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知らない自分を愛することはできない [2012年05月07日(Mon)]

自己洞察瞑想療法(SIMT)の入門(3)
 =マインドフルネス心理療法の一種
 =日本で開発された
 =西田哲学に基づく

知らない自分を愛することはできない
 =こんな自分だから嫌だというのは、みな真の自分ではない

 西田幾多郎は、「自分」とは何かということを深く深く探求して、深い自己 を論理的に明らかにした哲学者です。彼が、こう言っています。 「自己が自己を知るとは、自己が自己を愛するということでなければならない 」「知らないものを愛するということはできない」「知るものを知るというこ とが、自己が自己を愛することである」(西田幾多郎,1965)
 たった一度きりの人生です、人生においていつも「自己」とつきあっていま す。その自己を愛することができないのは苦しいことです。 しかし、西田は、自己を知らないから愛することができないというのです。 自分は嫌いだというのは、本当の自分を知らないからです。

 たとえで言います。マインドフルネス心理療法は、たとえを言います。メタ ファーといいます。
 パソコンの画面に、わけのわからないものが映っているとします。パソコン の使い方を知らない人は、それをうまく使えないので、パソコン全体を好きに なれません。やがて、邪魔になって、捨ててしまうでしょう。パソコン全体を 破壊します。
 一方、よく使える人は、そのわけのわからないものが一時的に映っても、自 由に別のものを映したり、仕事をするのに自由に用います。そういう人は、パ ソコンが好きになります。
 これと同様に、自分をよく知り、自分の心の作用を使いこなせるようになれ ば、自分を愛するようになります。人はみな自分を愛するようにできているの です。
 「知らない自己を愛することはできないといっても、その知られた自己とい うのは単なる知的対象ではなく、それは既に情意的自己でなければならない」 といいます。 つまり、思考で知る自分は真の自己ではない、つらい現実があっても 自由意志を起こして行動して、その結果を満足(感情=情意の情)する自分で なければならない。自由な意志による行動ではなくて、衝動にかられての行動 であれば、結果を満足できません。そういう自己なら愛することはできません 。
 すばらしい内容を思考することができても、行動することができなくて、満 足できない(愛することができない)自分があるはずです。こんな自分は嫌だ というのは、思考の内容であって、真の自己ではありません。真の自己は、思 考作用や行動する意志作用の奥に働いているものです。
 行動できないのが自分を好きになれないというのなら、行動できるようにな ればいいのです。自分の希望する行動ができる意志を起こすことができ 、そして満足する(感情)ことができるように訓練するのが、自己洞察瞑想療 法(SIMT)です。
 心理療法としての自己洞察瞑想療法(SIMT)の範囲は、自己は自由意志により行 動して満足できる意志的自己を自分として愛するようになることです。心の病気を治したり、つらい現実があるが、この自分で生きていこうと自分を愛するようになるのは、1年程度の探求で知る意志的自己が自己であると知ることで十分です。
 一般のうつ病、非定型うつ病、不安障害ではなくて、もっと、深い自分を探求したいのであれば、その段階もあります。最初から、意志的自己レベルの問題ではなくて、対象的なことの苦脳ではなくて、対象も作用も包む深い自己自身の苦脳であるならば、そういう自己自身を探求していくことでしか、自愛ということになりにくいでしょう。

(注)
西田幾多郎,1965 「一般者の自己限定」西田幾多郎旧全集5巻365-366頁) 
Posted by MF総研/大田 at 21:04 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL