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利を追わない経営 [2018年12月08日(Sat)]
【書籍紹介】「幸福学X経営学」(前野隆司、小森谷浩志、天外伺朗、内外出版社)

幸福学.jpg

「幸福学X経営学」
 〜次世代日本型組織が世界を変える

 本の内容は、こちらに紹介されています。

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000043.000021817.html

マインドフルネスSIMTからの感想(5)

 この本の感想を続けます。今回は、第3章第2節の2回目です。

 第3章 「これまでの経営学 これからの経営学」(執筆は小森谷浩志氏)
    第2節 これからの経営学はどこに
      2.利を追わない経営

 これまでの経営学には、手法病、計画病、分離病と3つの病がある。
 3つの病の裏には、安易な効率主義が隠れている。さらに、その奥底には、操作欲求と恐怖が加わり、病を深く重くしているという。(p160)
 こうした、病を克服している企業には何があるのだろうか。これからの経営学はどこにいくべきか。
 これまでの経営学の枠組みにはいらない企業があるという。ホワイト企業大賞(第4章)に選ばれた企業に何度も赴き、従来の経営学の3つの病を覆すエネルギーがわかってきたという。

 3つは、次のとおりである。
1.存在を掘り下げる経営
2.利を追わない経営
3.苦悩を味わう経営


利を追わない経営

 第2の「利を追わない経営」とは、全く意外にみえる。

 「多くの企業は、・・・「利潤の極大化」に躍起になってきました。」
「その一方で、・・・利潤を目的とせず、言うなれば欲を控えめにすることで輝き続ける企業があります」(p166)という。
 いくつかの企業が紹介されている。白鳳堂(広島県)や伊那食品(長野県)、寺田本家(千葉県)では、売上の数値目標を設定しない。
 共通にあるのは、 「利益は目的ではなく、あくまでも健康な経営の結果である。」(p166)という独特の哲学がある。「売上目標があると、売り手の都合で、どうしても顧客に不必要な製品を押しつけることになるから」(p166)
 造り酒屋、寺田本家の経営スタイルを詳しく紹介している。「酒は蔵にいる微生物が作ってくれる。主役は微生物。微生物が喜んでくれることだけを考えている」と謙虚だ。蒸した米をタンクに入れる作業の時、唄を歌いながら行う。「働きやすい環境を作る」「やっている人がいかに楽しくと考えている」と社長はいう。微生物に委ね、社員が働きやすい環境を整える、「力みない奥底からの謙虚さを感じました」(p168)と小森谷氏の感想である。
 こうした寺田本家があるのは、先代の方針転換があるという。病気にかかり、「「生きるとは、人間とは」など根源的な問いにより自分自身を深く見つめ直したこと」と「超常現象との出会い」があった。「絶対の自信家から、「俺が知らないだけで本当はあるんだなあと感情的になった」。「微生物の気持ちがまだ分かっていない」とよく言っていた」。(p169)先代や現当主の言葉が続く。 ここには「自己中心性、我欲から離れたとき、本来の自分、本来の経営が顕現したといえます」という。
 同様のことは、旭山動物園の園長も「利益の追求ではなく、本気で動物のことを考えた。その結果、自分たちもびっくりするくらいのお客さんが来てくれるようになった。」 (p172)
 この項を経営学者小森谷氏はこう締めくくる。
 「利益は追及するものではなく、追及すべきは、自分たちのあり方、思いの実現に向けた掘り下げと、価値創造に向けた工夫の連続です。利益はその結果に過ぎないことが分かります。利を求めない、追わない経営が、結果として利を生み続けているのです。」(p172)

感想を述べたい

 西田哲学は、自己と世界の関係を深く探求したもの。自己と世界とは、根底では一つであって別れていないという。このことは鈴木大拙も古来、日本人にあった霊性であり、あまり知られていないが、知らないことがあるのだという。個人は自覚できていなくても、この真理によってある存在なのであり、自分の内面に直接働きかけても、満足させることはできない。逆に、世界、他者に向かって行動して世界他者が喜ぶ時に、自己に喜びがもたらされるという。利益、満足は、直接向かうものではなくて、世界や他者が喜ぶことをすれば、結果として自分に利益がついてくるということに通じる。
 西田哲学は、自己、世界とはどういうものかという「実在論」が著名なのであるが、世界と自己は別ではない、不一不二であるという実在論を述べたというところがよく知られているが、その自己と世界が一つであるという本質にそった「実践論」の哲学もある。

 それは、「どういきるべきか」ということである。一言でいえば、「至誠」で生きるのだという。自利を考えないことがかえって自己に喜びを与えられる。このことが、上記で紹介された企業の経営理念に現れていると思う。社会のためだけを考えて働け、そうすれば、満足できるということ。世界から喜びと生きる力を与えてくれる。一体である自己と世界の根底から働くものがある。鈴木大拙が日本的霊性、西田幾多郎が実在としては絶対無、働きとしては「至誠」といったもの、井筒俊彦が無分節といったもの、それは動的な働きである。それがすべてのひとの根底にある。だから、強欲でなく謙虚で、慎ましく、他のためになることだけを考えて働く。自己のしらない働きがあり、それに委ねて謙虚で行動しよう、そうすれば、自己を超えたものの働きが自己を生かしてくれる。こうした、日本人の至誠のこころを日本の哲学はいうが、紹介された企業に、類似の精神を感じる。
 こうした経営理念のある会社が日本に多いという。生きがいを感じることができる職場だ。日本型組織、日本の経営学が世界中に広まってほしいと思う。

(続く)

【書籍紹介】「幸福学X経営学」(前野隆司、小森谷浩志、天外伺朗、内外出版社)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3984
★第1章 幸福学が経営を変える

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3986
★第2章 ホワイト企業大賞を受賞した企業の紹介

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4017
★第3章  「これまでの経営学 これからの経営学」
  第1節 経営学とはどんな学問か

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4019
  第2節 これからの経営学はどこに
     1.存在を掘り下げる経営

https://blog.canpan.info/jitou/archive/4020
     2.利を追わない経営

続く
Posted by MF総研/大田 at 22:51 | この記事のURL