」について語っています。現在は、過去の積み重ねであるのに「大衆」は過去を無視します。

 過去、偉大な蓄積がある。過去を無視してはいけない。死者の意見も聞くべきだ。オルテガはいう。

 「社会で多数派を占めているからといって、その人たちが 勝手に何でもきめたり、変えたりしていいということにはなりません。過去の英知や失敗の蓄積の上に現在があるのだから、いま生きている人間だけによって、既存のとり決めを何でもかんでも変えていいわけがない。」(p65)

 「過去からの教訓や制約に拘束されない民主制は非常に危うい、過去と協同せず、現在の多数派の欲望だけから解決策を求めようとすると必ず間違える、というのが彼の考えだったのです。」(P66)

 「いかにいま生きている人間の多数派が支持しようとも、してはいけないとり決めがあるというのが立憲主義の考え方なのですが、そのことをオルテガは踏まえている。」(p66)

 オルテガは、大きな政治のこと、ファイスズムや独裁主義を念頭においているのですが、団体や組織でも、こういう政治的なかけひきが起こります。
 社会に貢献していた団体の中に、新しいメンバーが入ってきて、過去の方針を無視して、質のおとることを多数決で決めることがあります。
 また、解釈や哲学が分かれる問題を抱えた団体が、過去の手本や古典、議論を検討もせずに、多数で結束して少数派を排除するならば、オルテガから厳しく批判されます。

 人権侵害やハラスメントも多数決で決めることはできません。 私は、仏教、禅、マインドフルネスなどをかじっていますが、やはりオルテガのいうように、多数決で決めるものではないなという気がします。過去に生き、死んだ人たちの意見を十分に検討するべきです。 仏教やマインドフルネスも多数決で決めるものではなくて、過去の議論を検討すべきです。仏教のありかたを批判した大乗仏教や道元や西田幾多郎などを無視してはいけないでしょう。「死んだ人たち」ですが、過去の偉大な意見を検討して、時代に合わないことは捨てて、よきものは拾う、足りないものは加えることが必要でしょう。

 たとえば、「マインドフルネス」はどうなのでしょうね。歴史を検討せずに、これからは、四諦八正道でいくと多数決で決めてもいいのでしょうか。「観察」の範囲や方法も歴史を検討しなくて多数決で決めるのがいいのでしょうか。開かれた定義がいいのではないでしょうか。 仏教や禅にも「観察」があります。それは「宗教」であって、「科学」ではない? 「マインドフルネス」は宗教ではなくて、「科学」である? ポージェスのポリヴェーガル理論で批判されましたが?? 多数決ではなくて、議論を重ねていきたいですね。そうしないと、オルテガが糾弾する「大衆」になるおそれがありますよね。「仏教」にも少数派ですばらしい学説が発表されましたし。
 ガブリエルは、もっと大きな問題を心配しています。独裁、民族の違いによる人権無視、戦争や核攻撃、人類滅亡の危機があります。

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Posted by MF総研/大田 at 21:29 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL