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「幸福駅」ブーム再び [2011年12月22日(Thu)]

「幸福駅」ブーム再び

 「「幸福駅」ブーム再び」という」記事がありました。(朝日新聞夕刊 12/21/)
 北海道の廃線になった幸福駅に多くの人がおとづれている。外国人の訪問も多いという。  そして、「私にも彼氏ができますように」「手術が成功しますように」という願いが駅の待合室に びっしりと貼り付けられている。
 7回来たという人は 「ここに来ると、いやなことがあってもリセットされる。ちょっと幸福になれるパワーをもらった気 もします」という言葉がのっています。

 実は、こういう人たちはすでに幸福なのです。そういうところにさえも行けないのがうつ病です。 何がなくてもいいから、心が健康であることが「幸福」であることを実感しています。
 「ここに来ると、いやなことがあってもリセットされる。ちょっと幸福になれるパワーをもらった 気もします」という言葉は置き換えることができます。
 特定の地理的場所に行けばいやなことがあってもリセットされるというよりも、 いつも自己の根底の場所が幸福の場所であることを自覚する方法があります。 「いやなこと」は自己の心の働き(作用)が作った産物です。産物と作用は、場所にあります。 場所はいやなものではありません。農場が場所、農夫が作用、作る人、産物が野菜。時々、野菜がく さっても、農場という場所は安泰です。
 精神科医の神谷美恵子さんが「私は器」という詩を書きました。器には、汚い水がはいっても器はびくともしません。こぼせば汚い水はなくなります。東山魁夷画伯の絵には、湖があって景色が映っています。映るものは変わっても湖はいつもあります。器に似ています。
 いやなことも幸福の場所の中の出来事である。いやなことがあっても、それは、幸福という場所の、器の 中の波にすぎない。 「ここに来ると、いやなことがあってもリセットされる」ということが、 自己の根底の場所を自覚すると、いやなことがリセットされるということになるのが、マインドフル ネス心理療法かもしれません。理屈では簡単でも、いつも自己の場所があることが本当に幸福であっ たことを実感するには1年くらいの真剣な探索が必要です。 大震災にあわれて、 ふつうに生活できていた日常の場所が幸福なのだということをかみしめておられる方がたくさんおら れると思います。
 私もそういう時がありましたが、うつ病になると、どこの場所にも幸福なところがなくなります。 あの世にしかないように思えてしまう。でも、本当は、そのような人も心の奥に幸福の場所があるの だと思います。治って「幸福だ」と思える時が来るのですから。
Posted by MF総研/大田 at 21:48 | 今ここに生きる | この記事のURL