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(19)どうすればいいのか日本の仏教 [2018年10月15日(Mon)]

(19)どうすればいいのか日本の仏教
 =ブームの「マインドフルネス」も

 次の本は、日本の仏教者が信じているという大乗仏教は ブッダの仏教ではない、別の宗教だと指摘しています。そして、日本の仏教は大乗仏教の本道、核心から乖離していると指摘した。

『大乗非仏説をこえて』大竹晋、国書刊行会

 日本仏教が大乗仏教の本道から乖離しているという主な点は、「利他」が弱い、人間完成がない、自ら証明する「自内證」がない。
 ブームの「外国から輸入」の「マインドフルネス」もこういう点は弱く「技術」の性格が強い。ただし、アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)やリネハンの弁証法的行動療法は独特の哲学を持つ。ビパッサナー瞑想は、上座部の六道輪廻からの解脱の方向を目指す哲学思想を背景にしている。長く実践していると、そういう方向に行くだろう。

 上記の著者は、諸宗門が上座部のような「マインドフルネス」ではなくて、大乗仏教の本道に立ち返るのが望ましいという。
 といっても、著者が言うように、「日本の仏教諸宗が大乗仏教の本道に戻ることは容易ではない」と前の記事で書いた。

どうするか

 現在の諸宗門が、大乗仏教の本道に立ち返るとすれば、利他、自内證、人間完成をおりこんだものに変革していくのだろう。従来の「宗学」という学問の再検討なのだ。従来の解釈から超え出ていくのだが。本書の著者も悲観的である。

 「したがって、本来、諸宗は上座部仏教を摂取して瞑想を広めたり、諸宗の教えを上座部仏教に引きつけるかたちで改変して広めたりするのではなく、大乗仏教の本道に立ち返るのが望ましいが、しかし、実のところ、もはや立ち返れない地点にまで至ってしまっていると思われる。諸宗はいずれ行きつくところまで行き着くしかない。」(p241)

 従来は年配の僧侶、学者、檀家信者が宗門をささえたであろうが、世代が交代している。次世代の僧侶、学者、国民から支持を獲得できなくて、檀家からも離れて、お寺はどんどん廃寺になっていくかもしれない。

 だが、危機を覚える若手の僧侶、学者が宗学を検討していけば、教えを再構成できる余地はある。 長老がたが、黙認してほしい。自分の子や孫の代に宗門がさらに衰退していっていいはずがない。次世代を担う若手にまかせてほしい、と思う。

 法華経や禅宗の系統の経典、諭書には、「瞑想」があるものもある。たとえば、法華経も瞑想を奨励している。それは、上座部の瞑想(六道輪廻からの解脱のため)とは違う「瞑想」である。大乗仏教の本道を実現するための瞑想である。 瞑想には、多数の種類があるのだ。大乗仏教の目的達成のための瞑想もあり、大乗仏教をこえた瞑想(自己洞察瞑想療法(SIMT)はこれである)もある。また、「瞑想」をしないでも、エゴイズムの心理を反省して、人間完成の方向は実践できる。瞑想は必須ではない。浄土系がそうである。瞑想なくして、大乗仏教の本道に戻る方向を検討すればいい。

 現代の諸宗門も、自分の教えが、現代の「利他」として、うつ病や人間関係の悩みの解決支援ができるかどうか検討してほしい。

 上座部や大乗仏教のような輪廻を前提とはしないでも、大乗仏教を超えた新しい利他、人間完成、自内證は可能である。たとえば、現代の哲学がある。主として西田哲学による。それは輪廻を前提とはしないことができる。 西田哲学も発表されてから70年たつ。不足するところがあれば、加えていけばよい。西田哲学は、すべての人間の平等性をあきらかにしたが、実践論もある。独自の利他、人間完成への実践を詳しく記述している。色あせていないが、70年たつ。正しく理解した上で、不十分と思うところがあれば、修正追加すればよい。

 ところで、この本に書いてあるのが、大乗仏教の最終ではない。この本は文字で書かれているのを理解するので、「世俗諦」である。唯識に「勝義諦」がある。これについて、次に触れておきたい。

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3573
世俗諦と勝義諦


この問題に関して特別講演
2019年1月13日(日曜日) 、午後1時30分から4時30分まで
 埼玉県さいたま市浦和区、埼玉会館で。

★最近明らかになってきた上座部仏教、日本仏教の問題を超えていくために
日本の社会問題の解決のための「利他=マインドフルネス」の危機
どういう道があるか。

講師:大田健次郎(マインドフルネス総合研究所、日本マインドフルネス精神療法協会)
☆更新ポイント2

【書籍紹介】『大乗非仏説をこえて』大竹晋、国書刊行会 【連続記事】【日本では、なぜうつ病などの心理療法が普及しないのか】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3889
【自己保身、「空気」を読む、忖度する】

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3866
『忖度社会ニッポン』(片田珠美、角川新書)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3873
『「空気」の研究』(山本七平、文春文庫)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3875
阿部欣也の「世間」。記事の本のほか『「世間」とは何か』(講談社現代新書)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3853
【目次・書籍紹介】「正しさをゴリ押しする人」(榎本博昭、角川新書)

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3918
『日本型組織の病を考える』村木厚子、角川新書

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3916
『異端の時代 〜 正統のかたちを求めて』森本あんり、岩波新書

https://blog.canpan.info/jitou/archive/3461
『見て見ぬふりをする社会』マーガレット・ヘファーナン、河出書房新社

【連続記事】【日本では、なぜうつ病などの心理療法が普及しないのか】
https://blog.canpan.info/jitou/archive/3889
Posted by MF総研/大田 at 08:24 | エゴイズム | この記事のURL