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苦悩の現実の中で世界を創造して生きていく(18) [2014年04月12日(Sat)]

苦悩の現実の中で世界を創造して生きていく(18)

<第3>心を平穏に保ち、病を予防する“マインドフルネス” (1)

 =2600年前、ブッダが編み出した仏教が起源

 前の章でご紹介した精神、意志の対処法は、実はインドのブッダ釈尊によって始められ た仏教が起源です。釈尊の実践的な教えは、四諦、八正道、十二縁起などに整理されて います。人が悩むのは、自分のことを知らないという無明が根本原因であるとして、 自分を明らかにして解脱すると苦悩から解放されると説きました。解脱するためには具体 的な実践が必要であるとして、八つの実践法を推奨しました。正見、 正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定の8つです。 そのうちの正見が哲学、智慧に相当し、正思、正語、正業、正命、正精進、正念、正定などが特に現代のマイ ンドフルネスに似た実践になっています。
 釈尊によって始められた苦悩の解決法としての実践方法は現代には襌として継承されてきたのですが、それを参考にして、現代人に 効果があるように改良したものが筆者の自己洞察瞑想療法です。欧米でも似たような心の 訓練の研究開発が盛んになっており、総称してマインドフルネスと呼ばれます。 マインドフルネスは病気の治療の領域ばかりではなく、予防医学、教育、福祉、犯罪更生 など広い分野の新しい手法として活用されています。 病気レベルの問題を改善できるものであればマインドフルネス心理療法またはマインドフ ルネス精神療法と言えます。

 釈尊の教えと実践は元来、人が学習して指導者からも独立していくことをめざしています 。自分の心を洞察し問題を解決できるのですから、師への依存心からも解放されて自分の 智慧をよりどころとして社会のために生きていくことをめざしていました。
 釈尊の教えを簡潔にまとめた言葉が「自燈明・法燈明」です 。これは次の言 葉を簡略にしたものです。
 「自らを燈明とし、自らをたよりとして、他人をたよりとせず、真理(法)を燈明とし、 真理を よりどころとして、他のものをよりどころとせずにあれ」
 この言葉が法句経では短い詩句にまとめられています。友松圓諦氏の美しい翻訳で味 わいます。
   「おのれこそ
   おのれのよるべ
   おのれをおきて
   誰によるべぞ
   よくととのえし
   おのれにこそ
   まことえがたき
   よるべをぞ獲ん」

 誰に頼るのだ、よく自分の心をととのえて自分を頼りにしなさいというのです。仏教は他 人をあてにせず、自己を学ぶことを通しての自立をめざしていました。そのために「自己」と は 何か深く観察し新しい見方を発見して、つまり自己洞察ですが、 自分の心をよくととのえて、その智慧を 指針として生きていくことを目標としていました。

◆時代の変化に適応しなくなった
 時代が変わって環境もストレスも苦悩も当時とは違っています。 時代と実践される国民が移るにつれて、仏教もさまざまな形に変化していきました。 現代日本にも、さまざまな仏教書が発行されていますが、現代人の悩み、たとえば、うつ病 、不安障害、自殺などを直接的に解決できるようなものにはなっていません。そういう批判 の意味もあるのでしょうが、 マインドフルネス心理療法として、 最近の脳科学の研究成果や「自己とは何か」という哲学の成果もとりいれて、現代の人の 心の平穏とか、心の病気の回復に役立つような手法の開発に全世界の心理療法者がつと めてきています。
 仏教そのままが現代人に貢献できなくなって、一方、仏教をそのままではなく現代人の苦 悩をよく見つめて、それらの解決のために具体的に応用しようというので、マインドフルネス 心理療法が盛んに研究されているのでしょう。
苦悩の現実の中で世界を創造して生きていく

<第3>心を平穏に保ち、病を予防する“マインドフルネス” <第2> 「イライラ・怒り・欲・迷い」を乗り越えるために

<第1>イライラ、ウツウツはどこからくるのか
Posted by MF総研/大田 at 10:20 | 今ここに生きる | この記事のURL