軽症うつ病には従来の認知行動療法は効果があるかどうか確認されていない [2014年06月13日(Fri)]
軽症うつ病には従来の認知行動療法は効果があるかどうか確認されていない
=だから第三世代のマインドフルネス心理療法が開発された
前の記事で「従来の認知行動療法は、軽症のうつ病には効果か確認されていません」
と延べました。日本うつ病学会のガイドラインに書いてあるとおりです。
すなわち、うつ病が軽くなってからは、従来の認知行動療法では治るかどうか確認した
エビデンスがないわけです。うつ病の重症の時には、極端な「認知のゆがみ」による思考(
認知)を激しく回転させますから、認知療法が効果を発揮するでしょう。
しかし、軽くなってからは、・・・ということは大体、抑うつ症状が軽くなったというのが多い
はずです。ところが、前頭前野の機能は充分回復していない。この時には、気分は悪くあ
りません。治ったかのように感じるので、認知の歪みによる思考を回転させるわけではあり
ません。だから、この段階になると、認知療法を受ける気にもならない患者さんが多いでし
ょう。実際の仕事に復帰しない限り、前頭前野の機能が回復していないことを認識してい
ないことがあるでしょう。もう、治療は必要ないような気がしてしまう。
この段階で、仕事に復帰していないと、ストレスを感じないので、抑うつ症状が悪化しない
し、複雑な仕事をしていないので、背外側前頭前野の機能が回復していないことに
気づかない。だから、認知療法を受ける気にならない。受けても、認知療法で背外側前頭前野の機能低下が回復するという効果は確認されていない。
こうして、復帰するから、背外側前頭前野の機能低下によって、うまく仕事をこなすことが
できない。悩む、苦しむ、それで再発となる。うつ病は複雑な病気である。脳の多様な部位の変調がある。抑うつ症状は症状の一部にすぎない。抑うつ症状がなくなったからといっても、他の変調が回復したわけではない。非定型うつ病は特にやっかいである。拒絶過敏性の反応パターンは認知療法で改善するという論理を構築しにくい。
軽症うつ病に認知療法を提供しにくいのである。だから、復帰の支援に際し、軽症うつ病には認知療法を使
いにくいし、患者もそれほど否定的な思考を回転させなくなっているので、認知療法を受ける気にならない。認知療法で背外側前頭前野の機能が回復すると言う
論理が明確ではない。こういう事情があると推測している。だから、軽症うつ病の完治のた
めには、新しい心理療法が必要なのである。
うつ病は、軽症から重症、非常に重症になり、薬物療法を受けて、重症、中等症、軽症、寛解、完治という経過をたどるだろう。
ところが、軽症になってからは認知療法も薬物療法もききにくい人がいる。医師から
薬を「一生服用し続けなさい」と言われたという多くのクライエントにあった。しかし、抗うつ薬は、重症にしか効かないようだという研究報告があったように、
一生服用しても治る保証があるわけではない。いつまでも「私はうつ病患者だ」という悩みを持ち続けることになる。こうなると、5年、10年、20年完治しない人がいるだろう。
だから、第三世代の認知行動療法として、アメリカでは新しいマインドフルネス心理療法が開発されたともいえる。
アメリカでは、こうして、うつ病、不安・怒り関係の精神疾患や社会問題に、新しい心理療法を開発し続けている。日本
では遅れている。日本では、病理であるマインドフルネス心理療法を臨床心理学か医学かどちらが行うのか大学での専門家の育成が遅れてる。病理のマインドフルネス心理療法を深く研究する専門家は少ないし、臨床のできる専門家も育っていない。うつ病の患者さんが復帰しては再発して苦しんでおられる。長引くと自殺がおきる。日本では、この段階のうつ病、不安関連の精神疾患は、無視、傍観されている。
日本では、マインドフルネス心理療法をになう人材群は、心理学、精神医学、看護学などのどこで育成されるのだろうか。このままでは、日本のセラピー(医療、心理療法)としてのマインドフルネスは、アメリカよりも30年は遅れるだろう。
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Posted by
MF総研/大田
at 20:56
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うつや自殺念慮の心理療法
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