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NHK Eテレビ「仏教に何ができるか」(7) [2013年05月21日(Tue)]
★5月25日は、出版記念講演会です。こちらにおしらせがあります。

NHK Eテレビ「仏教に何ができるか」(7) 〜奈良・薬師寺 被災地を巡る僧侶たち〜

 =5月11日、午後11時

 「仏教に何ができるか」というテーマで放送されました。  これを材料にして、仏教が「悟り」という高尚なことだけではなくて、現実の苦悩の 解決援助もあったのではないかを考察している。<感想>の部分が私の感想です。)

解脱、悟りだけではなくて、苦の解決である四聖諦も仏教だった

  <以下、私の感想>
 昨日の記事の中で、 こう書いた。
     「日本の自己洞察瞑想療法(SIMT)ばかりではなくて、欧米から各種のマインドフルネ スが輸入されている。それが、仏教の実践に似ている。仏教に似た本当に現実の苦悩 を乗り越えるスキルを身につける実践は僧侶の提供するものではなくて、カウンセ ラーのものとなってしまう。そうなった時、宗教としての仏教の存在はどうなっていく のだろうか。」
 こう書いたが、「マインドフルネスは、仏教の実践に似ている」とはおかしい、と思 う人が多いかもしれない。その通りで、人々の苦悩(四苦八苦といった)の解決の段階の仏教実践は、唐宋時代の中国の襌からも、現代の日本の仏教 からもほとんど失われてしまい、マインドフルネス心理療法は現在の東南アジアに伝えられている仏教に似ている。 つまり「四聖諦」「八正道」に似ている。「四聖諦」「八正道」は、釈尊の弟子たちが 整理したものだが、釈尊の教えには、「四聖諦」「八正道」の原型になるものがあった 。これが苦の解決である。わかりやすいので、経典によく記述された。しかし、釈尊に は、もちろん、解脱、悟りもあった。これは言葉にしにくいので、経典に書かれていて もわかりにくい。
 中国襌は、論理的説明によらず、直接把握する方法による解脱、悟りのみが強調され て、言葉で説く「四聖諦」「八正道」は捨てられた。鈴木大拙はこういう。
     「かれらはさらに、輸入的方法ともいうべき伝統的な表現方法には頼らずに、かれら 自身の言葉でこれを表示しようとした。かれらは、ふるいものの言い方を全部破棄した わけではなかった。あれらも、「仏陀」、「如来」、「涅槃」、「菩提」、「三身」、 「業」、「輪廻」、「解脱」その他、仏教の骨格を作り上げている多くの概念に言及し ている。だが、「十二因縁」、「四聖諦」および「八正道」には、全然ふれていない。 」 (『襌』鈴木大拙、筑摩書房、1987年、121頁)
 釈尊(正確にいうと、かなり後世の教団)は、四聖諦、八正道の方法で、四苦八苦の苦悩の解決実践と、さらに、解脱、悟りに導いた。だから、解脱以前の苦の解 決の段階の実践も八正道として示されていた。しかし、中国襌は、四聖諦、八正道の方法による指導法を捨 てた。言葉によらず直接、示す方法をとった。専門家でない民衆が苦の解決をしたくてもついていける方法ではなかった。 現代に伝えられている日本の襌も四聖諦、八正道のように初心者でも苦悩を解決 するのに実践できるような指導法ではない。そのせいか、日本の仏教教団の教えから、マイン ドフルネス心理療法を生みだすヒントを得ることはできなかった。
 現代日本では、マインドフルネス心理療法という方法でならば、実践して苦悩から救済される 可能性のある人は、1千万人はいるのではなかろうか。一方、公案による方法で、悟り、 解脱を得られる人は10年20年修行しても千人もいないだろう。そのような悟りを重視すると、悟りを得るまで自分の悟りしか関心がないので、他者 の苦悩の救済支援はできない。また、10年20年の修行で、悟りを得ても、その方法では、四聖諦のような苦悩の解決方法ではないので、一般人の苦悩の支援はできな い。苦悩の解決段階の仏教と、公案などで悟りを得る段階とは、断絶がありまるで違うのだ。そのよ うに違うものが両方とも含まれていたのが釈尊の仏教だったのだ。
 現代日本には多くの苦悩する人がいる。何十年もかかる悟りは不要で、初期仏教の四聖諦、八正道に似た方法で、1,2年の実践によって苦悩から解放されるべき人が多いのだ。マインドフルネス心理療法は、うつ病や不安障害にとどまらず、多くの問題の苦悩(心理的ストレスによるものが多い)の解決に効果 がありそうだから、1千万人とも言ったのだ。うつ病だけでも250万人というから、他の心理的ストレスで悪化する心身の苦悩は多いのだから。
 医師による薬物療法も大切だ。しかし、マインドフルネスは、医師以外でもできる。 マインドフルネスが普及して、教育、医療、介護、家庭の緊張不和、ビジネス、スポーツ、芸術、芸能などあらゆる領域に、心理的ストレス、対人関係の問題や職務を十分遂行できない葛藤があるので、活用 されるようになってほしい。そうなると対象者は5千万人ともなる。 スポーツ、芸術、芸能までも含めるのは、メンタルな弱さによって、本来の実力を発揮できない人がいるからだ。ビジネス全般に、それがいえるのだが。そして、すべての家庭で、健全な愛が感じられないところにも、マインドフルネスでいう価値のうち、人間愛、家族愛を軽視することが見られる。 ある意味では、マインドフルネス心理療法は1億人のすべてが対象となる。

(続)


NHK Eテレビ「仏教に何ができるか」 〜奈良・薬師寺 被災地を巡る僧侶たち〜
Posted by MF総研/大田 at 21:20 | 災害とストレス | この記事のURL