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(8)今こそ哲学が必要とされる時だ、知りたい市民を抑圧してはいけない [2019年02月20日(Wed)]

ドイツの哲学者ガブリエルと西田哲学
 =日本的マインドフルネスの構築のために

(8)今こそ哲学が必要とされる時だ、知りたい市民を抑圧してはいけない

 ガブリエルから見れば、日本の市民は発言、思想などの自由を奪われているようです。他者の意見を聞こうとない権威者がいるのです。上司、長老などに正論でも言えない、言えば排除される、自由な活動ができない。こういう状況を私も知っている。この読者も束縛されている人が多いだろう。こわくて、正論を言えない。

 「日本は明らかにとても締まったソーシャルネット、社会的な網がある。だから、君が動けるスペースは非常に限られている。そしてそこから抜け出せば、基本的に、社会でのメンバーシップを失う。そして人々は、それを恐れる。それは、まさに日本の社会における非民主主義的な要素だ。」(p71)

 こんなことをしている時ではない。社会が破壊される危機の時代だ。

 「僕らは今深い危機の時代の中にいる。民主主義、気候変動、中東の破滅の可能性などの危機だ。危機の時代なんだ。危機の時代に何が起こるかと言うと、新しい観念が必要になってくる。われわれは、今何が起こっているかを理解する必要が大いにある。
 そしてもし僕らが今何が起こっているのかを理解しないとすれば、僕らはおそらくこちらに向かってくるものさえ見えない力によって破壊されてしまうだろう。そして今こそ公的な領域で哲学が必要とされる時だ。僕らがどこに立ち、これらが何を意味するのかという哲学的な内省をする時だ。」(p155−156)

 もはや時代が違う。昔のものは通用しないかもしれない危機の時代だ。若手や市民が真実を知ろうとする意志を尊重してもらいたい。さもないと、みんなの家族や子孫が殺されるかもしれない、自殺するかもしれない、戦争になるかもしれない。社会が破壊されるかもしれない。ガブリエルのいうことを私はよく理解できる。権威あるものが自分の利益、面子、地位を保身のために、学問、活動、発言の場を奪ってはいけない。

 ガブリエルは、日本に深い哲学があることを知っているから、こういう発言をしたのだ。私の研究領域では、仏教の学問、禅の学問、マインドフルネスの科学、精神疾患の学問、人間の平等、人格の尊厳、生と死の哲学(若者たちはどう生きるのか、がん患者や高齢者のメンタルケアに関係する)、戦争で殺してはならないことなどの哲学や学問が、ガブリエルが言おうとしている日本の哲学に関係が深いのだ。
 日本の多くの(それでも当時は少数派だったが死んだ偉人の累積人数は多い)過去の偉人が教えてくれたのに、「大衆」が知ることの「壁」を作っているかのように見える。過去の人に学ぶべきだ。スペインの哲学者オルテガもそういう。「こころの世界遺産」が日本には多い。


『マルクス・ガブリエル 欲望の時代を哲学する』丸山俊一、NHK出版新書
https://blog.canpan.info/jitou/archive/4094
【目次】ドイツの哲学者ガブリエルと西田哲学
 =日本的マインドフルネスの構築のために



https://blog.canpan.info/jitou/archive/4100
【目次】NHK Eテ レビの「100分de名著」
「大衆の反逆」スペインの哲学者オルテガ、中島岳志、NHK出版
 多数という「驕り」
Posted by MF総研/大田 at 22:40 | さまざまなマインドフルネス | この記事のURL