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支援者の倫理(2)支援者の資質 [2012年03月27日(Tue)]

マインドフルネス支援者の倫理/専門家の倫理(2)

第1節 支援者の資質

支援者が学ぶべきこと

 「あわの診療所」の所長、精神科医の粟野菊雄氏が大学で講演した講義の内容で、支援者(心 の病気の人を支援する医師、心理士など)の資質にふれている。粟野氏は、具体的な症例を説明 した後、「症例から学ぶ大切なこと」として4つ、あげられた。
 心理療法を用いて心の病気の人(以下、患者、または、クライアントという)を支援する人( 以下、支援者、または、カウンセラーという)になりたいと思う人は参考にすべきである。誰で もカウンセラーになれるわけではなくて、ある資質と日常の心得が必要である。

<第1> 本末転倒に注意

 第三のポイントを注目したい。粟野医師の言葉を(a)(b)の、二つにわける。
    「(3)本末転倒に注意
     (a)”治療者”として人に対するときには、”患者を、自分の信奉 する理論や、自分の得意とする治療技法の中に閉じ込める傾向がある”ということを忘れ てはいけません。治療者が患者の症状のどこかに、自分の信奉す る治療技法に当てはまる部分を見つけるのは容易なことです。それが何時の間にか、 患者の存在全体をそれらの中に押し込めて、・・・

    (b)患者を操作する全能者として、治療者が患者の前に立つことがあります。しかし、治療者 が全能者であるわけはありません。」(1)

(a)自分の理論、治療技法におしこめる

 (a)は、支援者が自分が学習した範囲のことを絶対視して、信じるもの、好きなもの、先入見、 偏見をもっていて、患者をその枠内に押し込めるような手法をいい、それでは主観的、独断的、 自己中心的な態度があることになるだろう。そういう傾向が他者と直接ぶつかりあう環境にある 場合、心の病気になる傾向や他者を苦しめる傾向があり、それに自覚がないような人は、よきカ ウンセラーになれないだろう。自分のスキルの限界を知り、未熟なところがあるという自覚がな ければ、苦悩する人の問題を指摘して治癒への援助をできないからであろう。
 田畑氏の言葉では、次のような自己洞察が要求されているというのと同じような資質であろう 。
     「カウンセラーは、「暗々裡に・・・してしまう自分」という無意識的心情の水準にまで掘り 下げて、透徹した理解や認識をもっていると言えます。すべてのすぐれたカウンセラーは、この 点に関してはっきりとした理解や認識をしている人であると言えるのです。」(2)
 「無意識的心情の水準にまで掘り下げて」というのは、一般の人では自覚しにくい自説への執 着、偏見、誤解、先入見などに敏感で、意識できるような資質といえるであろう。 普通の人が自覚しにくい、我執、自分の学習した理論、技法などに執着する傾向が自分にあるこ とを自覚していることがクライアントの利益を害さないことになる。 偏った傾向に自分が陥っていないかを常に自己洞察していることが必要であるというのであろう 。

(b)全能者として立つ
 (b)は「患者を操作する全能者として、治療者が患者の前に立つ」「治療者が全能者であるわけ はありません」ということであるが、これは、自分の能力について過信し、他者を操作するよう な心になりがち、といってよいであろうか。人は、知性、学問によって、その領域のすべてを知 ったつもりになりがちである。 そういう傾向が、治療者にあって、あたかも、自分がすべてを理解している全能者であるかのご とくふるまう傾向があるのではないか。また、理解と実践とは相当の違いがある。理解は思考の レベルであり、自己自身の行為によって確認していない。
 臨床の治療をする者は、この点はどうであろうか。自分の苦の解決は簡単である。指導者に従 って実行するうちに自分の苦は軽減する。しかし、支援活動は、他者の救済であるから、通常は 、他者が経験する多くの苦を理解した者が行う。自分だけの苦の体験だけでは、カウンセラーに はなれない。誰も全能ではない。自分が全能者の立場に立ちたくなる心理が働くかもしれないが 、人々の苦は広く、深く、クライアントに全能者として立ってはならない。そのクライアントを 長くひきとめて、その将来の人生にかかわっていくことがカウンセリングの目標でもない。
 信、先入見、偏見などに押し込める自覚されにくい心、全能者として振舞う心に自省、自覚の ない人は、よきカウンセラーにはなれない、と粟野氏はいうのであろう。仏教や西田哲学でも、 そういう心が、自分や他者を苦しめるとして、自覚し自己を捨てるように心がけるように教えて いる。そういうことに自覚がないカウンセラーでは、自分の力量を超えた問題で苦しむクライア ントを十分には援助できないのに、自分の枠内に押し留め続けて、治癒しないからであろう。心 を病む人の場合、復帰をさまたげたり、結局、自殺されるのでは患者の生命をそこなう。
    (注)(1)粟野菊雄「精神医学の基礎知識」(『教育』第38号、龍谷大学教育
        学会、2003年)、32頁。
       (2)水島恵一・岡堂哲雄・田畑治編「カウンセリングを学ぶ」有斐閣、
        1998年、57頁。
(続く)
 マインドフルネスは、一般的技法であって、マインドフルネスを心理療法化して効果が確認さ れたものは、うつ病を治す割合が高くなるが、マインドフルネスがすべて、うつ病を治すわけで はない。うつ病、非定型うつ病は容易ならざる病気である。相当の真剣さで、セッション1から 10までの種々の自己洞察課題を毎日30分以上実践する人は、1,2年で治ることが確認され た。ただし、現状の環境が、ストレスの強い状況である人は、治りにくかった。
 また、支援者のスキルでも違いが出てくる。クライエントの環境によっても、治癒しないことが ある。条件がマッチしない人を自分の枠内に閉じ込めていると、かえって苦しめる。
 私はセッション1から10までを標準的な治療課題として確認したものを「適応症」というが 、まだ治療効果を確認していない領域は「可能性がある」という。 うつ病、不安障害の領域でさえも、まだ適用場所(たとえば、高齢者、子どものうつ病、産後う つ病、被災地のうつ病、事件被害者のうつ病など)や治療効率をあげる研究が必要で、他の領域 (病気ではない領域、たとえば、DV、パーソナリティ障害、犯罪更生など)に拡大ができそうも ない。 その方面の専門家の方が適用してデータで確認していただく必要がある。
連続記事「マインドフルネス支援者の倫理/専門家の倫理」目次
Posted by MF総研/大田 at 19:03 | マインドフルネス心理療法 | この記事のURL