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心理療法と宗教との違い<真理の問題> [2012年12月28日(Fri)]

マインドフルネスの自己洞察瞑想療法
 =心理療法と宗教との違い<真理の問題>

 日本では、マインドフルネスも宗教レベルのマインドフルネスとそうで ないマインドフルネスとを区別するのが、医療、教育、福祉の現場での混乱を避けることができ るでしょう。
 宗教には、次の課題があります。
  • A)救済の問題
  • B)絶対者の問題
  • C)信仰の問題
  • D)信仰に基づく行為の問題
  • E)真理の問題

宗教の真理の問題

 マインドフルネスは、宗教の実践に類似するところがある。 宗教はわれこそは「真理」であると主張するので、 マインドフルネス心理療法(SIMT)と宗教の「真理」とは違うことを理解し ておくのがいい。SIMTでは、宗教の「真理」を論じることはなく、ただ苦 悩の軽減の事実、教育、福祉の現場でのメンタルな視点の利益になること、神経生理学的な変化の事実を論じるだけである。 これが明確であれば、受益者(クライエント)の無用の葛藤を防止できる。

 宗教には、「真理の問題」がある。宗教は「われこそは真理」であると するので、絶対性、排他性の傾向がある。
     「諸宗教はすべて、われこそは真理なり、と主張している。」(p.32)
     「諸宗教は単に互いに相異なるだけではなくて、自らを絶対化して、他 を排斥する傾向があることは否定することができない。一般に宗教には自 己絶対化と排他性とが伴うものである。」(p.262)
 医療、心理療法は、自らのみが絶対とはしない。薬物療法、認知療法、 マインドフルネス心理療法、さまざまなものと代替可能であることを認め る。どれでも、クライエントの選択により治療を受けて、治ればよいとい うのが心理療法の立場である。この態度は、これが、教育、福祉などの現場でも同様である。

真理とは何か

     「真理の意味は実に多義的である。しかし、わたしが問題にしようとす る真理とは宗教的真理である。宗教的真理の中心問題は救済に関わる真理 である。」(p.32)
 諸宗教が、救済の真理を持つ。ただし、救済の内容や幅、深さが異なる。医療 、心理療法は、心の病気や問題行動の改善に限る。 これはまた、教育、福祉、スポーツなどの領域の態度でも同様である。 宗教の救済の範囲は、 もっと広い。死後のことにまで及ぶ。

医療、心理療法は「真理」である必要はない

 宗教は「真理」を主張する。しかし、医療は「真理」である必要はない 。「治ること、改善に有用であること」である。 病気でない問題領域でも、真理ではなく、スキル、成長、向上の探求である。 うつ病の薬物療法はセロトニン神経 の機能低下であるから抗うつ薬を用いるが、これは「絶対の真理」ではな いかもしれない。セロトニン神経の低下はほかの病気にもあるし、うつ病 は前頭前野の機能低下も重要である。しかし、治る割合が高いので「医療 には有用」である。
 認知療法も絶対の真理ではないかもしれないが、治る割合が高いので「 有用」である。マインドフルネス心理療法も、治る割合が高いから有用で あり、用いられるようになった。 真理であるかどうかは問わない。また、自己洞察瞑想療法(SIMT)は絶対の 真理ではないから、治療効果を高めるように今後も改良が続けられる。 作用の深さという視点からは、SIMTの範囲は、意志作用のレベルであり、深さの違う直観レベルのものがあるが、意志作用レベルが有用性がおとるのではない、絶対的真理の問題ではない。 うつ病の治療法としては、有用性が高いと思う。
 また、SIMTは絶対の真理ではないので、半年ほど課題を実践しても全然改善し ない場合には、他の治療法をすすめる。他の心理療法、薬物療法がいいひ とは、すすめる。心理療法は、絶対の真理の追求ではないからである。なお、ある心理学で あたかも真理であるかのように説明できても、「治療法」に結びつかない のであれば、心理療法の治療法としては有用ではなく、用いられない。

  (P )は「宗教哲学入門」量義治、講談社学術文庫,2008
(続く)

非宗教的マインドフルネス
 =宗教との違い
Posted by MF総研/大田 at 21:59 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL