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フランクルの教育の使命論(3) [2013年04月18日(Thu)]

フランクルの教育の使命論(3)

 フランクルによれば、教育 者、専門家による還元主義的教育が若い人を実存的空虚(これによってある種のうつ病、不安障害、自殺をもたらす)に追い込むこ とや全体主義、画一主義の若者を作ってしまうことがあるのです。 複雑な人間のことをあまりに単純化した学説、学問で若者を教育する。自 分で考えることができない人間、個性のある仕事をできない人間、さまざ まな要因を配慮しなければならない子ども、クライエントや患者の苦悩を画一主義、 還元主義の教えで扱 い続ける。古い時代に妥当であった伝統が死守されて、現代の新しい問題 を援助できなくなってしまう。 フランクルによれば、宗教や精神療法が、現代の人々の苦悩の解決支援をできるはずなのに、 いまでもこの警告が古びていないほど、遅れているようです。
 宗教、教育、学問、医療、臨床心理、さまざまな援助活動、さまざまな産業活動にいて、全体主義、画一主義、還元主義が広まっているでしょう。その弊害が自覚されないままに。

 「自分が何をしたいのか分からないままに、人は他の人々がおこなう通り にしようとします。これが画一主義です。 あるいは他の人々が望むままに行動します。これが全体主義です。 」(フランクル、広岡義之訳「意味喪失時代における教育の使命」 (「imago」現代思想2013 vol.41-4、青土社、p40)

 「今日、教育は、伝統や知識を伝えたりすることだけで満足したり、そ れだけに自己満足してはいけません。自己の良心に耳を傾ける力を磨くこ とを、教育のもっとも重要な任務としまた使命とするべきです。それで人 は、無意味感の漂う時代にもなお各々の生の状況のユニークな意味を見出 すことが可能となるのです。そしてさらに自己の良心に基づいて、全体主 義や画一主義に対抗できるのです。明晰で純化された良心によって、第一 に実存的空虚を、第二に画一主義を、そしてさらには全体主義を克服する のです。」(p46)

 これは、フランクルが日本の大学で行った講演です。専門家による還元主義、画一主義の教育は、昭和にも行われ ていました。いまなお、そういう知識を声だかに押し付けて若者の個性を うばうことがおきているかもしれません。教育者でさえそうであるならば 、おそるべきことです。これからの日本を担う人は、 そういう人間にならないように、良心を磨く教育をしなければならないの です。小さく限定した教育を受けず、 自分の専門のことだけを絶対視せず、 広く他のことにも扉を開いていて、自由に行き来し、他を排斥せず受容 する広い精神、伝統に縛られず伝統の普遍的な真理は破壊せず、時代の要求に あったものに応用すべきは応用しうる能力を持てるように教育するのがい いのでしょう。


(続)

<目次>フランクル、生きる意味、生きる価値、生きがい
Posted by MF総研/大田 at 19:44 | フランクル | この記事のURL