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伝統的価値観が何をすべきかを教えてはくれない [2013年03月28日(Thu)]

人生の苦しみにどう向きあえばいいのか・フランクル4回目(1)

 NHK Eテレビで、昨日(27日)フランクルの「夜と霧」の4回目でした。
 苦悩に2種あるという。
  • (1)苦悩するための苦悩
  • (2)何かのため、誰かのために苦悩=まっとうな苦悩
 (1)は解決のない苦悩の渦巻きである。内向きの価値崩壊の思考、行動である。 (2)は価値実現のために苦悩することであろう。苦悩の中で、自分の苦の心理だけを見つめるのではなく、自分の周囲の方に目を向けて自分ができることを発見して行動していくことであろう。自分が変わること、成長がある。
 苦しみの「運命は天の贈り物である」という。 天とは神、絶対者だろうが、そのように受け止めるためには強い心が必要になるだろう 。贈り物と受け止められる人は、成長の機会ととらえて、乗り越える苦悩をするだろう 。しかし、そのように受け止められず、行動せず、ただ嫌い、もがくと、生きる意味の喪失であり、うつ病になるだろう。
 1972年、フランクルがカナダの大学で行ったスピーチを紹介した。
     「意味の喪失感は今日非常に増えています。とりわけ若者の間に広がっています。 それは空虚感を伴うことがよくあります。 昔のようにもはや伝統的価値観が何をすべきかを教えてはくれません。 今や人々は基本的に何をしたいのかさえもわからなくなっています。」
 伝統的価値観は教えてくれないというが、これは、現代日本でもいまだに同じ状況で あろう。一族や地域や組織の長老の方針、仏教や心理学も薬物療法(割合新しいが)も伝統的価値感だろう。それらの伝統 も、空虚感についてどうしたらいいか教えてくれない。 フランクルは、意味への意志を教えたが、日本では、普及していない。日本においても苦悩する人を受けいれる伝統は破壊されている。時代遅れとなっている。 現代の仏教宗派の思想、方針は、江戸時代 から昭和にかけて再確認されたのであろう、多くの仏教書が出版され講話が行われてい る。しかし、その解釈やよびかけでは、現代日本の人の空虚感に対して、克服のための行動を起すほどの指針を与えて くれない。 心理学も各学派の伝統であろうが、うつ病や不安障害、依存症、虐待 、DVなどの苦悩に対して、「何をすべきか教えてくれません」という状況なのではなか ろうか。

 毎年2万5千人以上の人が自殺し、心の病気の人は100万人を超えるだろう。被災 地では、多くの人が抑うつやPTSDになっているという。伝統的な救済装置が機能しない 状況は、フランクルがスピーチした時よりも、一層深刻になっているように見える。
(続く)
フランクルのこと
Posted by MF総研/大田 at 22:36 | フランクル | この記事のURL